庭とほうき ~手仕事の庭にホウキモロコシを植えて見えたこと~
フクシマアズサ
2018年から2019年にかけて、手仕事の庭にホウキモロコシの種をまきました。庭で育てた材料で、手仕事の庭のほうきを作るプロジェクトです。
普段畑で土に慣れ親しんだ生活をしているにもかかわらず、庭という場所は私にとってどこか遠い存在でした。ホウキモロコシは、普段は畑で育てている工芸作物です。畑は生産の場所であり、収量÷(時間+手間)=成果。その考え方は男性的。それに対して庭は、どこか女性的でやさしい感じ。そのギャップが、庭と私の距離でした。
例えば種まきを見ても、畑ではどれだけ効率良く全体にまき終えることができるかが考えられます。効率良い動き、手順、道具の使い方。これらを作業を繰り返す中で体得していくという感じです。それに対して庭では、一粒一粒の種まきの時間が大切。一粒一粒丁寧にまかれながら、一粒一粒に慈しみの念を込められ、芽吹きの瞬間を想像する。庭では、収穫だけでなく時間や手間ひまも含めて、全部が価値になるのだと知りました。
さらに驚かされたのは、雑草に対する考え方です。畑だったら、作物の邪魔になる雑草は敵。生えれば抜いて、また生えれば抜いて、一本も残したくありません。雑草に作物のための栄養が吸われては、たまらないからです。しかし庭では、雑草も庭の風景の役者のひとつとなる。アイのエリアにこぼれ種のルッコラやシソが居たり、コブナグサなんかはあちこちに。雑草という意図せぬ植物であっても、手入れをする庭人さんの感覚で残され、生えた場所で庭の構成員となるのです。
「庭は自由意志の集合体だ!」。
庭でホウキモロコシを育てるうちに、私の中でこんな確信が生まれました。手を入れる人、育つ植物、やってくる虫や鳥。全員の自由意志が庭を作っていて、だから庭には、のびのびした空気が流れている。この確信は、やっと庭に近づけた、という瞬間でした。
「じゃあ庭のほうきも、手仕事の庭らしい形にしよう!」
そうして2018年の秋に制作したのがこんなほうきです。疎らに育った穂を全部活かせるように、長いものから順番に並べて形作る。編み糸は庭の植物で染めていただいたものを。柄はローリエの選定枝。藤の蔓も活用して、庭成分100%に。庭の植物が思い思いの意志で庭全体を形作るように、ほうき全体を形作るような。
このほうきも「庭の自由意志」のひとつとして、庭仕事の役に立てるといいなぁと思います。
フクシマアズサ ほうきの栽培から制作
2019年工房からの風 風人としてワークショップ参加
https://hoki-fukushima.net/
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