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第147回天皇賞(2013年) [競馬ヒストリー研究(42)]

日本国内でこのように言われることは少ないが、春の天皇賞は世界トップか、少なくとも三本の指に入る有数の長距離戦である。IFHA(国際競馬統括機関連盟)が毎年発表する、年間レースレーティングを基にしたランキング「世界のトップ100GIレース」では、距離コラム「E」(Extended=超長距離)の競走の中で最上位にランクされることが多く、2017年には全体12位タイという順位も記録している。

1972年から1999年までの間外国産馬が出走できず、外国調教馬が出走できるようになったのも2005年からであるため、日本の中から見た視点では当レースと世界との繋がりを意識することがそれほど多くないという側面もあるが、そう思っていた我々日本の競馬ファンの意識を変えてくれたのは2013年に出走した英国調教馬レッドカドーであろう。

 

レッドカドー以前にも春の天皇賞に出走した外国調教馬は2頭いた。2005年に初めて出走したのが豪州の歴史的ステイヤー・マカイビーディーヴァ。前年のメルボルンCで愛セントレジャーを4連覇したVinnie Roeを下して連覇を達成し、直前には2000mのオーストラリアンCと2400mのタンクレッドSも勝つなど絶頂期にあったが、7着に敗れた。

続いて2011年に出走したのが仏国のジェントゥー。前年に史上3頭目となる同国の3000m超GIカドラン賞とロワイヤルオーク賞の同一年制覇を達成したスタミナ自慢であったが、こちらも9着に敗れている。

その2年後の2013年に出走したのがレッドカドー。2011年のメルボルンCで2着するなど14F以上の長距離戦にも実績があったが、2走前に香港ヴァーズでGI初制覇を飾っており、その前の6月にはコロネーションCで2着するなど前年は芝12F路線を戦っていた。

また、3走前にはジャパンCにも出走(8着)。Snow Fairyで日本のエリザベス女王杯を連覇したE.ダンロップ調教師の管理馬らしく、軽い馬場に適性を見出して積極的に海外遠征を行っていた点なども同じ欧州から遠征したジェントゥーとは異なっていた。

 

香港ヴァーズの後、2013年の初戦として出走したドバイワールドCで2着し、天皇賞春へ駒を進めたレッドカドー。世界最高峰レースで勝ち負けを演じ、香港では天皇賞馬のジャガーメイルを破っているが、単勝人気は6番人気に留まった。

単勝1.3倍の圧倒的支持を受けたのは前年に皐月賞、菊花賞、有馬記念を制したゴールドシップ。東京優駿、天皇賞秋2着で前哨戦の日経賞を快勝した同じ4歳馬のフェノーメノが2番人気で続いた。

 

サトノシュレンが逃げて前半1000mは59秒4の稀に見るハイペース。1周目のホームストレッチで早くも馬群が縦長に延びる中、前3走に続きG.モッセが騎乗するレッドカドーは13番ゲートからスタートし、中団の外11番手あたりを追走。その2列前にフェノーメノが位置取り、ゴールドシップはダッシュが付かず最後方の集団に位置した。

バックストレッチに入ると前はかなり離して逃げる形となり、後方でもゴールドシップが早めにポジションを上げていくのに連れて各馬が遅れを取るまいと動き出す。レッドカドーも3角の坂の頂上でゴールドシップに交わされるとモッセが激しいアクションで追い出し、追随する。その前ではフェノーメノとトーセンラーが良い手応えで先頭を射程に入れ、上がってきたゴールドシップを待つかのようにスパートをかけ、直線を向いた。

直線に入るとゴールドシップは伸びあぐね、フェノーメノが内に切れ込みながら抜け出す。その外を併せてきたトーセンラーも離されまいと必至に食らいつき、真ん中を突いたレッドカドーも迫るが、最後まで隊列は変わらず、フェノーメノが1+1/4差で1着。2着のトーセンラーから2馬身差の3着でレッドカドーが続いた。

 

レッドカドーは翌2014年も出走したものの14着に大敗し、以降当レースに外国調教馬の出走はない。その当時から比べても日本の競馬水準は明らかに上がっており、今では春の天皇賞を勝つどころか出走したことすらない日本馬が、軽い馬場の中東とは言え欧州のGI級ステイヤーを何頭も負かして長距離重賞を勝つまでになっている。

そういった状況ではあるが、メルボルンCを除けば長距離GIの中では別格に高い賞金額であり、ハンデ戦であるメルボルンCより実績馬にやさしいというメリットを活かし、レッドカドーや先に述べた2頭のような世界の一流ステイヤーにまた参戦してほしいと願うレースである。


今年はもちろんディープボンドとタイトルホルダーの2頭が抜けた存在ですが、残る一席、あわよくば一角を崩す伏兵として期待したいのはタガノディアマンテです。
前走はレースの上がり5Fがコース史上最速のロングスパート戦で、勝ったアフリカンゴールドも次走の大阪杯では下馬評以上に健闘。元々は長丁場を主戦場にしていた馬ですし、スタミナが問われる阪神コースもむしろ歓迎かもしれません。

マカオンドールも菊花賞に出てほしいと思っていた1頭ですし、GIの厳しい流れに変わって差し込みを期待したいです。


それではー

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