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この春から AD としてラジオ業界に入る人たちへ伝えたいこと。

AD としてスタジオに入ったら、既にあなたは番組スタッフの一員です。あなたもスタジオの空気を作っている一人です。リスナーのため、出演者のため、番組のため、そして民放ならばこの環境を提供してくれたスポンサーのために、最善の「現場」を盛り上げるための努力を惜しまない姿勢が大切です。

AD は「アシスタント・ディレクター」です。あなたがするべきことは、ディレクターの仕事を補佐(アシスト)することです。そのために必要なのは「ディレクターの視点」です。もしも自分がディレクターだったら、今、どうすべきか?を常に考え、番組のテンポやスタジオのムードをディレクターと一緒に演出するのが仕事です。ディレクターの背中を見ながら、そこに座っている自分の姿をイメージしてください。そうすることで、自分のするべき仕事を見つけてください。

ディレクターに最も必要とされることのひとつが「決断すること」です。ディレクターは、そのスタジオの現場の責任者です。(そして、番組そのものの最終的な責任を持つのがプロデューサーです)
あなたが今後、ディレクターやプロデューサーを目指すのなら、常に「自分だったら、どう決断するか」を考えてください。

あなたが上達するためのいちばんの近道のひとつは「教えてもらう」ことです。わからないことはなんでもディレクターにきかなくてはいけません。「自分がディレクターだったら」という視点に立てば、必ずいくつもの疑問がでてきます。なぜその曲を選んだのか、なぜそのタイミングでキューを出したのか、なぜ編集であの部分をカットしたのか……そういう疑問がどんどん出てくるはずです。そこで教えてもらうことは「自分のアイデアとの答え合わせ」になります。たとえ自分と考え方がちがっても、その答えは大きなヒントになるはずです。

もうひとつ、大きな近道があります。それは「盗むこと」です。間違いのない円滑な番組を運行・進行するために、ふとしたきっかけを面白く演出するために、ディレクターは様々なノウハウを持っています。そのノウハウは、なかなか言葉で教えてもらうことはできません。ディレクターが台本やキューシートに何を書き込んでいるか、ミキサーさんや出演者とどんな会話をしているか、それはあなたが盗み見て、盗み聞きして、自分のものにしてください。

そして、スタジオでは、目の前の仕事にとにかく集中することが大切です。少し慣れてくると、複数の仕事を抱えている AD は、作業の合間に他のことをしようとしますが、それは10年早いです。そんなことをする暇があったら、今、このスタジオであなたができることを探してください。他のことを考えながら、他のことをしながら番組作りに携わるのは、リスナーに対して、出演者に対して失礼極まりないことです。

これらのことが最低限できて、初めてあなたは番組スタッフの一員です。ラジオ番組は、ほんの数人で作られています。4本足のテーブルの足がひとつでも折れたら、そのテーブルは傾き、倒れます。あなたがその「足」の一本であるということを忘れてはなりません。そしてさらに、その番組が放送され、リスナーの耳に届くまでには、たくさんの「人」と「お金」が動いています。あなたが背負っているものはとても大きいということを、絶対に忘れないようにしてください。

出演者に美味しいコーヒーを出すこと、CD を素早く検索してレコード室から持ってくること、リスナーからのメールをいち早くスタジオに入れること……「あなたの仕事を待っている人」がそこにいることを意識してスタジオに入れば、あなたはきっと、素晴らしいディレクターになれるはずです。

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