介護職は高齢者が大好きでなければ勤まらないのか!?

高齢者が大好きでなくとも勤まる理由

介護を生業とする以上は、対象となる相手に苦手な意識を持っていては仕事になりませんが、だからと言って大好きである必要ないです

理由①:要介護者は高齢者だけではない
「介護と言えば高齢者」という印象を受けますし、私自身が高齢者を対象とした介護現場しか経験がないため、高齢者介護について言及した内容のものですが、そもそも要介護者は高齢者だけではありません。
高齢者の終の棲家として知られている特別養護老人ホーム(以下、特養)であっても、要介護認定を受け入所要件を満たせば40代50代の人も入所できます。

また、介護という業種自体が高齢者介護だけではなく、障害者介護などもあるため高齢者に限られる話ではありません。
したがって、「介護職員に必要な資質として"高齢者"が大好きであること」ということは一概には言えないのです。
「高齢者」の部分を「要介護者」だとか「障害者」に変換してみると少々異様な感じもします。
つまり、「大好きでなければならない」というそもそもの部分がおかしいのです。
もっと言えば、仕事なのですから大好きでなくとも十分勤まります。
介護職員の資質として、そういう要件を口にする人は少々介護現場での経験の有無が疑わしいと感じてしまいます。

理由②:認知症介護と高齢者介護は別物
高齢者になれば認知症を発症する確率や頻度が高くなります。
だからと言って、「認知症介護=高齢者介護」ではありません。
例えば、「頭がしっかりした高齢者は大好きだけど認知症状があり危害を加えてくる高齢者は苦手だ」ということはあり得ます。
その場合、「認知症介護」と「高齢者介護」は全く別物として考えなければなりません。
ですから、「高齢者が大好きだから認知症で自分に危害を加えてきても大好きだと思える=介護職員の資質がある」というのは、おかしな理論であることが理解できるかと思います。
認知症介護と高齢者介護をごっちゃにした考え方で「介護職員は高齢者が大好きでなければ勤まらない」と言い切ってしまうのは違和感しか感じません。

理由③:高齢者を好きでなくても続けられるのがプロ
そもそも、仕事なのですから、その対象となる利用者に対して「大好き」だとか「特別な感情」を抱く必要はありません。
介護職員も人間ですから、好意や苦手意識も当然あるでしょうが、「高齢者を大好きであることが介護職員に必要な資質」だと言い切ってしまう人にはやはり首を傾げてしまいます。

例えば、病院などの医療機関で医師や看護師が、「患者が大好き」「病人が大好き」と思って仕事をしているでしょうか。
そうではなくて、職責や職務を全うし、患者や病人に最善を尽くしていくことが求められているはずです。
それが何故か介護職員になると「高齢者を大好きでなければ資質を欠いている」「苦手意識を持つことはプロ失格で高齢者を大好きでいなければならない」というような奥が浮くような台詞が出てきてしまうことは、違和感を通り越して異常です。
高齢者であろうと誰であろうと、目の前の利用者をケアしていき最善を尽くすのが本当のプロでしょう。
「高齢者を好きとか嫌いとか考えなければならない福祉こそ異常」です。
本当のプロは、好きとか嫌いとか関係なく、「良いことは良い」「ダメなことはダメ」と冷静に判断できる人材のことを指すのではないでしょうか。
介護現場は仲良しクラブの集まりではないのですから、「高齢者が大好きであるべき」などという戯言は不要なのです。

最後に

今回は、「介護職員は高齢者が大好きでなければ勤まらないのか」ということについて記事を書きました。
まとめとしては、「介護職員は高齢者を大好きでなくとも十分勤まる」ということになります。
実際に現場を知らない人や、認知症介護の経験が少ない人から「介護職員に対して」こういったセリフをよく耳にします。
介護職員は「高齢者が好きとか嫌いとかの表面上の基準で仕事をしているわけではない」のです。
「介護職員に必要な資質は高齢者が大好きであること」という思い違いをしている人のご参考になれば幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?