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出産は親のエゴじゃないよ | エゴとは何か【決定版】



この世には「半出生主義」なる思想があるらしい。
アベプラで見た。

大枠としては、

⚪︎子供を持つか持たないかは個人の自由。そして私たちカップルは子供を持たない選択をします
→チャイルドフリー・DINKS

⚪︎人類は増えすぎた。子孫を残すのをやめて、積極的に絶滅を目指した方がいい
→半出生主義

という感じだった。

なるほど。

確かに「人類は地球の癌細胞」とか言うし。
資源問題、政治への不満、過労やドーパミン過多による精神疾患、フィジカルの衰退などなど、問題を挙げればキリがない…

なによりわたしも「こんな地獄のような世界で生き続ける意味、あるかな」と強めに思っていた時期、あった。今は思っていないが。

なんにせよ、
人類は絶滅すべき、という思想は一理ある。
それが「チャイルドフリー」という自由意志にとどまるか「人類全員そうすべき」という超積極派になるかは、個人が抱える絶望や罪悪感の大きさに比例するのだろう。



ところで、
1つだけどうしても納得いかないことがある。
キャッチコピーのように汎用されるセリフ、

「出産は親のエゴ」という言葉。

あれは多分だが、
エゴの定義に照らし合わせると大はずれというか、

あの言葉が出るたびに引っかかって、先を聞く気がごそっと削げてしまう。
仮にも人類レンジの思想を謳うなら、一回ちゃんと標語を見直した方がいいんじゃないかな。知らないけど。


ーーー


巷では「エゴ=わがまま」みたいな用法ばかりが溢れているが、エゴとは本来そんな意味ではない。

(気になるなら自分で考えるかググってほしいのだが、興味がなければ「ハ?」だと思うので、わたしのざっくり見解を聞いてください。)

エゴ(自我)とはたぶん、
「流れを変える力」全般の総称だ。

「拒絶・反発する」「分離する」「区別する」
「覆す・這い上がる」とかで言い換えることもできる。「止める・速める」もそうかな。

まだ抽象度高いか。
日常レベルで言えば、

「適当に生活してたら体重が増えたので、ダイエットして痩せた」とか
「一念発起、猛勉強をして難関資格に受かった」とか。

こういった「努力」と呼ばれる行動もエゴの産物だ。
エゴ=わがまま、と悪者にされがちなのは、

「スーパーのお菓子売り場で延々と駄々をこねる」
「彼女にふられたのが受け入れられずストーカー化する」

というように、
エゴのマイナス側面は強烈に人をうんざりさせるので(事件性すらある)、その悪印象が一人歩きしがちなのだろう。

さらに規模をスライドさせると、エゴは人の文化の大事な一要素だ。

「海を越えた景色を見たい」
「夜でも灯りが欲しい」
「持ち上げられない重さを運びたい」
「このままでは死んでしまう子の病気を治したい」
「みんなが飢えないよう食物を保存したい」
「敗戦で焼け野原になった自国を復興させたい」

…彼らが自然に存在しないものを望んだ結果、子孫である我々は山積みの問題を抱えることになってしまったが、

さすがにわたしはもう、
その発明や努力の結果を享受して暮らしながら「どいつもこいつも有罪だ!」とご先祖たちを罵倒できるほど自分勝手ではない。



若干話が逸れたが、つまり。

エゴはそれ自体では善でも悪でもなく、
全ての人類に備わっているただのパワーだ。

その力を存分に燃やすべき時もあれば、
抑え込んででも素直に流れを受け入れた方がいい時もある。そういう話。

目の前の状況でどちらを選択すべきか見極められるようになるには、ある程度の年月とリスクと実践と失敗と猛省が不可欠なのが辛いところだが…

…まあ…仕事における新人と同じだ。
人生はそういうところある。切ない。


ーーー


で、それを踏まえて最初の話に戻ると、

「出産は親のわがまま」は筋が通るかもしれないが「出産は親のエゴ」は通らない。

出産は明らかに生物の法則、自然に沿う行為だし*

*正確には、ある程度成熟した社会で出生率が下がるのは「自然」のようだが、
それが自然ならもうどう足掻いてもそうなのだからそもそも反出生思想を唱える必要はなくなり「別のことに熱意を向ければ…?」となってしまう。

むしろ種の保存という「本能に逆らって」絶滅を目指す姿勢こそエゴベクトルそのものだが、

自分たちがエゴ側であることを自覚しないままエゴを糾弾するというのは、ちょっと滑稽だ。
バカっていう方がバカなんだぞ!を地でいく羞恥がある。

いや、もしかしてブーメランなことも承知で言っているのだろうか?だとしたら一周回ってカッコいいな。


ーーー


うん。エゴの使い方が微妙なのが気になりすぎてつい色々言ってしまった。

そのキャッチコピーはやっぱり違うのにしてほしいなあ…という、
イデオロギー自体にはちょっと共感した人間からの
ささやかなフィードバックである。



おわり。

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