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左派日本人の私からみた#barbenheimer騒動

お久しぶりです。今日は真面目な話なので冒頭から語尾無しで失礼します。
今年も「忘れられない夏」がやってきました。全ての御霊の冥福を祈り、世界でもうこれ以上核兵器・戦争の被害者が出ないよう私達は努めます。
では今回映画『バービー』の公式アカウントがなにをしでかしたか。それから広まった論争で何が見えてきたか左派の私の視点から書いていきます。ですので見解を異にする方もいるかもしれません。あくまで参考程度にみてください。
For foreigners. This article does not represent the views of the Japanese as a whole. I would appreciate it if you could take a look at it as a reference.


そもそも#barbenheimerとは

元々このミームが誕生した経緯にはアメリカで公開された日が同じ映画版「バービー」と「オッペンハイマー」をハシゴで見ようというムーブメントがありました。
楽しく明るいバービーと暗いテーマを扱うオッペンハイマーの温度差を楽しもうという動きです。
これそのものは映画界を盛り上げるものとて私はありだと思います。また、バービーを見るのを躊躇っていた男性がこのミームが流行ってから劇場に足を運べるようになったこともよい傾向です。フェミニズム映画という前評判通り、有害な男性らしさを淘汰する動きは私は歓迎したいです。

一部の悪趣味なファンアートに公式が好意的反応、からの炎上

しかし一部ファンは「キノコ雲を髪型のようにコラージュする」「爆風を背景に笑顔のバービー役の女優がオッペンハイマー博士役の俳優に担がれている」など原爆による被害を学んできた我々からは到底容認できないコラで遊び始めました。
ただこれだけならまだ許せたという人は多いと思います。というのも不謹慎ネタで遊ぶのはある種万国共通であり、いくら訴えても撲滅することは難しいでしょう。無論日本でもその類のネタはあります。そしてどんなに下劣な作品でも表現の自由があり、それを妨げることは危険な兆候、それこそ原爆の悲劇を生み出した戦争する国家への道まっしぐらです。
しかしバービー公式はその不謹慎極まりないネタに「忘れられない夏になりそう」と好意的なリプを返したのです。これは映画公式が「原爆を茶化すのを容認している」というメッセージに他なりません。そして私たちは毎年夏に黙祷します。忘れられないです、忘れてはなりません。このような無神経な行為に怒る人がたくさんでてきたのです。

人を心底馬鹿にしたワーナー・ブラザース米本社の対応

これを受けワーナー・ブラザース日本合同会社は声明を発表。米国の本社に見解を糺すと約束しました。もちろん日本支社の対応は満点だったとは言い難いですが、それでもできる限り被爆者の痛みに寄り添う人の声を聞こうとする姿勢は感じ取ることができました。

映画『バービー』のアメリカ本社の公式アカウントの配慮に欠けた反応は、極めて遺憾なものと考えており、この事態を重く受け止め、アメリカ本社に然るべき対応を求めています。
https://twitter.com/BarbieMovie_jp?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1685944607539159040%7Ctwgr%5E8b214992e9aebcc6ca591ed60c193fa020a3c9a4%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fjp.ign.com%2Fbarbie-1%2F69511%2Fnews%2Fus

そして米本社から出された謝罪文はこちらです。なおこの文章は報道機関向けのものであり、公式HPの広報及び火元のSNSでは何も言及していないことを踏まえてください。

ワーナー・ブラザースはSNSで配慮における配慮に欠けた投稿を遺憾に思う。

https://www.nikkansports.com/m/general/news/202308020000190_m.html?mode=all&utm_source=AMPbutton&utm_medium=referral

はい、数々のやらかし謝罪文の中でもダントツで酷いですね。もちろん日米の不祥事対応への考え方の違いもあると思いますが、日本支社からの諫言を以てしてもこれしか引き出せなかったかと怒りを共有するものとして悔しいです。
こんな短くコソコソとした謝罪が受け入れられるはずもなく、今に至るまで日本ユーザーを中心に #Nobarbenheimer というハッシュタグで抗議が続けられています。
現在日本の広島・長崎の若者有志がワーナー本社に対し再発防止を求める署名を行っているので、もし賛同してくださる方はぜひしてってください。


