猫冲の事件簿Ⅲ Mりん篇📗④
覆水盆に返らず
ズーカさんから聞いた話をみんなにも伝えよう。あれだけの事情があったなら、ゲームなんて二の次になってしまうのも無理はない。事情さえわかれば、みんなも納得してくれるはず!
そう思ったわたしは、夜の部のギルドチャットで報告をすることにした。
失踪したズーカさんと連絡がとれたこと、無断でギルドを放りだしたことは反省してるようだったこと、それから、ギルドを放りだすことになった事情。
わたしが聞いたことは全部話したつもりだった。
話し終えた後、みんなの反応を待っていると…
帰ってきた返事は予想もしなかったものだった。
『…それで?』
え、もう全部話したよ?
ギルドを放りだして出てったし、出てく時に失礼なことを言ってたのも聞いてるけど、それは、仕方がないトコロもあった。だから、帰ってきてもらおうっていう話なんだけど…
『まあ、猫ちゃが善人なのはわかった。でも、私はちょっと無理。』
『まあ、そういうことよ。おっきーには悪いけど、「それじゃあ、また一緒にやりましょ」とはならないんじゃないかな。ごめんね。』
『私たちの事を要らないって言ったのは、ズーカさんだからね。』
でも、あのときはちょっと冷静で居られなかった事情があったから…ああ、これはだめだ。
その後も少し粘ってみたけど、やっぱり修復は無理だった。わたしは安易に喧嘩してしまった事を後悔してるのか、みんなのドライな反応が悔しかったのか、それとも拒絶されてるズーカさんが可哀想だと思ったのか…、よくわからない気持ちでいっぱいになってしまった。
一体ズーカさん絡みで何度泣かされれば気が済むのか。
とりあえず、話し合いの結果は、ズーカさんには伝えないことにした。
そもそも、ズーカさんから積極的に桜花に戻りたいという申し出があったわけではないし…とりあえず、今後もデートしたり、一緒に遊べたらそれで十分だと思う。
利害関係人(?)への相談
ズーカさんとは、ゲーム内外を問わず、やり取りをするようになっていた。ゲーム外での連絡のやり取りには、lobiを使っていた。
ある時、ズーカさんと話をしていて、『これはちょっと離婚してあげたほうがいい』と思うようになった。
きっかけは、ズーカさんからリアルの婚活がうまくいってないという話を聞いたこと。わたしも婚約者が居る身だし、結婚を目指して婚活するのはいいと思う。『ズーカさんも頑張れよ!』と鼓舞したんだけど…
ズーカさんが言うには、婚活が上手く行かない理由は、わたし猫冲にあるのだそうで…
『婚活で出会った女の子とまおちゃんをどうしても比べてしまって、こんな時、まおちゃんならこう言ってくれる、まおちゃんならこうしてくれるはず』
こんな風に、わたしの幻想と眼の前のお相手をつ比べてしまって、前向きに婚活に取り組めないというのだ。
🐱(現実には、こんなケモミミを生やしたイカれた女はいません)
婚活の失敗がわたしのせい…わたしの性格、キャラクターを魅力的だと言ってくれてるのは嬉しいけど、じゃあ彼氏と別れてズーカさんと付き合ってあげるわけにもいかない…
彼の人生に、わたしが悪影響なら…わたしは手を引くべきなんだ。そう考えたわたしは、ズーカさんとの離婚を決意した。
しかし、離婚は決めたものの、どう話を進めたものか…と悶々と考えを巡らせていると、あの人物が思い浮かんだ。
🐱(ああ、バツイチが近くにいました)
さっそく、その人物こともじゃりん氏をハウスに呼んで、離婚経験者の体験談を聞くことにした。
もじゃりんは、「ちょっと相談したいけど、いいかな」と声を掛けると、「はいおー。」といって割とすぐに来てくれた。
「…こういうことがありまして、ズーカさんのためにも別れたほうがいいと思ったんです。」
「そっか、ズーカさんは、現実とゲームを一緒に考える人だったのねー。」
さすが数多の愛人に囲まれているだけあって、もじゃりんは話の聞き方がうまい。適度に共感してくれるし、相槌もほどよい感じ。
🐱(ちょっとムカツク)
そして、「私が話してあげようか?そういうのは、私結構得意よ?」と介入してこようとするもじゃりん。
『そういうのは得意よ?』別れ話を切り出すのが得意ってどんなんだよ。とりあえず、ありがた(迷惑)い申し出に、自分で話すから大丈夫ですと伝えて、この話はおしまいにすることにした。
「まあ、困った事があったら、いつでもアドバイスするからね。」
どうしたものだろうか…
『イケナイ猫ちゃん』
猫ハウスでもじゃりんと話し込んでいると、個チャにズーカさんから連絡が入ってきた。
「週課おわったから、いまからそっち(ハウス)にいくね。」
🐱(❗)
あ、別にいいんだけど、何だろう…ちょっと嫌な予感がする…それにしてもすごいタイミングだな、もじゃりんと『ズーカさんとの別れ話の切り出し方』について話してたところに、ご本人登場って!
え、どうしよう、もじゃりん急に「出ていって!」なんて言うのも変だし…え、どうしよう💦
猫さんが一人でわたわたしているところに、猫ハウスに入ってくるズーカ氏!
「こんばんは…この人は?」
何かを察しているのか、もじゃりんを一瞥して、ちょっと殺気立っているような雰囲気を醸し出しているズーカさん。
「あぁ、新しくギルドに入ってくれた人だよ。もじゃりんさん、ギルドごと引っ越してきてくれたの。」
嘘ではない。
とりあえず、紹介だけして、もじゃりんにお帰りいただこうかなと思っていたところに、脇から口を挟んでくるもじゃりん氏。
「こんばんは、猫さんのお友達です。」
どうも。
なんていうか、『わぁ、新しいお友達だ♪仲良くしましょうね!』っていう空気感が全く無くて、お互いに疎ましそうな感じを出してる…
🐱(あの空気感よ…)
それから、ズーカさんは『それじゃあ、ギルドに戻ります』といって、猫ハウスから出ていってしまった。
なんか、不倫現場に突撃されたときのような空気感にさら曝されて、ほんと生きた心地がしなかった…
🐱(うぇー、ミスったなぁ…)
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