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【攻略日記】一方的に手相を伝授する謎のおじいさん

20代前半の頃、私は日本にいて、とあるホテルの『能力開発部』という部署で働いていました。『能力開発部』とは、ホテルの従業員向けのマナーセミナーやペン字講習会、茶道講習会など従業員のスキルアップを目的にした催し物を企画・運用をする部署なのですが、セミナーや講習会の開催は、1、2ヵ月に1回程度。残り大部分の時間は、ホテル内の会員制サロンで受付&お世話係として勤務をしていて、どちらかというと、こちらの会員制サロンでのお仕事がメインのようなものでした。
この会員制サロンの会員さんは、会社の社長さん、会長さんなど時間やお金に余裕がある方々で、平均年齢70才前後といったところだったでしょうか。
囲碁を打つことが名目のサロンでしたが、会員さん同士で囲碁を打ったり、日替わりでいらっしゃるプロ棋士に指導を受けたりする他、雑談したり、ルームサービスを取ってお食事をしたり、テレビを見たり…優雅なくつろぎの空間になっていました。休日・平日問わず、ほぼ毎日いらっしゃる会員さんも多く、会員さん同士もみんな顔見知りでアットホームな雰囲気があり、私も居心地が良かったと記憶しています。

前置きが長くなりましたが….

30年ほど前のこの会員制サロンで、今でも忘れられない謎のおじいさんとの不思議な出会いがあったので、記しておきたいと思います。

おじいさんとの出会い

働き始めて、数か月が過ぎたころ、杖を突いた和服のおじいさんがサロンへいらっしゃいました。それまで和服の会員さんがいなかったこともあり、まるで遥か昔からタイムスリップしてきたような異質な雰囲気をまとっていらっしゃったのが、第一印象。その方は会員のTさんで、噂によるとホテル周辺の大地主さんらしい…とのことでした。ホテルが位置する千代田区紀尾井町は、江戸時代に数多くの大名屋敷があった場所だったため『Tさんはどこかの大名家のご子孫なのかな…』などと勝手に想像していました。

一方的に手相を教えられる

『ちょっと、君…』
ソファに腰かけているTさんが手招きをして私を呼んでいます。私がTさんのところへ行くと、Tさんは羽織の袂から四つ折りのわら半紙を取り出しました。『君、手相って知っているかい?』広げた紙には、手形の枠線の中に、手相と思われる線が描かれています。私は、『手相』という言葉の意味は知っていても、それ以上の知識は無く、また占いにも全く興味がありませんでした。その旨、Tさんに正直にお伝えしたにも関わらず、Tさんは、お構いなしで紙に描かれた手相の線についての説明を始めました。
会員さんの話し相手になることも仕事の一環だったため、私はTさんの手相の講義を受けることに…。熱心に説明をして下さるので『Tさんは相当、手相占いがお好きなんだな…』と感心はしましたが、失礼ながら内容は軽く聞き流していました。
しかし…数週間後に再びTさんがサロンにいらっしゃっり『これ、何の線か覚えてるかい?』と言いながら、例の手相の紙を広げました。それは前回の手相講義の『おさらいテスト』でした。『これは、まずい…あの講義はしっかり覚えて復習をしておかなければいけなかったんだ!』と、私はその時に気付いたのでした。
そして、その後もTさんは、いらっしゃる度に、新しい手相の講義とおさらいテストをして下さるようになりました。とにかく、疑問だったのは、この手相講義&おさらいテストは、なぜか私だけが受けていたこと。同僚に聞いても、誰もTさんから手相の話をされたことがないらしいのです。同僚からは『手相の講義&テスト、ご愁傷様~』と言われる始末。
Tさんは数週間いらっしゃらない時もあれば、毎日のようにいらっしゃる時もあり、神出鬼没。でも、おさらいテストがあるため、私はいつもポケットに小さなメモ帳を入れ、手相講義の要点を毎回書き留め、テストに備えるようになりました。かと言って、手相に興味が湧くわけでもなく、あくまでも仕事としてやっていた感じです。

