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奥信濃への道 第4走:騎士の名はモルト

イギリスにモチーフを持つ、それはそれは大層な種名を纏ったキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル (Cavalier King Charles Spaniel) というイングランド王のチャールズ1世・2世が溺愛したという犬種の愛犬と走った。
彼が来たのはもう4年も前の話である。
その名を「モルト」と名付け、彼を見かけた人に対し「名前の由来は?」と私のウィスキー好きの話を何回も繰り返さないといけないというネーミングルーツの罠に気付かず名付けてしまった彼、そう”モルト”だ。

そんな彼と走った。厳密に言うと付き合ってもらったと言うのが正解なのだろうか。
レストと移動で2日休んだ明けには脚がウズウズして走りたくなるものであるが名古屋の地はもはや安住の地ではない。
単身赴任の小生、嫁子供犬が居を構える名古屋に戻ろうものなら怒涛の歓迎と雑用が波のように押し寄せ、私の予定なぞプライオリティの最下層まで落ちるのも今となっては当たり前の日常の中の非日常。

ランニング≒散歩

この図式は古来より落合家に存在し、紛れもなく法令・条例・憲法であるため、逃げられぬ鉄の掟。
その昔、愛犬モルトがやってきた際にランニングのペーサーとして5min/kmを刻むモルトに感心した私は暫くランニング付き合ってもらっていたもので、今回は数年ぶりの同行と無っった。

しかし彼もすでに5歳、期が熟した成犬ではあるが最近の運動不足は否めないものか6min/kmが精一杯のようで、その姿に在りし日の自分を重ね、ひたすらに申し訳なく思ってしまった。
故に近所を4kmばかし周り早々にご自宅へ送り届けた次第である。

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かく言う私は物足りなさを感じる脚に鞭を入れるため、再び小雨の中を走り出す。目指すは近所最大の公園大高緑地である。
悪天候もあり空は分厚い雲に覆われ辺りが陰るのもいつもより早い。そんな暗闇になりかかるグレーな世界を足早に12km、最低限ノルマとしている10kmを超え満足して帰宅。

4kmで帰った彼は「いきなり走らすんじゃねぇ」と文句を言いたげにご飯を催促に来た。いやこれはいつも通りの要求かと思いながらも、私は5gだけフードの多く彼の前に差し出した。
そんな気遣いは自己満足であると知っているのに。

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