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イリヤ クーリック と4回転

180cmオーバー、ウエイトは70kg超え。
彫刻のように美しく、これ以上ないくらいに麗しい容姿で、かつ力強く男性的。
誰が着るんだと突っ込まれるほどの変衣装(私は好き)を難なく着こなし、整った抜群のプロポーションで着痩せするイリヤクーリックは、実は結構ガッチリ体型。
本来、足が長くすらっとした体躯は、見る分には美しくとも、ジャンプは物理的に跳びづらいと言われています。

…にも関わらず、イリヤクーリックにおいては、その技術の高さ、正確性、恐ろしいまでの高さと美しいランディングから四半世紀越えの今でもベストジャンパーの呼び声が高い。

オリンピックのひとつ前のシーズンからプログラムに4回転を入れてきました。
25年前に4回転を跳んでたのか…というのと、フリーに一回入れるか入れないかだったのか…という、相反する気持ちが混在します。
…でもさあ、4回転てそういうもんなんだよ!下で回らない限り早々跳べるもんじゃないんだからね!(何様)

1996年のGPFフリー、白ロミオは冒頭で見事な4Tを決めました。実況は着氷とともに歓声をあげていました。
本当に見事です。全く無理のない、なんともイリヤらしい美しい4T。圧巻です。いわゆる今主流になってしまっている、下回りはほとんどないです。本物の4回転と言っていいのではないだろうか…。今の4回転ジャンパー達とはちょっと別にしておいてもらいたいんだよな。まぁ、25年前だしいずれにしても同列に語られることなんてないんだろうけど。

そもそも毎回4回転を入れてくるわけではなかったし、あの頃はSPでは4回転を跳ぶことが認められていませんでしたので、跳べる選手であっても限られたものでした。完璧に成功したのはこのGPFとオリンピックと、あと世界選手権でも成功していたかな?? 知らないだけで、他にもパラパラあるかもですが…。
手をついて…というのはいくつかあって、パンクもたまに…。ただ、転倒はほとんどしたことなかったはず。
パンクについてはオリンピック前にもmy weaknessだと自ら言っていましたね。

オリンピックの時の4Tも良かったけれど、今にして見ると、彼にしては空中での軸が若干傾き気味になりつつあった。…というか、空中でもう一段階伸びようとしてる?跳びすぎた?? 跳躍に優れた人が見せますよね、最高到達点でさらに高くなるやつ、…それを見事な集中力で引き寄せて着氷し、ニコリともせず冷静に次の動作へ…。
やっぱり神懸っていたなぁ。

このシーズン痛めた背中はおそらく慢性的なものになっていたはずです。体が大きいだけに、負担も相当であったはず。やはり4回転は諸刃の剣だと思います。しかしながら今の女子シングルじゃないけど、4回転無しで現役を続けるのは難しい…早々の現役引退はこのあたりにもありそうだと思わなくは無いのです(最も早くT女史から逃げ出したかったんだろうけど…。勝つこと=競争にももともと興味が無い性格だそうですよ。。でも負けたくはない…なんやねん)
跳べるけど、競技選手を続ければ取り返しのつかないことになる(=体を痛めて氷上に立てなくなる)…スケート自体は続けていきたかったイリヤクーリックの決断だったと思います。…っていうか、とにかく好きにショーに出たかったんだよね。。

今は男子女子関係なくガンガン何種類も4回転を跳ぶ時代になってしまったけど、ものすごく無理した4回転ばかり。体も心配だし、はっきり言って無理して飛ぶジャンプは美しくないです。
4回転を跳ぶ心意気は素晴らしい!…しかし、ただただそれだけを評価するのであれば、競技自体の破滅です。

イリヤはまだまだshow manで、コーチ一本ではやっていないけど、現況をどう思うか聞いてみたい気もします。
でもなー、語らないんだよなー、彼は。
今は今、っていうスタンスでいそう…。僕らが口出しすることじゃない、みたいなー。このあたりもT女史と真逆。性格的にそもそも合わなかったのかもね。
ま、そういうドライなところもとっても好きです。ほんとのとこは知らんけど。……これが言いたかったの。

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