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【仮面ライダー】8年前の過去作品


私は生まれてしまった
これで死ぬまで生きていなければならない
死は恐怖である
しかし生まれた以上
必ずやってくる
生まれてから死ぬまでの期間が長い人
短い人
無駄に過ごした人
充実した人
苦しんだ人
苦しめた人
楽しんだ人
楽しまされた人

どういう訳で私は生まれたのかい
そんなものには理由は無い
ただ漠然と生まれただけだ
価値のある人間か否かは
人々が決めてくれる
そしてその人々も同様である

「なぁなぁ
お前って大きゅうなったら何になるん?」

「俺かぁ
俺は仮面ライダーや」

「お前はアホか?
そんなもんなれへんに決まってるやん」

「なんでやねん
テレビでやってるやん
誰かがやってるから
あれは動いとんるやろ」

「せやけど
あれは話やから
ホンマもんのヒーローちゃうで」

「俺は別にホンマもんはええねん
仮面ライダーになりたいだけやねん」

それから十数年経った
俺は仮面ライダーになった
本当になったのだ
スーパーマーケットの駐車場の特設会場で
それでも良いのだ
仮面ライダーV3が良かったのだが
俺がやったのは
仮面ライダーブラックだ
とにかく念願だった仮面ライダーになれたのだから
それはそれで良いじゃないか
それはそれで

仮面ライダーはあくまでも
アルバイトだ
しかし
なかなかこの仮面ライダー役にはなれない
大学に入ってからずっと雑魚の役ばかりだった
それでも諦めずにバイトを続けた
三年生の時に念願叶って仮面ライダーになれた
最高だぜ
物凄く嬉しい
俺はもうこれで死んでも構わない
それくらいの気持ちである
仮面ライダーである俺は
仮面ライダーになりたかったので
もちろんバイクの免許も持っている
バイクもある
ヤマハのYZRだ
ホンダよりカワサキよりスズキより
ヤマハだったんだ
最高の乗り心地さ

秋になり
ツーリングにはもってこいの季節になった
別に走り屋では無いが
峠を走らすととにかく気持ちが良い
山頂まで登ると
とても景色がキレイだ
市街地がすっかり見渡せる

帰りは若干
ゆっくりと峠を下った
峠が終わり市街の道に入り
ちょうど目の前の信号が
青に変わった瞬間
その出来事は起こった

俺は仮面ライダーな俺は
交差点で
信号無視をしたダンプカーに
真横から追突されて即死した

生まれたからには
必ず死ぬ
死なないと
この世の中には人で溢れてしまう
しかし出来れば
事故では無く
身体的な寿命で
この世を去りたかった
大学を卒業し
ちゃんと社会人になって
恋して
結婚して
子供を作って
家族になり
子供と一緒に
仮面ライダーを観たかった

なぜ生まれてしまったのか
そして
なぜ死ぬのか

ほな!な

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