「これはネタだ」と怒りや悲しみに向き合ってもらえなかった。

そんな中#Nobarbenheimerを批判、あるいは冷笑する者も海外ユーザーを中心に出てきました。私は怒りや政治的立場を飲み込んで彼らと対話しましたが、どれも徒労におわりました。
その言い分としては「アメリカには悲劇も含めて茶化してしまえという文化がある」「これはネタだからそんなに怒るな」みたいなものである。
ネタ無罪を振りかざして下品な嘲笑を浴びせる人間はどこの国にもいるのかと大変気分を害した。こちらとしては「その笑いに公式が乗っかるのは違うんじゃないか」という風に返しましたがユーモアをわかってないと返されるばかり。先程も記載しましたが、日本にも不謹慎ネタを楽しむミームは存在します。しかしそれは概して「アングラもの」と呼ばれ公の場に出していいものではないと暗黙の了解があります。不謹慎なネタをみて傷つく人もいるという想像力が欠落してると言わざるを得ません。
それは自国被害のものですらそうで、一部の過激な日本ユーザーは報復として9.11テロで燃え盛るワールドトレードセンターとバービーのコラ画像を作成。「お前達がやってることはこういうことだ。恥を知れ!」と英文で投稿しました。私は憎しみの連鎖になることを危惧しましたが、それは悪い意味で覆されました。彼らはそのコラを面白がったのです。それどころか「もっとこうしたほうが面白い」とかそのコラ画像を添削しはじめるなど目も当てられないことになりました。結局私の観測範囲で9.11コラに心を痛めたのは「自分も瓦礫を拾って救助の手伝いをした」と語った一人だけでした。自分の身に降りかからなければ面白がる、どうしても理解できません。

日本軍の戦争犯罪を以て原爆を正当化するツイートが相次いだ

こうした動きの中海外ユーザーからは「日本人は過去の戦争犯罪を以てしてもまだ被害者ぶるのか」と批判を投げかけた人もいました。どうも海外ユーザーからはネトウヨによるバックラッシュだと思われてるらしいです。
この騒動に腹を立てた人には右派の人も確かにいます。ですが日本の反核運動は左派が牽引したという事実があまり知られていないようです。
この批判に真摯に回答したのも肌感では左派あるいは中立の人が多かったです。
日本軍による戦争犯罪は知っている。それが原爆を茶化していい理由にはならない。と真摯に訴え続けたつもりでしたが、残念ながらそのままブロックされてしまった人もいます。

はだしのゲンは日本軍の戦争犯罪にも言及している。だからこそ右翼には目の敵にされている。

歩み寄っても受け入れられない虚しさ


更に私は相手の政治思想を可能な限り尊重しようと試みました。
アメリカでは「原爆投下が日本の降伏を早め、多くの米兵はもちろん日本人の命も救った」というイデオロギーが保守層を中心に支配的です。被爆者の気持ちを考えたら受け入れることは難しい思想です。ですが私は彼らと話す時「その問いかけについて争うつもりはない」と宣言しました。いくら自軍の行動が正しかったと考えたとしても、その結果多くの人が亡くなった。その魂に失礼なことをしてはいけないという道徳は共有できると信じたからです。しかしダメでした。彼らはひたすら日本人の自業自得だと繰り返し、もう80年たったんだ、未来を見ろと言い募ってきたのです。
こういう意見が支配的な国が世界一の軍事力を持っていることは、人類の未来の暗さを表していると言わざるを得ません。

日本にも戦争を美化する勢力はいます。しかしモラルとして人の死を茶化すことはいけないと共有できているのではないでしょうか?
例えば右翼は日露戦争の日本海海戦を誇りとしています。当事最強と言われたバルティック艦隊に勝ち、アジアの底力を西洋に見せつけたと自慢するのです。この戦争の結果朝鮮半島への支配を決定的にし、植民地化したことを考えるとこのような考え方は私は嫌いです。そうした右寄りの思想が反映された映画ではほぼ必ずといっていいほど日本側の戦死者と共に日本海に沈んだロシア兵を悼む日本兵を美徳として描かれてます。敵味方問わず死は悼むべき、こうした考えは人間の基本的な部分だと考えていた私は井の中の蛙でした。

