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シャワーを浴びすぎたとき

 かなり小声で言いたいが、わたしには「外出ぎりぎりになってシャワーを浴びて遅刻する」という癖がある。遅刻は悪だ。許されない。わたし自身も遅刻していいとは思っていない。

 だからすぐに謝る。人として当然の態度だ。

 状況や相手との関係性にもよるが、たとえば、正直に「すみません、シャワーを浴びていました」と告げる。場合によっては「シャワーを浴びすぎました」と言うこともある。しかし、これらでは単純に収まりが悪い。要するに、「なんでこのタイミングでシャワーを?」と訊かれる可能性が格段に上がってしまうのだ。厳密にはちがうかもしれないが、やぶ蛇というやつだ。

 では、たとえば「気がついたらびしょびしょでした」はどうだろう。ホラー風味を足すことで近寄りにくさを出し、謝罪どころではない雰囲気に持ち込む。もしく「湯けむりで前が見えなくて」も温泉宿の風情が出ていいかもしれない。

 浴びるな。
 
(シャワーを浴びすぎたとき/words of apology)

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