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第9回福島牝馬S(2012年) [競馬ヒストリー研究(41)]

2011年3月に発生した東日本大震災による被害で同年春の福島競馬は開催中止となり、開催の目玉レースである福島牝馬Sは新潟競馬場へ移設された。翌2012年4月、丸1年に及んだ開催の休止を経て福島競馬は再開。「福島復興祈念競馬」として開催され、その初日にはセレモニーも実施されるなど、競馬に携わる人々にとっての復興へと歩む道標となった。

そして、またしても地震の影響で10年前と同じく春の開催が中止となり、新潟で代替開催となった昨年2021年の福島牝馬S。今年も3月に発生した地震の影響で無観客競馬にはなってしまったものの、あの時と同じく春の福島に蹄音が戻ってきた。

 

1年4か月ぶりの開催となった2012年の第1回福島競馬。5日目の4月21日にはこの開催唯一の重賞であるGIIIの福島牝馬Sが施行された。再開後初の重賞ということで注目を集めたが、それ以上に話題となったのが2006年の七夕賞当日以来約6年ぶりとなった武豊騎手の福島参戦。第1レースの前には同騎手ら6名の騎手が参加して競馬場内で植樹を行い、復興を祈念した。

その武豊が騎乗するのが2番人気のアカンサス。3歳時の前年にオークストライアルのスイートピーSを勝ち、秋は秋華賞で4着。年が明けて2走前に準OPを勝利し、重賞初制覇を狙って当レースへ駒を進めてきた。武にとってはテン乗りの関東馬であり、まさに福島競馬を盛り上げるためのコンビ結成であったことが伺える。

1番人気に推されたのはオールザットジャズ。前年の秋に500万下を勝ったばかりの身でGIのエリザベス女王杯に出走するなど期待の高かった4歳馬で、OP入りして改めての重賞挑戦となった前走の中山牝馬Sを2着から臨んでいた。

他にも、コスモネモシンやマイネイサベル、アニメイトバイオといった重賞ウィナーが顔を揃え、6番人気までが単勝オッズ10倍を切る混戦模様を呈していた。

 

トゥニーポート、クリアンサスの2頭が激しく先行争いを繰り広げ、小回りの福島らしいハイペースで進んでいく。藤岡佑介が騎乗するオールザットジャズは内の6番手で、縦長になった隊列の真ん中あたりに位置した。武豊のアカンサスは後方3番手から進む。

3-4コーナーにかかると馬群が凝縮し、前の2頭が飲み込まれていく。オールザットジャズは好位集団から先頭に入れ替わった2頭を見ながらその外へ出していき、アカンサスもその直後まで進出して直線を向いた。

残り200m余でマイネイサベルを交わしたオールザットジャズが先頭に立ち、外からはアカンサス、アスカトップレディ、コスモネモシンの3頭が並んで差し脚を伸ばす。しかし、馬場の3分どころで完全に抜け出したオールザットジャズがそのまま押し切り1着。ゴール直前で切れたコスモネモシンが3頭の争いを制して2着となり、アカンサスが3着で決着した。

勝ったオールザットジャズは次走のヴィクトリアマイルで16着に大敗して以降それまでの勢いを失ってしまったが、翌年も当レースに出走して連覇を達成。1年ぶりの勝利を同じ福島のファンが見守る前で勝ち取った。

 

地震のみならず降雪による開催中止も複数回にわたって経験するなど、幾度も受難に見舞われてきた春の福島競馬。しかし、そこに競馬場があり続け、福島に競馬の灯を絶やさんと尽力し続ける人々がいる限り、そして日本一熱いと言われる福島の競馬ファンがいる限り、福島競馬場は何度でも不死鳥のごとく甦って我々に極上のレースを堪能させてくれることであろう。全てが元通りとなり、福島競馬場で多くの競馬ファンが生のレースを楽しむことが出来る日が来ることを心待ちにしている。


福島牝馬Sは一時期メイショウサムソン産駒の独壇場だった時期もあるだけに、父サンデー系以外で欧州寄りの血統から選びたいところ。
ルビーカサブランカの武豊騎手は、アカンサスで当レースを3着して以降も福島の重賞に度々騎乗していますが、5戦して全て3-5着と勝ち切れない競馬が続いていますし、ここ何週かの競馬を見ても勝ちに飢えていることでしょう。

日曜の重賞は東西とも複数使いの陣営が目を引きますが、フローラSは3歳世代の層が厚い社台F生産のルージュエヴァイユ、マイラーズCは前走鮮やかなエアファンディタからいきたいと思います。


それではー

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