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『レイルロオド・マニアックス』 D60 46専用レイルロオド しろ

みなさまこんばんわ。
進行豹です。

レイルロオドたちのプロフィールや来歴、それにまつわるあれやこれやをザクザクザクっ! と掘り下げてまいりますコーナー
「レイルロオド・マニアックス」

このnoteでは、「紅」を過去に掲載しております。

そのほかのレイルロオドたちのものも、タイミングを見て順次、加筆・修正の上再掲していきたく思っておりますので、どうぞご期待いただけますと幸いです。

で、本日は、決してこれ以上活躍することがない――
活躍できないことが確定してしまっているレイルロオド達の中から
「D60 46専用レイルロオド しろ」の、レイルロオド・マニアックスを記載してきたく思っております。

ニイロクの姉貴分であり、ニイロクを救ってくれたレイルロオドでもある、しろ。
描かれることのなかったその過去を、どうぞご覧いただけましたら幸いです。

「しろのプロフィール」

個体名称:しろ

製造時名称:帝鉄D60形蒸気機関車46号機専用レイルロオド 

製造年:1954

製造社:帝鉄濱待工場

現所属:なし(廃棄解体済)
       
所属歴:旧帝鉄(池多区→出観区→脳型区→粉蔵区)

性格:姉御肌で親しみやすく、情け深い

特徴:仕事が丁寧。料理ができるレイルロオド。キャッチボールが得意。

長所:親切で気風が良く、リーダーシップを有している。職能も確かなので、後進指導などに抜群の適正を持つ。

短所:おせっかい、過干渉の傾向がある。そのせいでトラブルを招いてしまうことも少なくない。
他者を過大に評価する傾向もあり、しろから実力以上の期待をよせられることでメンタルの不調を招いてしまう新米レイルロオドも散見される。

「しろの過去エピソード」

しろについて話すのならば、しろの生涯唯一のマスター――
辰巳幾松機関士について話すところからはじめなければなりません。

高等野球のオールドファンであればしっているかもしれない、辰巳幾松。
彼は、待山東高校の正捕手――
つまり、子牛園優勝高校の、優勝ナインの一人でした。

卒業のその年に創立されたばかりの新球団、帝鉄スパローズに勧誘され入団を決めていた彼は、けれど、入団直後に腰椎を疲労骨折し。
骨折部位をかばおうとしての腰椎椎間板ヘルニアも発症させてしまい――
出場0試合での引退を余儀なくされてしまいます。

新設球団ほやほやの球団であったスパローズは評判の悪化をおそれ、母体である帝鉄に、辰巳捕手の再雇用を依頼。
辰巳捕手は庫内手として雇用され――椎間板ヘルニアという持病と戦いながらも庫内手→機関助士→機関士の階段を、わずか4年で駆け上がっていきます。

そうして、その年にロールアウトしてきたばかりのD60 46、およびその専用レイルロオド しろと、終生のコンビを組んでいくこととなるのです。

腰に爆弾を抱えている辰巳機関士は、”かがむ”という動作を極力避け続け。
床にあるものは、しろに拾わせて放おり投げさせる――ということを常としていました。

そのような日常を繰り返すうち、辰巳機関士は気づきます。
シロには、ものを正確に投げる能力が備わっている、と。

試しに硬球を渡し、ピッチングフォームを教え。
辰巳が構えたミット通りに投げ込むように指示すると――スパン!
心地よい快音が鳴り響くではありませんか。

辰巳は大いに喜び。
辰巳が喜ぶことはしろにも嬉しく。

コンビは暇を見つけては、キャッチボールからのピッチング練習に勤しむようになりました。

キャッチボールを重ねるうちに、しろは少しずつ、
いわゆる「体育会系」の良い部分を、その身に宿していきました。

シロの面倒見の良さ、気風の良さ、手間惜しみしないところ、料理ができるところ等は、その全てが大いに辰巳の影響を受けたものだと断言できます。

貨物機乗務は、過酷なものです。
時と場合によってははるばる北開道までの乗務になることさえあります。

しかし、運転台内にグローブとミットとボールさえいれておけば、どこでも投球練習はできるのです。
辰巳としろがそこここでキャッチボールを繰り返すうち、それに興味を示す機関士やレイルロオドたちもちらほら出てきました。

しかし。
レイルロオドの99%以上は「物を投げる」という動作への適性が極めて低く。
キャッチボールを人間レベルでこなせるようになるレイルロオドは、稀有でした。

辰巳としろが関わりをもったレイルロオドたちの中では、D51 498専用レイルロオドのランのみが、まともにキャッチボールをこなせたという程度でした。

ので、しろには憧れが募りました。

――いつか、野球を。

味方ナインにかこまれて、敵ナインと勝負を交わす、野球というスポーツを全力で楽しんでみたい、という、そんな憧れが。

しかし、帝鉄ではレイルロオドは「物」でしかなく。
「物」とチームを組んでくれる人間などいるとは思えず、またレイルロオドのほとんどは球技への適性をもっていないこともわかっていました。

ので、しろは抱いた憧れをほとんど誰にも話すことがなく乗務を続け。
そうして、後輩が走るレールをつなぐため――
自らを犠牲にすることにより、その生涯を終えました。

シロを失った辰巳機関士は、帝鉄解体を待たず退職。
その後は故郷・待山にもどり、いよかん鉄道の職員となり、乗務を離れて定年退職までを勤めあげました。

辰巳元機関士はいよかん鉄道でも幾人かの職員たちとキャッチボールを重ねました。
いよかん鉄道のレイルロオドたちの間にもちょこちょこ、キャッチボールへの興味を示すものがいたそうですが、適性を示すものは残念ながらいませんでした。

……辰巳が退職し、何年もたった今でも。

いよかん鉄道の機関庫の隅には。
辰巳が使っていたミットと、しろが使っていたグローブと、その両者の間を幾度となく行き来したボロボロの硬球とが――

ちょこんと置かれ続けています。


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『しろとニイロクのキャッチボール』

(あらすじ)
話題の中心、最新鋭機。
そのレイルロオドであるニイロクを目にしたしろは、
ボールをぽいっと、投げかけるのです。

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