RAFTができるまで。vol.33


〜hama編

…そして、六本木のお店のサラダ場で働くことになる。

最初は野菜をカットしたりサラダを盛ったり…。
スーパー主婦の皆様に手ほどきをうける。

「形は揃えて!」
「これは細切りではない!!」
「ここは真ん中ではない!!」
「パッキングは丁寧に!!」

沖縄を出るまで台所に立つことはなかったし、こっちに来てからも自分が食べるだけの調理しかしたことなかった。包丁も上手く使えないし、ピーラーの使い方から学ぶ。
併せてYouTubeで学んだり…。

みんな「大丈夫だよー」って言ってくれる優しい人達だったけど、めちゃくちゃ迷惑を掛けていた。

作業は遅いしやり直しは多い。

「これやってねー」と言われる。
やる。
「おー、そうなるのね笑」と言って1から教えてもらう。笑

知識も経験もゼロすぎて、主婦なら、キッチンで働いてる人ならこれくらい言えば伝わってこれくらいのクオリティで戻ってくるだろうが全く通じない。

野菜切って盛るだけを教えることがこんなに大変とは…と思われていたと思う。笑

そんなこんなで、とにかく包材の補充、片付けと最後の床掃除を一生懸命にやって、ゆるしてもらおうと頑張る。笑
いつまで経ってもその還元方法しかしらない。

そんなこんなでサラダ場でのお仕事が3ヶ月位経った頃、次はキッチンで働いてみる?と言われる。

いやいやー。
補助とはいえ、混ぜたり切ったりコンロを使ったりオーブン使ったりはする。
お客さまが直接食べるものをつくる。
サラダ場でさえ不安だらけなのに?!無理無理!と思っていたけど、組織に個人の不安は届かないのが社会の摂理。
大丈夫だから!とキッチン部門へ…。

元々スタッフ数が少ないところで、間の教育係みたいなスタッフがいなくて、すべてをシェフから学ぶことになる。

まじ?シェフから習うの?ってめちゃ緊張したし、小さな質問もシェフにしないといけない感じがなんか申し訳ないような気持ちでいっぱいになりながら働く。

怒られたりすることはないけれど、これで大丈夫だろうかの不安は常にあるし、ずっと見てないといけない労力をかけているというストレスと、ずっと見られているストレスがあった笑

「今日はうまくいったな」って日が1日もないまま2ヶ月くらいがあっという間に過ぎた。

もともと知っていた人たちの中に入ることや、不安をぶちまけられるホールの仲良しスタッフがいたことがせめてもの救いだった。

シェフは怖いけど、怖いって知ってたし、間のスタッフも感情の起伏強めだけど、感情の起伏強めと知っていたし、すぐ先輩にあたるスタッフは優しいけどいつも怒られていることも知っていた。

その環境を知ってて、そして、その環境を知ってる人たちが周りにいるというのは心強かった。


もちろんキッチンに入ってからも失敗ばかり。

アルコール飛ばすがまったく飛んでいなかったり、ドレッシングの乳化の意味がわからず分離したり、メレンゲ混ぜ過ぎてボソボソにしてしまったり、生クリーム5分立てが8分立て超えてない?ってなったり、作ったドレッシングがなぜか硬すぎてボトルから出てこなかったり。。。

もっともっとたくさんあったけど、1番呆れられたのは…というか呆れを通り越して笑われたのは、ホワイトソースを焦がしたこと。

焦げないようにずっと混ぜてねと言われて、ずっと混ぜていた。

シェフが鍋を覗いて「焦げてるよ‼︎」と言われる。


私の頭の中では「焦げ=黒」

ホワイトソースは黄色になっちゃダメだから。と。


「そうか、そうだよね。色がつかないようにと伝えないといけなかったね」

シェフとして、なかなか素人に仕事を伝えることはなかったから基礎はあるものだとして、伝えてしまってたと笑っていた。

そんなこんなでたくさんの失敗をしながら基礎をシェフから学ぶ。

人参の皮の剥き方から
スライサーの使い方から
玉ねぎのヘタの取り方から
鶏の掃除の仕方から…

混ぜ方一つから切り方一つまで。

すごくありがたいことだった。

たくさん失敗して嫌になるけど、諦めずやらせてくれることもすごいなと思った。
「料理人になります!」という社員でもないのに…。


最初の頃は必死過ぎてわからなかったけど、少し周りが見え始めると、シェフが1番作業が丁寧で何もかも早いし、教え方も細かく、慣れてきたらこうするよは絶対に伝えず、基礎の基礎を教えてくれていることに気づく。
時間がかかっても1番基礎的で他に応用がきくやり方で。
慣れてきて周りが見えたらこうやれば早いとかは自分で身につくでしょというスタンスらしい。
そして、他でも使えるようにとこれはこうだからこうしてるっていうのを理由つけて教えてくれた。

あとは隣にいつも怒られている若者社員がいたので、その怒られているのを聞いてうちあたいし、なるほど、そういう時はそうするのね。とかも学べていた。

いつも不安。が「これはできる!」になるときがくるのだろうか。

このキッチンで初めて里芋を剥いたし、初めてタコをカットした。タコとか買ったことないしね。

タコの口を初めて見たし、骨はないくせに筋があるのかとか。

あと、今まで考えたことなかったけど、(言われたわけじゃないけれど)卵割るの下手くそっぽい笑

ここまでの素人がキッチンで働けるってなかなかない経験をさせてもらっていると思っていて、シェフは怖いけど、とてもとても感謝している。

シェフもまさかシェフになってこんなど素人に伝える日が来るとは思ってなかっただろうな笑

遅過ぎてイライラされてるなって思うこと、雑過ぎてやり直されてるなって思うこと、呆れられてるなって思こと、もう早く帰そう思われてるなって思う瞬間は毎日のようにあって、そのたび、小心者の私は心が削られている。

もう嫌だと思っている。笑

ホールの仕事だったらだいたいここまではできるかなーとか、抜き方もなんとなくわかってたり。それがないから嫌なのか、いつも外から見てた「キッチンの独特の空気」が嫌なのか。

できることがないというのはなかなか辛いなという経験をしている今、あの時のあの子のことがわかってあげられなかった自分をめちゃ反省したりして。笑

今だったらすごくいいバイトリーダー、トレーナー、チーフになれそうだ。
もう遅いけど笑

料理だけじゃなくて、気持ちの面でも色々考えること、思うことがあって、不可抗力だったけど、キッチンに加入できてよかったなって。

いつ追い出されるかわからないけど。

新しいことやるときはやっぱり楽しいし緊張もする。

ただ、ひとつ、欲しいなと思うのはお客さまの反応。

デリってそこで食べるわけじゃないからホールの人から伝えられることもないし、キッチンにいるとどんな人が食べてくれたのかも分からない。

作業にならないように。は素人なりにもいつも頭において。

食べてくれる人がいる。

新しい感覚。
ホールとは違う緊張感。

そして、毎日行きたくないなーと思う朝。



次回に続く。。。

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