奥信濃への道 第8走:荒川アンダーザベーカリー
前日に飲んだ酒を引きずっているのか、頭が重くベットから中々起き上がる気が起きない。外は既に明るくカーテンの隙間から日が差している。ふと部屋の暖かさを感じ取り、春の陽気を想像する。
手探りでベット脇にある昨晩飲み残したペットボトルの水を手に取り、気持ちが少し鮮明になった事を自覚して大地に立つガンダムよろしく立ち上がる。
パンが食べたい。
ふと要求が頭をかすめた後に残るのは、欲している気持ちのみ。スマホのGoogleマップで贔屓にしている”ナカヤパン”にピンを打つ。場所は分かっている。そうじゃない、今知りたいのは距離だ。
画面に表示された距離は4.7km。「うん、行ける」と判断したら早い。
窓を全開、花粉は辛いが。手っ取り早く洗濯物を洗濯機に突っ込み、掃除機を大急ぎで掛ける。久々の東京での休日だ、やる事をやっつける事がプライオリティの最上位、他の話はそれが片付いてから。
陽気に誘われPatagoniaのキャプリーンクールの半袖に腕を通し、5インチのランパンをチョイス。もはやグリーンシーズンのセットアップだが、これは家を出て直ぐに正解と分かる。パンを買ってくるわけだから手ぶらとはいかない。Salomonのスキンプロ10を背負い家を出る。
うん、良い天気と気温だ、それだけで気分が良い。
永代通りの人混みを避けながら、気持ちの良いペースで走り続ける。これは買い物でありとトレーニングではない。耳からはPodcastの軽快なトークに意識を傾けながら荒川土手に出る頃には、すっかり脚も温まっている。
血がめぐり地面を蹴る感触を楽しんでいると、直接ナカヤパンに行くのが惜しくなってくる。少しだけ余分に水門まで北上し折り返す。
肝心の目的であったアンバタ(ハード系パンにあんことバターが挟まったパン)は売り切れだったが、その他の目を引くものを3点ほど見繕い店を出る。
背中のザックから聞こえるパンの揺れる音を楽しみながら、家で食べる際に淹れるコーヒーの豆を既に脳内で選んでいる。
良き週末、パンにあり。
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