見出し画像

第52回有馬記念(2007年) [競馬ヒストリー研究(25)]

今年も有馬記念がやってきた。至極個人的な話であるのだが、筆者は今年の有馬記念で競馬を見始めてちょうど20年になる。競馬を知る以前の幼少期から何度もその名前を耳にし、この深すぎる知の迷宮に迷い込むきっかけとなったのがこのグランプリレース。

極論を言えば有馬記念を買うために1年間競馬をやっていると言っても過言ではないというほど筆者がこよなく愛するレースでもある。

マンハッタンカフェが優勝した2001年から昨年まで数えて20回当レースを見届けてきた計算になるが、その中で強く印象に残っているレースの一つが今回紹介する2007年の一戦だ。

 

前年にディープインパクトが快勝しターフを去ってから1年経った、2007年の有馬記念。

前年の二冠馬で春秋の天皇賞を制覇した単勝1番人気のメイショウサムソンや、牝馬として64年ぶりに日本ダービーを優勝したファン投票1位のウオッカと同馬と鎬を削りGI3勝のダイワスカーレット、その兄で前年3着のGI5勝馬ダイワメジャー等が集結した。

また、86年以降では初めてとなる1000万下条件からの格上挑戦となったレゴラスや、それまで招待騎手として来日してGI2勝を挙げ、Montjeuでの凱旋門賞などでも日本のファンにもおなじみであるアイルランド出身の伝説的名手M.キネーンが初めて短期免許を取得して騎乗し、4番人気の3歳馬ロックドゥカンブの手綱を取って参戦することも話題となった。

 

前走のJCでも逃げた横山典騎乗のチョウサンが1周目の4角でダイワスカーレットからハナを奪い、2角から向正面でペースが緩む。

再びペースアップした最終コーナーでダイワスカーレットが外からチョウサンを交わし先頭に立つも、その内をすくって鞍上蛯名正義の9番人気馬マツリダゴッホが抜け出し、勝利した。

 

当時中学3年生だった筆者は、最強古馬メイショウサムソンの優勝を予想し、ダイワスカーレットを推していた"競馬ファン予備軍"の同級生と予想を戦わせたりしながらこの有馬記念当日を迎えた。

オンタイムでの観戦は叶わなかったものの、筆者のメイショウサムソンと、友人のダイワスカーレットもしくは他の有力馬による白熱の名勝負がさぞ繰り広げられているものと期待し、外出先より胸を高鳴らせながら帰宅した。

しかし次の瞬間、テレビ中継を見終えた母から「蛯名(が勝ったん)だって」などというあまりにもあっさりした結果の報告を受け、全くもって事態が把握出来なかったという記憶が残っている。

予想の当たり外れはともかく、1着があり得るのは概ね先述の4頭にポップロック、ロックドゥカンブを加えた6頭までと考えていたとともに、01年から競馬及び有馬記念を見始めた若干15歳・競馬ファン歴6年の筆者にとっては、当レースでは人気薄の激走があっても所謂紐荒れの決着になった時という意識しかなかった。

ベテランファンの方にとっては印象深いであろうダイユウサクやメジロパーマーによる大番狂わせの優勝は、僅か15年程前でしかないにも関わらず「歴史の教科書に書いてあった出来事」程度の認識しかなく、ただただ自らの甘さを痛感した。

 

以来、「歴史上の出来事」であった過去のレースや競走馬について知識として身につけようと研究し、有馬記念では無意識のうちに第二のマツリダゴッホを探してしまう筆者。

このような苦い思い出から受けた大きな印象もまた、その後の競馬ファン人生の方向性を導いてくれる指針ともなり、故に有馬を筆者にとって最も愛すべきレースたらしめていると感じる。


いちファンという立場にして大変おこがましいが、有馬記念はファンのための祭典であると筆者は考えている。昭和の時代ならいざ知らず、競走体系も整備された今ではフェアな実力日本一決定戦などと言えないことは確かだ。

年末の大一番に夢を託して大勝負を掛けるのは競馬に関わる人にとって等しく同じものだが、有馬記念だけは我々競馬ファン一人一人が主役になっていい舞台と言っていいのではないだろうか。

この1年間の馬券成績も、苦い思い出なども振り払い、この1週間、この1日だけは一つの的中馬券を目指し全てを忘れ予想に没頭する。それこそが競馬ファンにとって最も神聖な時間であり、その時間をもたらしてくれる有馬記念というレースは常に我々を競馬の原点に帰らせてくれる。

3歳馬が勢力の中心を形成する今年の有馬記念。天皇賞馬エフフォーリアは中山でも皐月賞を快勝し、穴の少ない存在であることは間違いないですが、逃げたい馬が揃ってハイペースは必至。最後甘くなって何か1頭に差されるシーンも想像してみたいと思います。

同世代のステラヴェローチェは前走出来落ちもあったにせよ、前がペースアップしたところで強引に捲り上げながら最後まで2着争いを演じる内容。上がりが掛かる消耗戦でその持久力がより活きると期待したいです。

アカイイトも前走前掛かりの流れで覚醒。更に相手強化のここも続けて、というのは出来過ぎな気もしますが、条件戦や牝馬限定戦の流れではベールに隠れたままであったGI級のタフさや底力が本物かどうかも含めて注目したいです。


それではー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?