女性の声を塞ぐワーナー本社

最初に「映画版バービーはフェミニズム的に評価されている」と記しましたが、ワーナー本社がそれを受け止められてるとは言えないことをフェミイさんとして批判しておきたいと思います。
日本語吹き替えを担当した高畑充希さんはインスタグラムでこう語っています。

舞台挨拶の件、ご心配おかけしていてすみません。 今回のニュースを耳にした時、怒り、というよりは正直、不甲斐なさが先に押し寄せてきました
(中略)
なので正直、今日登壇を辞退することも考えたのですが、来日してくれたお2人の想い、そして私自身、このバービーという作品自体の素晴らしさはぜひ知っていただきたいな、という気持ちを消せませんでした。なので、複雑な感情はありますが、今日一日、真摯につとめさせていただきたいと思います。

https://nordot.app/1059413052676801203?c=516798125649773665

彼女は日本公開を受けての挨拶では語れず、snsに想いを吐露するしかありませんでした。更にこの映画を担当したグレタ・ガーウィック監督はこう語ってます

ワーナー・ブラザースが謝罪したことは、私にとって非常に重要なことです。発表がなされたことは、とても重要なことだと考えています。
https://theriver.jp/barbie-greta-interview/

…何が言いたいのかわからない。これは彼女の発言を妨げてる者がいると見ていいと思います。フェミニズムを謳いながら女性らの声を塞ぐワーナー社は恥を知るべきです。

「日本人差別」というアプローチは使いたくない

さてこの騒動について「ポリコレが重視されているはずなのにアジアンには無頓着だ」「日本人相手なら何をしてもいいと思ってる」と憤る声をありました。気持ちはわかります。
ただそのようなアプローチをすると「乱暴狼藉の限りを尽くした日本人には当然の報いだ」と意見を硬直化させるアメリカの人もいると思います。だから私は「核兵器は人道的に許されない絶対悪であり、人類の敵である」と訴え続けなければならないと思います。

日本の植民地支配を受けていた朝鮮からも多くの人が広島に来ていました。彼らは故郷に帰ることも叶わずなくなりました。
広島にいた米軍捕虜12人も被爆死しました。彼らの身元を探り本国の遺族に知らせたのも日本人被爆者です。

今回の騒動を当て擦りにつかうあらゆる勢力を深く軽蔑する

今回の件はいわゆる一部の表自系により「ポリコレの本性はこんなもんだ」と嘲笑するために使われました。また左派も左派で「この件に怒るくせに核兵器禁止条約に参加しない岸田政権には怒らないのか」といい始めました。
今回の騒動はイデオロギー以前に人としてのモラルを問う、これを忘れたくありません。

映画「バービー」を見る人を攻撃してはいけない

最後に今回の騒動に怒り悲しむすべての人に伝えたいことがあります。日本でバービーを見に行く人を攻撃しないでください
私個人としてはワーナー社が誠実な対応をするまでバービーはキャンセルします。ですが日本人ならかくあるべき、と決めつけ強制するのはまさに戦争を引き起こした大日本帝国の姿そのままです。見ないで、と薦めるのはいいですが見た人を罵るなんて真似はしないでください。

こうなってはいけません

バービーは元々人形なので青い目の人形も連想されます。非国民と罵られながらも人形に罪はないと考えた人が守った人形は、今平和を伝える証人となってます。

今生存してる女性被爆者は当時「少女」だった。少女の夢と希望を背負うバービーは今一度その精神に立ち返ってほしいです。

海外メディアを中心に言及されている事実を基にこのnoteを終わります。よければ感想など書いてってください。
なおフェミ的に思うことはこちらにも書いたのでみてってください

長崎原爆が投下された2日後、映画バービーは日本で公開される。


ノーモアヒロシマ・ノーモアナガサキ


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