統合生命科学コースの紹介と具体例

こんにちは、統合生命科学コース4年のらいこうです。

統合自然アドカレ4日目は、統合自然科学科の中の統合生命科学コースについて紹介した後、具体例として私の2年間半の出来事を説明しながら深掘りしていきたいと思います。12月は色々なテーマで記事が出ているので、良かったら他の記事も見てください!!


統合生命科学コースとは?

統合生命科学コースではタンパク質設計、テロメア研究、一細胞計測、植物学、細胞医工学、神経科学など生命科学の色々な分野を勉強することができます。

「駒場で生命科学ができる」ということを知っている方はあまり多くはないもしれません。生命科学というと、東京大学では農学部や理学部生物学科などが先に思い浮かぶかと思います。実際私も進振り直前に色々と調べていた中で見つけた学科であり、最初から知っていたわけではありませんでした。

このコースでは、新進気鋭の若手教員が独立に運営する研究室が多く、これから芽が出る野心的な研究テーマに挑戦することができます。私は生物物理系の研究室に所属しており、他の研究室ではあまり扱っていないようなテーマを日々研究しています。それ以外にも認知神経科学、複雑系生物学、構成的生物学など生物学の中でも新しい学問分野を研究することができます。詳しくは学科のHPを参照してください。

具体例:私の場合

ここまでは統合自然科学科のHPでもわかるような内容です。なのでここからは具体例として、私の後期課程の履修や生活を少しだけ振り返りながら、もう少し統合生命科学コースとはどういうところなのかということを説明していきたいと思います。

この学科を選んだ理由

この2年間で私にとってのターニングポイントは2つあります。
1つ目は、統合自然科学科統合生命科学コースに進学したことです。

私は大学受験を東大志望のマジョリティーである物理・化学で受けていたので、生物をほとんど勉強したことがありませんでした。ですが、もともと脳神経科学や認知神経科学に興味があったため、「卒業研究ではピペットを使った生物系の何かがしたいな、できれば脳神経とか医学系の内容で。」という気持ちがありました。その興味を辿りながら進学先を探している時に、統合自然科学科を見つけました。

研究室紹介を見ると医学系や脳神経科学など私のやりたい内容のところが多く、「ここめっちゃいいやん!!」と思ってこの学科を即決しました。今となってはもうちょっと別の学科も調べれば良かったとは思いましたが、この学科に来て間違いではなかったと思います。

眠りの2A

2Aは主に寝ていました。

2Aでは持ち出し科目(進学前の2Aに受けることができる後期課程の授業)を履修しますが、統合生命科学コースは持ち出し科目がほとんどないのでとても暇です。元々別にやりたいことがない無気力な人間だったので、本当に授業は取らなかったです。結局13単位ほど取りましたが、のちにこの余裕綽々だった自分を恨むことになります……

唯一、独学で物理数学を勉強していました。とりあえずフーリエ級数展開くらいはできるようになっておこうと思って(今になってはなぜそんなことを思ったのかわかりませんが)、岩波書店の「物理のための数学」という問題集を使って勉強していました。この時に学んだ微分方程式の知識が後々色々な場面で使えたので、生物の人でもやってみるといいかもしれません。

まだやる気になれない3S

後期課程に進学し、正式に必修のセミナーと実験が始まりました。セミナーについては論文を読むというだけでしたが、英語が苦手な私にとって非常にしんどかった記憶があります。また、水曜1限ということもあり、朝が弱い私にとっては本当にきつかったです。

実験は主にピペットを使った分子生物学の内容をしていました。「私がしたかったのはこれだ!!」と最初のうちは思っていましたが、すぐに「早く終わらないかなー」に変わっていました。毎週火・水・木の3日間実験があるため、実験の時間が長いと疲労が溜まっていきます。17時を超えるとキツいなーと思いながら実験していました。

授業の方も取れる授業が多くなったものの、取りたい授業が被っていてどちらかしか取れないというものが多く、そこまで多くは取りませんでした。結局16単位ほど取って終わりました。そろそろお気付きの人も多いかと思いますが、ここまでで29単位しか取ってません。

地獄の3A

地獄の始まりです。サボりまくったツケが回ってきて、授業がめちゃくちゃ入ってきました。その時の履修を貼っておきます。

3Aの履修

1限多すぎますよね……オンラインは多いものの、対面もある程度ありました。特にセミナーがきつく、「3Sの論文を読む」から「論文を読んでスライドにまとめて発表する」に変わったために大変になり、「3回以上欠席すると落単」、「落単すると留年」という事実が相まって、徹夜で行くことが増えました。また、実験の内容も重くなり、終わりが20時くらいになることもしばしばありました。

3Aで一番きつかったのは「レポートの多さ」です。まず、実験レポート。実験レポートは1つの研究室が4日かけて担当する関係上、4日に1つ出てきます。内容も実験手法や内容をまとめて結果、考察を4日分書くことになり、分量がまあまあ多いです。

