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「ジェンダーギャップはインドより日本の方が下」って何の話?

はじめに

 文春オンライン様の報道によると、インドで凄惨な事件があったそうです。

”「若い女性の切断された首を持って歩いている人がいる」

 3月3日、インド北部ウッタルプラデシュ州の警察に耳を疑う通報が入った。コンクリートで申し訳程度に舗装された田舎道を裸足で、取り乱す様子もなく歩く容疑者の男。髪の毛をつかんで無造作に首を持っている。このモザイク入りの写真がSNSで拡散し、世界の主要メディアもこのセンセーショナルな事件を報じた。”

全文は下記ツイートより。

気になりましたのは3ページ目の最後の段落です。

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多くの方がジェンダーギャップ指数とは何かが既に知悉となった昨今、余りにも稚拙なまとめ方ではありませんか。

①インドで凄惨な事件があった(名誉殺人と呼ばれ、被害者は女性が多い)
②ジェンダーギャップ指数は名誉殺人などの犯罪の生むはあまり影響がないと言われています
③それでも日本が『遅れている』国であることに変わりはない

なるほど、こう話した大手紙国際部記者と名乗る方は豪胆な論法の使い手のようです。

本noteの目的

 従いまして、本noteでは当事件にジェンダーギャップ指数(以降GGI)は些かも関与せず、また日本が遅れている証左にもならない事、指摘した最後の段落は不要である旨を結論づけます。

1. GGIの構成要件

 まずはGGIの構成要件から確認です。GGIが名誉殺人などの犯罪の有無と無関係なのは言うまでもありません。どこにもそのようなメインインデックス・サブインデックスは存在しないのです。

それを確認もせず、あたかも日本に問題があるかのように指摘をするのはいかがなものでしょうか。

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仮にも大手紙国際部記者と名乗る方なら裏取りをして頂きたいものですし、”言われています”と、ボカして責任回避を狙う言い回しも卑怯です。

”ジェンダーギャップ指数は名誉殺人などの犯罪の生むはあまり影響がないと言われています。”

同じく、構成要件にないので名誉殺人が毎年1,000件発生しようが、日本で毎年1万人以上が自殺しようが、65歳以上の高齢者が窒息死で毎年3,000人以上亡くなっていようが、いずれもGGIのスコアや順位とは何の関係もありません。

”驚くべきことに世界経済フォーラムが2019年12月に公表した『ジェンダーギャップ指数』によると、名誉殺人が年間1000件発生しているとも言われるインドは153カ国中112位で、日本は121位なんです。”

2. 何が遅れているのか?

 そして最後に、大手紙国際部記者はこうまとめます。完全に支離滅裂で論理も構成もへったくれもありません。

”それでも日本が『遅れている』国であることに変わりはない”

①今日は晴れだ
②明日の雨は交通機関への影響はないとは言われていますが、GGIによるとインドは112位で日本は121位なんです
③それでも日本が『遅れている』国である事に変わりはない

はい、こういう状態です。ポカーンとしております。また百歩譲って、何がどう遅れているのか?その根拠は何か?が明示されていたならば話題の広げようもありますが、これではタダの誹謗中傷です。

3. 結論:最後の段落は不必要な煽りに過ぎません

 以上の論考から・・・いや論考と呼べる程の内容ではありませんね。こうした根拠のないジャパンディスカウントを試みる大手紙国際部記者やジャーナリストの皆様は様式美的に『日本は遅れている国』と結び、バイアスを掛けて煽ろうとしますから、今後も注意を払う必要があります。

本件は確かに痛ましい事件ではありますが、これを以ってインドのGGIを上げも下げもしませんし、日本に至っては全く無関係で比ぶべくもありません。遠因があると仰るならばその論証を文中ですれば良く、そうでないならばこの段落は不要です。

 以上になりますが、ジェンダーギャップ指数(GGI)って何だっけ?何でインドより日本は順位が低いの?今更聴くのは恥ずかしい・・・と言う方は、こっそりこちらをいかがでしょうか。

 不誠実・不公正なジャパンディスカウントやジャパンバッシングの為にGGIが誤用される事が少しでも減り、日本は女性軽視の国であるとの不当なバイアスが薄まる事を心より願っております。

出典

文春オンライン:「部屋に閉じ込めて、刃物で切断した」17歳の娘を斬首し、首を持ち歩いた父親の殺害動機《現地報道写真》
WEF:Global Gender Gap Report 2020 ( PDF )
ジェンダーギャップ指数レポートとの向き合い方

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