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2024ハチロク誕生祭記念ショートストーリー『双鉄さまのバアスデイ・メニウ』

本日、3/8はハチロクのロールアウト日です。

めでたいことにジャストその日に、
ハチロクの3Dモデルもロールアウトされたとのことです。

わたくしは3Dさっぱりわからないのですが、
もしもご興味ある方いらっしゃいましたらぜひぜひチェックしてみてください。

で、わたくしにわかる形=「物語」で、わたくし、本年のハチロクの誕生日を寿いでみたいかと存じます。

タイトルは『双鉄さまのバアスデイ・メニウ』

登場するレイルロオドは、もちろんハチロクでございます。

どなたにも無償でお楽しみいただけるお話となりますので、

■ハチロク■


旧帝鉄8620形トップナンバー機 8620専用レイルロオド。
マスターである右田双鉄と相思相愛。
幸せな日々を重ね続けている。

/////////

『双鉄さまのバアスデイ・メニウ』


「世に聞く『素敵な彼氏』というものは」

「はい?」

ああ、いけません。
思わず語尾が持ち上がってしまいました。

だって、まさか、双鉄さまのお口から――

「世に聞く……なんとおっしゃられました?」

「『素敵な彼氏』というものは、だ」

……繰り返されて、聞き間違いではなかったのだと理解して。
理解はすぐに、推論を導いてくれます。

本命:日々姫
対抗:ポーレット様

――あるいは、ふかみ、もしかしたなら稀咲様、まさかまさかの真闇様――

そのあたりのどなたかが、面白がって双鉄様にそうした言葉を吹き込んだのでございましょう。

「聞いているのか? ハチロク」

「あ、いえ――その、大変失礼いたしました」

「気にすることはない。一年一度のロールアウト日。
そわそわと気もそぞろにもなろうさ」

「!」

なんと素敵なことでしょう!
『素敵な彼氏』は、まさに双鉄さまにほかなりませぬ、今の時点で、もう絶対に確実に。

「でだ」

「はい!」

「世の素敵な彼氏は、彼女のお誕生日には手料理を振る舞うとのことなのだ。
ゆえ――」

「あ……」

双鉄さまの、お手料理。
その評判は日々姫や真闇様から、幾度も聞かされております。

「ハチロクが食すことができる石炭と水のみで、こころばかりのコース料理をしつらえてみたのだ」

「まことにありがとうございます」

「まずは、石炭のスープ。これは粉塵にまで砕いた石炭を、お湯に沈めてみたものだ」

「美味しそうです……いただきます」

スウプは、スプウンごとお口に運んで食べるもの。
決してずずずとすすらないもの。

真闇様の教えを、まさか実践できる日がこようとは夢にも思っておりませんでした。

「……大変美味しうございます」

石炭は水に溶けませぬゆえ、双鉄さまがおっしゃられたとおり、
これはひたすら、お湯に沈んだ石炭の粉。

けれどお湯に沈んでいるゆえ、粉にむせることもありませぬ。

「続いては前菜。フライド石炭。これは石炭を素揚げしたものだ」

「油で輝いておりますね! いただきます」

石炭が間違っても発火せぬよう、おそらくは低温でじっくりあげてくださったのでしょう。
石炭の表面に冷えた油がべとついて、大変に燃焼効率がよさそうです。

「――お腹が熱くなる感じです。大変美味しうございます」

「ならばよかった。メインはこちら。石炭ステーキだ。
焼き加減はレアにしてある」

「とても見事な塊ですね。いただきます」

……さしものわたくしでも、この大きさの石炭を一口ではいただけません。
巨大おせんべいを噛み砕いていくが如き、あまり美しくないお食事となってしまいます。

(せめて、カットしてくださったら良かったのですけれども)

それでも、それでも、それでもやはり。

「しっかりとした食べごたえ。大変美味しうございます」

『ヘンな工夫をときおりするけど、基本的にはレシピ通りきっちりつくってる筈なのに、まずくはないけど美味しくもない。正直微妙』

――日々姫の、真闇様のご評価は、まこと適切なものでした。

それでも、けれど、美味しいのです。
お世辞ではなく、舌が喜び踊るのです。

だって、あの双鉄さまが、ただわたくしのためだけに――

「ごちそうさまで」
「は、まだ早い。誕生日にデザートなしではつまらんだろう」

「まぁ!!!!!!!!!」

「”シュトロイゼル”という髑国のケーキにならってな、
細かく砕いた石炭を、コールタールで繋いでケーキの形としてみた」

「なんと素敵なデザアトでしょう!」

「喜ぶのはまだ早いぞ? 製造時にきちんとこうしてあらかじめ――」

「ろうそく!!!!」

「うむ。立てられるよう穴を準備しておいたのだ」

「大きなろうそくが8本。小さなろうそくが6本――
うふふっ、ハチロクでございますね」

「うむ。火をつけるゆえ、ケーキに引火するよリ先に、
一息で吹き消してみせてくれ」

「はい!」

憧れだった、バアスデイケエキ。
ろうそくを吹き消すときには、願いをこめてと、
わたくし、しっかり知っております。
ので――

(双鉄様のお隣に、機能停止のその日まで――)

「ふーーーーーーーーーーーーっ!!!」

「おお! 見事だ!!」

「うふふふふふっ!」

一息で全部吹き消せたのなら、願いは叶う――

なんと嬉しいことでしょう!

「では、カットしよう。
ほら、ハチロク――」

「ありがとうございます、いただきます!」

そうして、きっと、このケーキこそ!

(バキンっ! バリっ! ボリっ! ゴリっ! ――ごくんっ)

「大変美味しうございます!!!」

;おしまい

 
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