見出し画像

ジョージア(グルジア)が抱える民族問題

南オセチアがロシアの一部になる?

最近こんなニュースが飛び込んできたのだ。ウクライナ情勢が逼迫するなかカフカースでも民族紛争に新たな動きがあったとのことなのだ。

ジョージアからの独立を宣言している親ロシア派地域の南オセチアは3月30日、ロシア編入の是非を問う住民投票の実施を表明した。同地域が4月10日に実施する「大統領選挙」の直後に住民投票を行うとしている。これに対しジョージア政府は翌31日、「容認できない」と非難した。https://www.afpbb.com/articles/-/3398160?cx_amp=all&act=all

これについてもジョージアの一体性の観点から容認できるものではないのだが、どうも昨今の情勢からかウクライナ侵略ならびにドンバスと並べる人がいるので、そことの違いを解説するのだ。


オセット人は南北に分断されている

イラン系民族のオセット人はコーカサス地方のオセチアに住んでいる民族なのだ。ここはソ連時代北はロシア・ソビエト内の北オセチア自治社会主義共和国に、南はグルジア・ソビエト内の南オセチア自治州として管理されていたのだ。
そもそもこの時点で分割統治しなければ火種はできなかったのだが、ソ連は各共和国のバランスをとるために土地を何人のものにするか頭を悩ませたのだ。それにどうせ同じソ連だし、という気持ちもあったと思うのだ。まさか当時の人はソ連がバラバラに崩壊するなんて思いもしないだろうから…

南オセチア自治州を廃止し軍事的威圧をかけたジョージア政府

ソ連末期、ジョージア人は民族主義を高ぶらせモスクワに牙を剥くのだが、少数民族のオセット人に対し威圧的な行動を政治家がとるなど民族差別が続いたのだ。これに対する不満から1992年、南オセチアは独立を宣言したのだ。長く熾烈な独立戦争の後、停戦により南オセチアは事実上独立した地域になったのだ。
その後もいくつか衝突があり、2008年には大きめの紛争が起きたのだ。今でもジョージアはこの衝突はロシア側から起こされたと主張しているのだが、中立メディアから見てもその主張が完全に正しいかは疑問が残るとのこと。その結果むしろロシア他数ヵ国が南オセチアを国家承認したのだ。

ロシア人が入植して住民投票をジャックしたわけではない

よくクリミア半島の住民投票の不正性を訴える人が「元々人がいた場所にロシア人がたくさん住み着いて、勝手に住民投票やって併合完了できるロシアいつものお手軽侵略だ」と批判する人がいるのだ。そもそもクリミア問題での認識が彼らと違うのだが、今回の場合南オセチアに民族ロシア人はあまりいないということを覚えておいてほしいのだ。

ソ連、そして後継国のロシアの中にある「共和国」というのはスラブ系ロシア人以外の民族が一定の数いる地域に強めの自治権を与えるという制度なのだ。北オセチアも「ロシアの共和国」の一つなのだ。あくまで北オセチアも南オセチアもオセット人の民意でロシア連邦に加盟している、ジョージアから独立したいと願っている。このことを忘れては困るのだ。
モスクワの傀儡だと切り捨てるのは簡単なのだ。それでも最初にオセット人を弾圧したのはジョージア人なのだ。そこですがったのが近くにいたロシアだったというだけなのだ。

ただ主権侵害になりうるのは変わらない

それでも、これはあらゆる分離独立運動がそうなのだが今主権を持つ国の領土がなくなる、あるいは同意なく別の国のものになるというのは基本的に領土の一体性原則に違反しているのだ。
ましてジョージアにしてみれば敵国に併合されると考えたら悔しいだろうと思うのだ。

あのシュクメルリを公認した駐日ジョージア大使は「アブハズの人と南オセチアの人を暖かく迎える準備はできてる」といっていたのだ。
もう少し早く聞きたかったと思うのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?