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たった3つ:日本の競馬中継が劇的に改善する方法

<まとめ>

・日本の競馬中継でのレース映像が海外に比べてとても不満なので、改善策を考えてみました

・日本、ドバイ、イギリス、フランスのレース映像で具体例を示しました

・最後に、普段の中継からやってほしい3つの工夫を挙げました

きっかけ

twitterで野球中継のカメラアングルの話から、競馬のことを考えてみました。

日本の競馬中継って、いつも同じ構図じゃないですか?

特に気になるのがこの2つ。
・不必要に寄っている構図
馬群を先頭から映して1頭1頭名前を言う間に、勝負所の撮影を逃すことしょっちゅう。
・謎の人気馬贔屓
勝つかどうかも分からないのに、1番人気だからという安易な理由で、その馬中心に実況して映像もそこに寄る。

しかも、昔から構図が変わらず、進歩してない気がします(むしろ後者でひどくなった?)。

日本ダービーで見る、意図不明の中継

例えば、私が現地観戦した今年の日本ダービー。

0:12 スタート時の謎のアングル。ここからの映像で誰が得します?出遅れも分からないし、次の画面に切り替わるのも遅いし。

もしかして、「ダービーロゴの入ったゲート」を映したかった撮影者の自己満?

0:21 スタート直後の馬群形成で謎の「寄り」、からの前から後方への流し。

視聴者が注目してる馬はそれぞれで、カメラが切れた後に重要な局面を迎えてるのかもしれません。こんなに寄って得するのは、目が悪い人だけじゃないでしょうか。

0:29 1コーナー正面からの映像。これは素晴らしいです!

JRAはパトロール映像を公開してますが、それと同じく各馬の内外の位置取りがよく分かります。個人的にはもっと多用してほしいアングル。

0:47 また寄っちゃった。そして、お決まりの2分割&前から後ろへの流し。カメラが寄るメリットを必死で考えたのですが、まさかのアナウンサーのための映像提供でしょうか?

1:23 内馬場を走る車からの映像。後述しますが、海外でもこの手法は多用されてます。

ただ、ダートコースを隔てており遠く、カメラの位置も高さがないのでラチが邪魔。もっと工夫すべし。てか、ダートコース走ればよくないですか?

1:39 3-4コーナーという一番の勝負所なのに「寄り」。したがって、注目ポイント逃しまくり。ほんと誰得の映像なのか疑問ばかりです。

1:58 一旦、馬群全体が見えたと思ったらまた「寄り」。

いつも思うのですが、この4コーナー映像で何が伝わります?注目馬なんて一瞬で画面から消えちゃいますよね?

2:25 先頭を争う集団への「寄り」。結果的に勝ったワグネリアン中心の画ですが、外から飛んできた馬が勝つこともあるわけで。必要性を疑います。

ということで、このダービー中継を反面教師に、海外の競馬中継はどんどん進化してるよという話をします。

競馬の魅力を映像で伝える5つの工夫

まず、海外の競馬中継で見られる特徴で、これはいいなと思うものを5つ紹介します。

・ゲート内騎手カメラ
・上空(あるいはクレーン)からの撮影
・車載カメラ
・ラチギリギリカメラ
・風景を抑えた構図

①ゲート内騎手カメラ
例えば、去年ヴィヴロスが勝ったドバイターフ。

0:02など 数回にわたり、ゲート内の騎手に向けたカメラの映像になります。ゲート入りしてからスタートするまでの騎手の表情や仕草は、見ているこちらもドキドキします。

私が働いてた厩舎の調教師も元騎手でしたが、人によって集中するための方法はさまざまだと言っていました。

ひたすら独り言をつぶやく人、馬と会話する人、周りの騎手と談笑する人など、勝負が始まる数秒前の表情を映し出すこのアングルは最高です。

②上空(あるいはクレーン)からの撮影
今年のグランドナショナルです。

スタートまでの49秒間が圧巻!すごい高いところからのアングルで、馬群全体を映しています。

0:59以降も、連続した障害に挑む20数頭の群れが映り、すごくワクワクします。

4:11からのコースを横断するシーン。これ、野生動物の群れを追うヘリからの映像みたいじゃないですか?時速50キロくらいの独立した意思を持つ物体が、これだけ密集して移動するシーンは大迫力だと思います。