忘れられない『4つのこと』

約3年間務めたホテルでの仕事を個人的な都合で辞めることになりました。最後の手相講義の際にTさんから言われ、その時は全然ピンとこなかったのに忘れられない『4つのこと』があります。

1つ目『29才の時に、君は海外にいる』

最後の講義の際に、Tさんが初めて私の手相をみて下さり『29才の時に、君は海外に住んでいるよ。30才前には絶対海外にいる。』と仰いました。
でも、当時の私は、実家が大好きで、結婚しても実家に住みたいくらいでした。一人暮らし願望も全く無く、ましてや海外に住みたいなんて1ミリも考えていなかったため、心の中で『残念ながら、Tさんの手相占いはハズレ~』と思っていました。
しかしながら、その数年後、私は、なぜかバリ島で働くことになり、移住。しかも、移住したのが29才!バリ島に移住してから、しばらく経って、Tさんに言われたことを思い出し『Tさん、あの時、手相占いは全くハズレてると思ってごめんなさい!めちゃめちゃ当たってました!』と心の中で謝りました。それから、あんなに興味が無かった手相が急に気になり出す私。会社の同僚や友人の手相を見せてもらうと、Tさんに手相講義で教えてもらったことが自分の頭に残っていたらしく、手相がなんとなく読めました。手相が人によって全然違うことも面白くて『お遊びだから、信じないでね』と言いながら、その後も遊び半分でまわりの人の手相をみせてもらっていました。すると後々『まもなく引っ越しをする』『〇〇才の時に、結婚のチャンスがある』など、私が手相をみて言ったことが『当たってた!』という人がポツポツ出てきて…それがだんだん口コミで広がり、会う人会う人に『手相をみて欲しい~』と言われるようになりました。

2つ目『手相でお金を稼ごうとしてはいけない』

これを言われた当時は、全く手相に興味が無かったため『手相でお金を稼ぐなんて考えることは絶対に無い!』と完全スルー。しかし、前途したように、バリ島で私に手相をみてほしい…という人がどんどん増えていき、『らふぁさんの手相、よく当たるから、手相を仕事にすればいいんじゃない?!』『手相でお金取ったら?』などと言って下さる方もチラホラ。そんな時に思い出すのが、Tさんの『手相でお金を稼ごうとしてはいけない』という言葉。だから今でも『手相は趣味かお遊び』としてしか考えられない私です。もしも、Tさんに言われていなかったら、手相でお金を稼ごうと考える私がいただろうか…。なぜ、Tさんは『手相でお金を稼ごうとしてはいけない』と言ったのだろう?その真意を知りたいけれど、それはこの先もきっと謎のまま…(笑)

