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『イノセント15』

 「15歳、人を愛せると思っていた。」初めて見たときからこのフレーズが私のハートに突き刺さったまま頭から離れないのです。愛ってなんだ?好きってなんだ、、、?頭の中はいつだってぐっちゃぐちゃ、そんな出逢いがありました。


 先日渋谷にある映画館UPLINKにて、とある映画を観ました。

あらすじをスーパーザックリ話すと、母に身売りを強要され虐待を受ける成実と、ひょんなことから父親がゲイだと判明し受け入れられずびっくりしちゃった銀による、自分探し亜種ラヴストーリーです。(異論は受け入れます笑)

甲斐博和氏が監督を務めるこの作品との出会いは昨年2016年12月、テアトル新宿でのことでした。同年6月にテアトル新宿にて2日間限定レイトショーが行われ、その反響と監督による熱心な映画祭への出品などによって話題となったイノセント15が新宿にて1週間限定でレイトロードショーされたときのことです。前回の新宿、そして今回の渋谷の2回とも私は上映後の監督によるアフタートークにも参加することができました。

これは難解な物語(時には描写不足との批判レビュー)であり、置かれている立場や起きている状況などを、何の予備知識もないままに物語として理解し、享受することは難しいかもしれません。言ってしまえば、説明不足や過剰演出。内容に対する疑問や不透明さは私も抱きました。しかし監督自らがアフタートークで語る言葉や、Twitter上の解説などによって理解が深まっていき、まるで国語の授業の「問題、この時の○○の気持ちを述べなさい。」という問いに対して「知るか!!!」と思った15歳のあの頃には想像しえなかった、「答え合わせ」をしていくうちに物語の深みを一層感じて、すっかり嵌ってしまったのでした。

映画祭に出品する中で何度も編集が繰り返され、洗練されたものになりました。それと同時に私たちが観ることができなかった様々なシーン、そして15歳の揺らぎを描くために抑えられた(「描写不足」にも繋がる)数々の表現があったようです。自主制作映画としては異例のロングラン・ヒットを続けているのは甲斐監督による努力の賜物であり、尚且つ作品にそれだけ多くの人を惹きつけてやまない魅力があるからに、他なりません。いずれは商業映画の道へ進もうとしている甲斐監督は、今作で何としても結果・実績を残しその未来へ突き進むためにステップアップしようと奮闘しました。そして『イノセント15』をより多くの人に観てもらうために数々の映画のコンペティションに出品し続けたのです。編集作業も試行錯誤を繰り返し、遂に2015年の第9回田辺・弁慶映画祭にて惜しくもグランプリは逃したものの、映検審査員賞に輝いた。現在に至るまで映画館で上映されているエディションはここからさらに手を加えたものみたいです。何度も何度も映像的推敲が重ねられた『イノセント15』のその結果として、良い意味で不安定で、とても切れ味が良いカメラワークに痺れます。

主役は萩原利久演じる岩崎銀と、小川紗良演じる佐田成実。他の誰かでは絶対務まらなかった作品であると、観終わったら強く感じました。甲斐監督も言っていたように、2人は瞳が語る力がとても強く、映画の宣伝ポスターのこちらを見つめている2人に、何十人、何百人もの人々が吸い込まれそうになったことでしょうか。

銀役の萩原利久は2月28日生れで、映画の撮影当時はまさに15歳だったらしいです。まだまだ厳しい寒さの2月に順撮りで行われたようで、役者の成長と役柄の成長がリンクしていく様子も見どころの一つです。物語のラストでは銀がビッグスクーターを無我夢中で走らせるシーンがありますが、撮影当時の様子から推測するに、少ない予算と限られた時間の中、萩原利久が16歳になり、オートバイを運転できるようになるのに合わせた、超過密スケジュールの中で撮影は敢行されたのかもしれません。こんなファンタジー的展開はあくまで私の推測にすぎませんが。


そんな『イノセント15』、今現在(2017/5/12)劇場公開は行われていませんが、渋谷UPLINKによる「UPLINK Cloud」にて、オンライン上映が行われています。劇場による映画体験ではないけれど、まだ、観られます。観てください。怒涛の88分間を体験してください。

兎にも角にもこの映画を観て、一筋縄では言語化されない心の奥底の感情を揺さぶられてみて下さい!

追記:個人的には、2人が電車に乗って揺られている時に、日差しで車内がぱあっと眩しくなったシーンが、希望を感じて何とも涙腺にグッと訴えかけるものがあって好きなシーンの一つです。そして物語の続きが非常に気になります。また、甲斐監督は次回作に既に取り掛かっているようなので、そちらも楽しみに待っています。今回の画像は公式Twitter: から拝借しました。


それでは只管に、長々と書きなぐった愛が、誰かに届いたらいいなあとぼんやり願って終わります。


参考

公式HP:innocent15.toca.tokyo/

甲斐博和監督Twitter:


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