これらの映像はおそらくドローンじゃないかな、と思ってます。

日本ダービーの日もドローン飛んでたのに、肝心のレース中継で使われてなくがっかりでした。

③車載カメラ
ヴィクトワールピサが勝った2011年のドバイワールドカップ。

0:37から始まる向こう正面の映像は、4WDに積んだカメラで撮られています。(1:30あたりで車が見切れます)

このレースが行われるメイダン競馬場では、コースの内ラチ沿いに車が走れる道を用意しています。そのため、前述日本ダービーのような遠巻きではない、至近距離で迫力のある映像が撮れるんです。

最近はただ車の荷台にカメラを載せるのではなく、クレーン車を走らせるような光景もありますよ。

④ラチギリギリカメラ
昨年の凱旋門賞。

1:48からの映像を見てください!ラチギリギリに設けられたカメラの前を、馬たちが走り去ります。

このシーンで一番インパクトがあるのは、視覚ではなくその足音。

競馬を生で観戦して一番感じるのは、その足音!まさに「ドドドドドド」という感じの地響きは、これまで画面越しだと感じにくかったのですが、この撮影方法で上手く取り込んでいます。

これ、風の音じゃなくて足音ですからね!実際は、ぜひ競馬場に足を運んで感じてください!!

⑤風景を抑えた構図

上記の凱旋門賞の映像。

1:25からコースの後ろに美しい建造物が姿を現します。

昨年のレースはシャンティイ競馬場開催で、これは馬の博物館だそうです。行きたい!

日本のレースでも、東京競馬場の大ケヤキとか京都競馬場の池とか大レースでの10万人超の観客とか、そういった風景とセットで映るような構図の工夫を毎週考えてほしいです。何年も前例踏襲をしていては、世界に取り残されてしまいます。

今すぐやろう!日本の競馬中継の改善

以上をふまえて、日本の競馬中継もこうしたらいいんじゃないかな、と思う点を挙げます。たった3つです。

その1:寄る癖を直し、馬群は「全体」を映す

他の国の映像でも、馬群は全体を映しています。ペースが速く、縦長になりがちなアメリカでも同じ。入りきらない場合は先頭集団のみにフォーカスしてます。

その2:躍動感!馬群との並走に工夫を

日本でも車載カメラで撮影はしてますが遠くて低い最悪の仕上がりです。そこで、(1)芝のレースではダートコースを走る、(2)JRAにカメラ車専用レーンを作ってもらう、(3)クレーンなどを使いカメラの高度を上げる、(4)ドローンにする、などをぜひ検討してほしいです。

その3:パトロール映像との共有

JRAは走行妨害などをチェックするため、パトロールタワー上から馬群を撮影しています。この映像は全体を捉え、直線では正面から横方向の広がりが分かるものです。

このパトロール映像は、このままでレースの迫力が伝わります。関係者は魅力に気づいていないのかもしれませんが、レース全体を俯瞰できて、各馬の位置関係が明確な映像がすでにあります。

映像の共有が無理なら、別カメラを直線の出口(1角や3角)に置いて、高角度で馬群を正面から捉える映像を撮影してください。まじでお願いします!

競馬中継関係者のみなさまへ

以上が通常の中継でやるべき改善策です。

これに加えて、G1などの注目度の高いレースでは、発走前のゲート内での騎手の表情を捉えたり、馬の足音を集音したり、向正面の馬群を外ラチ側から満員のスタンドを背景に映したりして、競馬の魅力を増すような工夫をしてほしいです。

競馬中継関係者の方、このnoteをご覧になっていたら、ぜひご検討ください。よろしくお願いいたします!



いただいたサポートを励みに、これからも世界各地の競馬場に足を運びたいと思います!