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行き詰まった人に何を教えるか?

格闘ゲームが好きで、主にスト5をやっているRAIと言います。実力はゴールド帯です。人に教えるという経験を通して、自分を見つめ直す機会になったり、アドバイスを求める人に何を教えなくてはならないのか? を考えてみて、ゲームに限らず色んなジャンルで応用が利くかもと思い、記録しておくことにしました。

自分の成長記録としてスト5のランクマッチは初日から欠かさず全部配信しているのですが、2020年9月27日のランクマ配信のコメント欄に質問がきました。自分がスト5で使用キャラにしているララの使い方がよく分からない、とのこと。

yusaさんから質問されて「まさか自分がララの使い方を誰かに教えることになるとは」と思いましたが、4ヵ月ブロンズ帯で頑張ってみて限界を感じていたそうなので、行き詰まった人に何を教えたらいいのだろう? と悩みました。

スタイルに限界を感じる

何を重視してアドバイスしたか?

アドバイスを求めてくるということは、何かしらつまづいたり行き詰まったりして「楽しくない」状態です。yusaさんには申し訳ないのですが「勝てるようにしてあげよう」という気持ちは全くありませんでした。どうやったらyusaさんがスト5を今より楽しめるようになるか? だけを考えていました。楽しめるようになった人のメリットは「楽しむために努力ができる」のと「継続しやすい」ところです。今日だけ勝てるようにしてあげるのは簡単なのですが、それだとずっと勝ち続けないとモチベーションが続きません。【勝利=唯一の楽しさ】になってしまうと、対人戦である格ゲーは負ける頻度が高すぎるので、楽しくなくなって挫折しやすいです。格ゲーが強い人は「やり続けている人」なので、継続しやすいというのはそのまま強さに繋がるのも良い点。

プロに言われた教訓

「楽しさを追及すべき」という考え方になったのは、自分が苦痛をともなう苛酷な練習を繰り返していた時に、師匠であるプロの方に言われた言葉がきっかけです。※ゲーム以外のジャンルでの話。

上達したい気持ちは分かるし、良い結果を出せたら嬉しいのも分かる。でも努力が苦痛になっている現状は楽しいと言えるのだろうか? プロなら結果が全てだから苦痛があろうが勝たなくてはならない、でもアマチュアなら優先すべきは結果ではなく「どうやったら自分がより楽しめるか?」だよ。楽しくなかったら続けられないのだから。

ハッとさせられました。結果が欲しい、他の人よりも上達したいという気持ちで練習していましたが、とっくに趣味の範疇を超えた苦しみの中「何が楽しくてやっているんだろう?」それすら気づかない程の成果依存になり、結果を追い求めすぎて目的を見失っていました。

こういった経験から「その人の楽しさが最優先」という考えに至ります。ここで大切なのは、自分の楽しさとその人の楽しさは必ずしも一致しないということ。どこに楽しさを感じるかは人それぞれですから。

教える時は出し惜しみをしない

最初は質問を自分が答える形式でアドバイスしていましたが、誰かに何かを教える際に自分が気をつけているのは出し惜しみをしないことです。もちろんyusaさんの実力レベルを超えたことを詰め込んでもパンクするだけなのでそこは気をつけつつ、ちょっと頑張れば届くところと今の行き詰まりを解消する方法を教えました。

yusaさんの行き詰まっているポイントは「ララ側から仕掛ける読み合いの少なさ」と分析。ララというキャラは、自分から投げと打撃の二択を仕掛けていくのがコンセプトのキャラなので、二択のチャンスを増やすことがララを使っている楽しさを引き出します。ララの持ち味を活かすチャンスを多くするにはどうしたらいいか? という部分を意識しました。

自分が数か月かけて色々と悩みながら到達した結論があっても、教わる人にそれと同じ時間をかけさせる必要はない、と思っています。自分が数か月かかった結論に数分で到達させる。それが教えるということだと思います。

配信しながらのアドバイスがあまりにも雑すぎたので、後日きちんと初心者講座動画を作成。この動画を作成する際に、自分の中であやふやだった部分が明確になって勉強になりました。自分の中で明確じゃないと教えられないので、考えや技術を整頓する面でも役立ちますね。感謝。

この動画で目指したのは、自分で考えて工夫すれば次のレベルにいけるところでした。相手の昇竜空振りに「中P→中K→Vスキル1」というコンボを紹介していますが、ちょっと考えれば「あれ? 最後を大ボルトにした方がダメージ大きいぞ」と気づいて自分で改良しやすいです。格ゲーに限らず「自分で考えて工夫してみて実際に試す」のはすごく大切で、そういう余地を残した動画を心掛けました。

遥か上を飛んで欲しい

そんなyusaさんもアドバイスしてから1ヵ月半でシルバー到達! 4ヵ月もブロンズ帯で停滞していたとは思えない成長です。

シルバー到達

それから29日でゴールド到達! すごいハイペース! おめでとうございます!

ゴールド到達

yusaさんのリプレイは時々見ているのですが、対空反応が良いし、攻めの散らし方も上手だし、正直自分から教えることがもう無いんですよね。自分の動画を見て攻めのバリエーションを増やしているようですけど、そろそろ自分のララを参考にしない方が強くなるし、ララのプレイスタイルの幅も広がって楽しくなる、と思っています。

世の中には「弟子の師匠越えは許されない」という風習もあるのだとか。自分はそんなことは思わなくて、yusaさんには自分より遥かに上を飛んで欲しいと願っています。同じゴールド帯なので先生と呼ぶのは卒業ですね。もっと上のランクに上がりました! 大会で勝てました! という報告があったらとても嬉しいなあ。

最後に伝えること

プロ以外にとって格闘ゲームは「人より早く上達するレース」ではありません。「人よりも長く楽しめるかレース」です。

仮にスト6が発売されるとして、リリース前日にスト5のランクマをやりながら「こんなに楽しいスト5の対戦人口が減るのは残念だけど、たくさん対戦したし楽しかった! ありがとうスト5! ありがとう対戦してくれたみんな!」と思いながらスト5をプレイしている人こそが、アマチュアプレイヤーの勝者だと思います。

他人のランク昇格報告とか見ていると、焦ったり自分の停滞にいら立つこともありますが、成長していくスピードは人それぞれなのを忘れずに。他人と比較せず、昨日の自分と比較してあげましょう。

楽しむことを最優先にしていれば、強さは勝手についてきます。停滞していても、自分のちょっとした成長を見逃さないようにしてあげてください。

まとめ

そのジャンルの先輩が後輩にしてあげる大切なことは【楽しさに触れさせてあげる】ことなのかもしれません。深い楽しさに手が届いた人は、勝手に走り出します。名ピアニストの最初のピアノの先生がどういうタイプだったか? という研究発表で、スパルタでも英才教育タイプでもなくて「ピアノの楽しさを教えてくれた」「レッスンが楽しくて仕方がなかった」という点が一致していたことは非常に興味深いです。楽しさとはすごいモチベーションです。格ゲーに限らず、趣味は楽しんで長く続けていきたいですね。

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