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第50回安田記念(2000年) [競馬ヒストリー研究(47)]

ジャパンC以外のGI競走では最も早い1993年から外国調教馬の出走が認められ、春のGIでは最も国際色豊かなレースであった安田記念。参戦表明だけで話題を呼んだ24戦21勝の香港馬Golden Sixtyは残念ながら回避してしまったが、今回は香港馬が制した往年の安田記念を振り返りたい。

 

2000年の安田記念は、前年1999 年の春秋マイルGIを制したエアジハードがターフを去ったこともあり大混戦ムードとなった。

前哨戦の京王杯スプリングCを1,2着した、4歳牝馬のスティンガーと前年のスプリンターズS勝ち馬ブラックホークが単勝オッズ4.5倍と4.9倍で1,2番人気を争い、以下、高松宮記でGI初制覇を果たした後前走京王杯SCを11着に敗れたキングヘイロー、前年のNHKマイルC勝ち馬シンボリインディ、武豊鞍上のアドマイヤカイザー、前年に仏国でモーリスドゲスト賞、英国でスプリントCという2つのGIを制したゴドルフィンのディクタットなど、7番人気までが10倍を切るオッズを形成。何が勝ってもおかしくないまさに混迷といった状況でレースを迎えることとなった。

 

その混戦に断を下したのが、香港から参戦した10番人気のフェアリーキングプローン。前半600m通過が34秒9と、GIの安田記念としては緩めのペースとなり、直線は各馬が横一杯に広がる追い比べの中、大外から一直線に伸びて前で競るキングヘイローやスティンガーを差し切った。2着にも外国調教馬のディクタットが入り、馬連は147倍の万馬券となった。

 

勝ったフェアリーキングプローンはこの安田記念を勝つために、2年前の安田記念をオリエンタルエクスプレスで、前年のジャパンCをインディジェナスで共に2着した国際派トレーナー・I.アランの下に転厩していた経緯があったという。

だが、デビューからキャリア15戦を数える中でマイル戦に出走したことは1度しかなく、芝1200mのローカルGI(当時)チェアマンズプライズや、当時は芝1000mで施行されていた香港スプリントを勝つなど戦績的には完全なるスプリンターであったため、相当な驚きをもたらしたことは想像に難くない。同馬主で芝1200mGIのセンテナリースプリントCを勝ち、先月ターフを去ったHot King Prawnが勝ったと考えるとイメージしやすいだろうか。

 

コーナー区間から直線の入り口まで11秒9-11秒8-11秒9という緩い流れが続き、残り400-200mの区間で一気に11.2秒まで加速。先述したように直線は横一杯に広がっての争いとなったが、瞬間的な切れ味やスプリント力が勝敗を分けたのではないだろうか。事実、5着までは全て芝1400m以下の重賞で連対経験があり、前走も芝1400m以下のレースから距離延長ローテでここへ臨んでいた。

 

また、フェアリーキングプローンの父Danehillの産駒はそれまでもゼネラリストやツクバシンフォニーがNHKマイルCで好走するなど東京芝の重賞で活躍し、前週の日本ダービーではアタラクシアが3着。

母父のTwig MossはLuthierやKlaironを経由して、日本で活躍した種牡馬パーソロンと同じDjebelに遡る仏国のスピード豊かな父系であるが、父Danzig系×母父Klairon系という血統も、高松宮記念を勝ったシンコウフォレストやスプリントGIで3回2着したビコーペガサスなど、日本の短距離戦線で実績十分であった。

時として日本を含む血統の世界的トレンドが発生するようなこともあるが、やはり競馬は血統という共通言語で世界が繋がっているということも実感する。


グランアレグリアらが引退し、安田記念のメンバーも近年に比べればスケールダウンは否めないだけに、出走していればGolden Sixtyも好勝負は必至と見られていましたが、体調不良による回避は実に残念です。
一方で、V.ホー騎手がコメントしていた通り、F.ルイ調教師は2018年のスプリンターズSにLucky Bubblesを遠征させ、故障・競走中止の憂き目にも遭っているだけに、リスクを冒したくないという考えも理解できます。海外遠征はタイミングや運も重要だということを改めて思い知りました。

さて、その安田記念はグランアレグリアと2度の接戦を演じたシュネルマイスターが力量では頭一つ抜けた存在でしょうか。東京コースで同馬に追随する走りを見せたのはソングラインくらい。近走同コースを走っている馬も多いですが、他馬は更にパフォーマンスを上げてこないと負かすのは難しいかと思われます。

記録面で唯一迫るのがイルーシヴパンサー。同コースを1分32秒0で走破した4走前は安田記念当日より馬場も軽く、斤量も54kgでしたが、そこから約1年経ってどれだけ力をつけているか楽しみな一戦です。


それではー

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