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ぼくのものがたり”ラーグマン”

ぼくは、朝起きると引きこもりのハリネズミだった。
おうちに引きこもって外に出たくない。
他の人とかかわりたくない。
ぼくは、ぼくの身にまとっている棘で守られているから、大丈夫。
一人でも怖くない。
そうだなぁ、何をしよう。
「そうだ、ぼくの物語を絵本にしよう!題名は ” ラーグマン ” 」

森の中に”ぼく”がいました。

あたりを見わたすと、いろいろな色をしたひとたちがいました。
でも、ぼくは、あなたたちに近づけません。
あなたたちも、近づいてきません。
ぼくは真っ黒で、あなたたちはカラフルでした。
時々ぼくと似た暗い色も見かけます。でも、ちゃんと色がついています。
「どうしてぼくは真っ黒なの?」

ある日、森に帰ると今まで見たことのない精霊がそこに居ました。
精霊は言います。
「きみ、真っ黒だね。きみの中を覗かせてくれない?きっと何かの助けになれるはずだよ。」
ぼくは答えます。
「どうせぼくは真っ黒さ。自由にしていいよ。」

精霊はぼくの中に入り込みました。そして語り掛けます。
「きみには一本の線があるじゃないか。これがあなたの原動力なんだね。わかった、それじゃぁこれからこれを使ってきみに面白いものを見せてあげるよ。」

精霊は一本の線をぐにゃぐにゃに振動させ、音を作りました。
ぼくは精霊に言いました。
「ぼくの中から音がする!こんなにたのしい音は初めて聞いた!これでもっと遊びたい!」
精霊はぼくに答えます。
「よかったね。じゃぁもうひとつ面白いものを見せてあげるよ。」

精霊は一本の線を変形させぼくの似顔絵を描きました。
ぼくは精霊に言いました。
「なんってへんてこな顔なんだ!!ほかのひとはぼくの事をこういうふうにみてるのかな?なんだかおもしろい!いろいろなひとが描いた絵をみてみたい!」

そして、ぼくは声を大にして叫びました。

気付けば精霊はぼくの中に完全に取り込まれていました。
精霊はぼくに語りかけます。
「あなたの事、よくわかったよ。これからずっとそばに居てあげる。」

ぼくは、ぼくのスキきな物を見つけました。
そして自分の色が七色に輝いていることに気が付きました。
そこに真っ黒なぼくは居ませんでした。

七色に輝くぼくは外に出ました。
真っ黒だったぼくに近づいてこなかったひとたちが近づいてきます。
ぼくもカラフルなあなたたちに近づくことが出来ます。

ぼくは、ぼくを見つけました。
あなたたちは、ぼくを見つけました。

おしまい。

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