3つ目『絶対に本気で人を憎んだり、怒ったりしてはいけない』

Tさんがおっしゃるには、私が本気で誰かを憎んだり、怒ったりすると相手に大きなダメージを与える、相手に悪いことが起きる…だから、やってはいけない…とのこと。何だか怖い!これを言われた時は『私って怒りっぽく見えるのかしら…だから、すぐ怒ったりしないようにこんなことを仰るのかな?』と、自分が人から怒りっぽい人に見られているのかもしれないと少々落ち込んだことを覚えています。その後長らく、本気で人を憎んだり、怒ったりすることなく平和に暮らしていましたが…バリ島で働き始めた頃に、ブチ切れて怒ってしまう出来事が2回ありました。どちらもパワハラ的問題で1人はインドネシア人の上司、もう1人は日本人の上司に激怒してしまいました。1回目、インドネシア人の上司に激怒してしまった時は、翌日、その上司が会社を休みました。原因不明だけれど歩けなくなってしまった…とのこと。それを聞いて、一瞬、Tさんの言葉が頭をよぎりました。『相手に大きなダメージを与える、相手に悪いことが起きる…』。でも、まさか、まさか、ただの偶然…とそこまで気に留めませんでした。そして、2回目、日本人の上司に激怒してしまった時、その上司も翌日、会社を休んだのです。今度は、感染疾患によって入院…とのこと。感染疾患で原因もわかっているから私のせいではないと思いながらも、2回目なので、心のどこかで気になり、後味がとても悪く、それ以降、激怒しないように気を付けるようになりました。
その後、だいぶ時間が過ぎ、自分や人の波動やエネルギー状態を感じ取れるようになってからは、人を憎んだり、怒ったりすることが自分の魂のエネルギーを一番消耗することがわかったため、もったいないから憎んだり、怒ったりしたくない…という考えにシフトしています。Tさんに言われたブラックマジック風な理由で憎んだり、怒ったりしないよりも、自分のエネルギー消耗をしないために憎んだり、怒ったりしないほうが、私にはしっくりきています。Tさんも本当は『(自分自身のために)憎んだり、怒ったりしないほうがいい』ということを教えるために、わざと怖いことを言って下さったのかも…と今はポジティブに捉えています。ちなみに私が激怒してしまった2人の上司はまもなく元気になり、その後、とっても仲良くなりました。なので、腹を割って思いをぶつけることも大切だと思っていますが、くれぐれも激怒はしないで思いを伝えるように心がけています。

4つ目『君がエンパスだから』

どうしてTさんが職場の中で私だけに手相講義&テストをして下さっていたのか、ずっと気になっていたので、最後に質問してみました。それに対して、Tさんから返ってきた答えは『君がエンパスだから』。みなさん『エンパス』ってご存知ですか?その頃の私は『エンパス』という言葉を知らず、英語のエンパシー(共感)、つまり私が共感してくれそうだったからということを仰りたかったのかな…と適当に解釈。
その後、20年ほど経ってから、はじめて『エンパス』の本当の意味を知ることになりました。バリ島で働き始めてから10年ほど経った頃、私は部下が数名いるマネージャーになっていました。その部下の中にどうしてもみんなとぶつかってしまうインドネシア人のスタッフがいて、悩んでいた私。どうしたら彼がみんなとうまくいくのか?何か糸口はないかと、ネットで人間の性格や性質について色々調べていたところ、『エンパス』という言葉が目に入りました。

『エンパス』とは
生まれつき感情やエネルギー、些細な変化などに過敏な気質で、人一倍共感力が高い人のこと。共感力が強い体質なだけで病気ではないが、感覚を感じ取りすぎストレスを溜め込みやすい。
エネルギーに敏感な人々には『HSP(Highly Sensitive Person)』と呼ばれる5感が敏感なタイプもありますが、 『エンパス』は5感が敏感なことに加え、霊能力と言われる第6感を持った人のことを指します。

『エンパス』について、調べてみたところ、その特徴がピッタリ自分に当てはまっていました。今まで、自分がストレスを感じていたことは、敏感さからくるものがほとんど。周りの人も同じように感じていると思っていたことを、自分が敏感に感じすぎていただけなのだとわかったら、気にしなくていいんだと思えるようになり、とても気が楽になりました。こんなことなら、Tさんに言われた時に『エンパス』の意味を適当に解釈しないで、ちゃんと調べてみれば良かった…と後悔。世の中には、自分がエンパスだと気付いていない人がたくさんいると思います。そんなみなさんにも、自分がエンパスだと気付くチャンスが早く訪れますように!自分がエンパスだとわかったほうが、生きやすくなるはずなので。
とはいえ、エンパスの意味はわかったものの、『なぜ、Tさんに私がエンパスだとわかったのか?』『なぜ、エンパスだからって手相を伝授されたのか?』などなど、今でもわからないことだらけです。

Tさんに言われた『4つのこと』は、どれも数年~数十年後の私に様々な影響をもたらしたのでした.。そして、30年たった今でも『一体、Tさんは何者だったんだろう…』と、時々懐かしく思い出しています。




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