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政治家レイシズムデータベース2022年2月

 反レイシズム情報センター(ARIC)です。
 ARICでは、政治家はじめ公人によるヘイトスピーチやレイシズムの記録を行い、データベース化しています。
https://antiracism-info.com/database_home
 このnoteでの「政治家レイシズムデータベース」では、毎月追加したデータの中から、特に深刻なケースをこのnote記事上でピックアップしていきます。

 今月も追加した差別事例から一部を紹介したいと思います。

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 2月の記録においては、前回に引き続き佐渡金山の世界遺産登録に関する歴史否定に加え、ポプラ社の百科事典の記述に対する極右議員の介入が特徴的な問題であったといえる。
 今回は特に、ポプラ社の百科事典に関する歴史否定の問題について取り上げる。佐渡金山に関する歴史否定については、過去の記事で言及しているので、そちらを参照されたい。
「政治家レイシズムデータベース2022年1月」(note)
https://note.com/racism_database/n/n22bd8e06382e


ポプラ社の百科事典「ポプラディア」に対するバッシング

 2月の初頭、ポプラ社が出している百科事典「ポプラディア」上で、「慰安婦」の項目について「強制連行」という言葉が用いられていたことで、極右によるバッシングが起きた。これに対して当初から、NHK党の区議会議員が出版社に対してメールでの問い合わせを行うなど、ポプラ社に対する直接的な攻撃が起きていることが確認できる。

NHK党中野区議会議員・竹村あきひろ

これは酷い!
出版社に抗議したいと思います。
#慰安婦強制連行は朝日新聞の捏造です
#慰安婦 
#歴史捏造
Twitter、2022/2/4
追加情報 
電話したところ、ポプラ社は電話受付を休止しているとの事。メールにてお問い合せして欲しい旨のメッセージが。
早速メールします! 令和4年2月4日14:38
#ポプラ社
#慰安婦強制連行は朝日新聞の捏造です
#強制
Twitter、2022/2/4

 すでにこうした攻撃が行われていた中、さらに火付け役になったのが自民党参議院議員の山田宏であると考えられる。彼は去年にも駿台予備校の日本史テキストにおける南京大虐殺、竹島に関する記述に対しバッシングをTwitter上で展開していたのだが、今回も同じことを行っている。

自民党参議院議員・山田宏

〔「こちらの慰安婦記述の取り消し要請もお願いします。子供達に嘘を背負わせたくありません。現在出ているこの書籍をポプラ社には全量自主回収させて頂きたいです。」というツイートを引用しての投稿。〕
ありがとうございます。
早速確認しました。酷い「百科事典」ですね。
対応策を検討します。
Twitter、2022/2/7

 上記の政治家たちは、「慰安婦」の強制連行がなかったということを一貫して主張しているわけだが、その否定の論拠は、「吉田証言」(さらには朝日新聞)の誤りでしかない。多くの証言が出ているにもかかわらず、全てを吉田証言の誤りに還元して強制連行はなかったと断ずるのは無理がある。
 「慰安婦」制度はそもそも人身売買制度であり、甘言・詐欺などを用いて動員することを含めて「強制」の問題として捉えられているのだ。

 歴史否定の内容(といってもほとんど論拠もなくバッシングしているだけだが)よりもむしろ問題なのは、昨年の駿台のテキストに対するバッシングと同様、極右政治家が一般人による通報の内容を受け、その通報の対象に圧力をかけるというメカニズムが確立されつつあるということだ。ここにおいて、政治家が一般人による差別や歴史否定を「正当な」ものとしてお墨付きを与えていることは明白であり、それを通じて出版社などに対する攻撃が煽動されるのである。


終わりに
 今回の歴史否定の事例に対しては、一般の出版社の記述に対する攻撃であったことから、「表現の自由」に反するとして批判も多くなされていた。しかしながら、「表現の自由」をもちだすのでは、この問題の核心を捉えることができない。例えば山田宏が一般による投稿を正当化し、拡散する役割を果たしているように、歴史否定と差別煽動の結びつきを問題化する必要がある。

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*新聞・雑誌記事、動画、書籍等でレイシズムの疑いがある公人による発言を見かけた場合は、ARICのHPから通報フォームにてご連絡ください。Twitterで「#政治家レイシズム」のハッシュタグをつけてリツイートしてくださっても結構です。


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