そして他学部履修の社会学概論。この講義は文学部社会学科の必修だったと記憶しています。オンライン4単位に惹かれて受講したものの、社会学は触ったことがないので授業はよく分からず、課題も毎週1000〜2000字のレポートが出るため、必死に調べながらレポートを書いていました。

この学科は期末レポートでの成績評価が多いため、期末レポートも5〜6本出てきました。3Aの合計で30本、文字数にして10万字以上のレポートを半年で書き上げ、とても大変でした……
もうしたくない……

こうやってなんとか頑張ってレポートを書いたおかげで、3Aが終わった時点で残り5単位になりました。やったね。

新しい環境になった4S

2つ目のターニングポイントです。

4Sになり、研究室配属がありました。統合生命科学コースは3A末に研究室の配属先が決まり、4Sのはじめから配属になります。

そもそも最初にこの学科に入ったときは「医学系や脳神経の研究がしたい」などと思っていましたが、この時にはもうほとんどそれはなくなっていました。その代わり、「生物と物理の融合分野を研究したい、できれば深層学習やプログラミングなども使った先進的で卒業後も使えるようなものがいい」と思うようになり、生物物理学会に入っている研究室を志望して今の研究室に配属されました。特にこの研究室は深層学習も扱っており、第1志望だったので配属が決まったときはとても嬉しかったです。

研究室ではまず2ヶ月ほどのイニシャルトレーニングで実験の扱い方を一通り習います。私のラボはタンパク質を扱うのでSDS-PAGE(タンパク質を分子の大きさによって分ける電気泳動法)などを主に習いました。その後、研究テーマを決めて研究を開始するという流れになっています。

ここで私は当初の医学系や脳神経などではなく「シアノバクテリア内の酵素」の研究を選びました。理由は簡単で「せっかくこのラボに来たのだからこのラボでしか研究していないことをしてみたい」と思ったからです。実際この酵素が見つかったのは2010年ごろであり、先行研究の多くは私のラボから出たものです。

研究がスタートし、基本的には解析のためにパソコンの前にずっといるという期間が続きます。ubuntuなど研究に必要なものの扱い方を学習し、使いこなせるようにするのに1ヶ月ほどの時間を頂いたので、練習としてパソコンをいじる生活を送っていました。

授業については残り5単位を取れば良かったので、純粋に自分の興味のあるものを取りました。
3年の時は実験が被っていて取れなかった教養学部学際科学科の「人間情報学Ⅵ」という授業で、岡ノ谷一夫先生や茂木健一郎先生の授業を聞いたことが印象深いです。

きちんと4Sで6単位を取り、残るは卒業研究10単位のみとなりました。長かった……

院試:生命科学環境系

院試についても少しだけ書こうと思います。詳しいものはアドカレの1日目にあがっているのでそれもチェックしてみてください。

4Sの間に研究室のボスが「暇な時は院試勉強してていいよ」と言ってくださったので、することがない時は、TOEICの勉強と「Essential細胞生物学」を勉強していました。何しろ生物初学者であったので、「とにかく基本知識を詰め込もう」と、本文を読んでインプット→章末の問題でアウトプットを繰り返していました。

生命環境科学系はTOEICとTOEFLの両方で受けることができたので、TOEICを選択してとにかく問題を解いていました。英語が不得意だったのでこれが一番きつかったかもしれません。

その後、院試一ヶ月前では「院試休み」なるものを先生がくださったので、本格的に勉強を始めました。毎日本郷の総合図書館に午前中には行き、閉館時間(平日は22:00、祝日は19:00)まで、生物と化学を主に勉強をしていました。

ラボの先輩から「ヴォート基礎生化学」をお借りして、それもインプット→アウトプットを意識しながらやり、その後、「生化学・分子生物学演習」という東京化学同人の問題集を買ってひたすら回していました。おそらくこの時が大学生活で一番勉強していたと思います。その甲斐あってかなんとか院試に合格し、(卒業ができれば)晴れて大学院生となります。

4A(現在)

4Aのお話です。院試も終わり本格的に研究を進めていくことになります。ここでもまだ解析をずっとやっています。なので、ラボでやることと言えば進捗報告のスライドを作ること、解析用のGoogle Colabのスクリプトを書くことなどです。この数ヶ月でPythonのスキルが飛躍的に向上しました。ですが、研究はうまいこと進まない。そろそろ卒論に向けての描き始めなとやばいですね……

まとめ

具体的に私の経験を通して、統合生命科学コースがどんなところなのかを少しでも理解していただけたら幸いです。
ぜひ統合生命科学コースに来ませんか?
一人でも多くの人がこの文章を読んで統合生命科学コースに興味を持っていただけるといいなと思います。気になった人は駒場サイエンス倶楽部学科のガイダンスに行ってみましょう!!
最後まで読んでいただきありがとうございます。

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