捨てOONS 第三話「それでもOONSは回っている」

もう一度お伝えしますが、この物語はフィクションです。実際のテレビ番組とは、一切関係がありませんからね!!また、この物語には特定の思想を擁護・批判する意図はございませんからね!!筆者と「ぼく」の思想は必ずしも一致しません。あくまでも創作物として、お楽しみください。いいですね!!あとお食事中には読まないほうがいいかもね!!!!!

結局、ぼくは、OONSを拾わなかった。目の前で、毛布一枚にくるまれたOONS。凍えそうなOONS。ぼくのことをうるんだ目で、きっしょく悪い目線で見つめてくるOONS。ぼくはそれに、たったのカフェオレ一杯。その一杯をくれてやっただけで、さも自分がこの世の救世主様にでもなったような気分で、その場を去っていった。そもそもそんなカフェオレ一杯くれてやっただけで、事は一切改善に向かってなどいない。また数時間でも経てば、結局OONSは凍えることになるのだ。まさに時間の問題である。ぼくはこんな机上の空論を、22℃の暖房が支配する居間で、ふかふかなソファに寝ころびながら考える、いや、妄想する程度しかできない。文明の上でただただ踊らされるお人形さんにしかなれないのである。…いや、こんなことを考えるのはやめよう。テレビでも見るか。
「0024時間テレビジョン!!つづいての企画は~~!!」
はあ…出た。ぼくは、しいたけと0024時間テレビジョンが嫌いだ。ボランティアを主にしたチャリティー企画をうたいながら、出演者のギャラは何千万。そのお金で、救われるOONSが一体どれだけ、いや、やめよう。一旦OONSのことは忘れよう。
「つづいての企画は、被災地を応援!千羽鶴を折って被災地に届けちゃおうのコーナーです!!」「うわぁ!すごいハートフルな企画ですね!!」
やめとけ。こいつらは、被災地をサッカーのチームかなんかだと思っているのか。だいたい、贈るものが逆じゃないのか。被災地には金銭的な支援。で、出演者共には千羽鶴でもくれてやればいい。どうせ被災地に千羽鶴を送ったところで、焚火の足しにでもなればいい方である。はあ、こんな偽善には反吐がでる… なんて、OONSに言わせれば「お前だよぉ😡」って所だろう。窮地に立たされた人間以外、窮地に立たされる感情などわかりやしないのである。

「しゅん、今日は歯医者さん頑張ってえらいね~!何食べにいく?」
「やったやった!しゅん回転OONS行きた~い!」
待て待て。テレビに気を取られていたら、とんでもない言葉が聞こえてきたぞ。なんだ回転OONSって。なんてもん回転させてんだ。OONSが回転しないに越したことはないだろ。そもそもしゅんの歯医者だって今日は歯磨いてもらって終わりだったろ。何だこの虫歯でも抜いたみたいな祝いようは。

はあ…今日模試だったのにな。ぼくには相変わらず聞いてくれないんだな、どこに食べに行くかなんて。ぼくの将来が懸かってる模試なんかより、しゅんの歯の方が、母さんにとっては大事なんだな。そんな重苦しい感情に副旋律を添えるように、軽快な音楽がうるさいくらいに店内に鳴り響く。
「か~っぱかっぱかっぱっぱ~の~か~あっぱ~に~し~♪ はいっ😊はいっ😊はいっ😊 か~っぱかっぱかっぱっぱ~の~か~あっぱ~に~し~♪」
こんな店、作る方も馬鹿なら来る方も馬鹿だ。なによりも屈辱的なのは、傍から見ればぼくも立派に馬鹿の仲間入りだということだ。
「しゅん、色々なOONSがいっぱいあって楽しいね~!」
「あ、OONSの臓物焼きだ!食べた〜い!」
「それ苦いけど、ちゃんと食べられるの?残しちゃダメよ?」
「しゅん絶対食べられるから!だいじょ〜ぶ!」

...結局ぼくが食べる羽目になる。しゅんはよりによって2貫セットのやつを頼み、一口だけかじって食べるのを放棄しやがった。ぼくの目の前には約1.7貫のOONSの臓物焼きと、しゅんの唾液が少々。計画性もなければ根性もない、おまけに思いやりもない。馬鹿の三点盛りである。とりあえず0.3貫だけかじってみる。…味はノーコメントとさせていただこう。

その後も次々と目と舌を疑うような非常識な料理の数々。OONSの直採れ卵の玉子焼き、OONSの皮削りスルメ、OONSのしわくちゃミルフィーユ。ぼくは自分では一切頼まず、皿を取らず、ただただしゅんのお残しを口に含んではトイレに直行して吐き、食っては吐き、食っては吐き、流した涙とトイレに流した吐瀉物は数知れず、悪の権化を頬に溜め込み厠へひた走る様はまさに冬眠前の栗鼠そのものであった。気づけば目の前には皿。皿。ただひたすらに皿。机上を占拠したのは皿のメトロポリスであった。東京の夜景が幾多もの残業で成されているように、この皿たちの市井を構成するものは、紛れもなく吐瀉物である。

この世界に降り注ぐ雨。たとえそれがどれだけ残酷なまでに降り注いだとしても、止まぬことなどありえない。今、まさに吐瀉物の雨が止み、おあいそという名の虹が架かろうとしている。
「本日はお越しいただき有難うございます。お皿が合計で43枚になります。お客様、当店はお皿5枚毎にOONSガチャに挑戦して頂けるのですが、どうなさいますか?」
虹が消え失せた。このにわか雨は、長く、そして相変わらずろくでもないものになるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?