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第119回プリンスオブウェールズS(2012年) [競馬ヒストリー研究(48)]

今年も6月14日から18日の5日間にかけて英国のアスコット競馬場で開催されるロイヤルアスコットミーティング。英国王室が主催し、その荘厳さと華やかさは世界でも有数のビッグイベントであることは最早説明不要であろう。まさに競馬発祥の地に相応しい競馬開催と言える。

2日目の15日に施行されるプリンスオブウェールズSは芝9F212y(約10F)で行われ、総賞金は100万ポンドと開催中最高額を誇ることから、例年開催全体の目玉と言える競走となる。

2000年からGIに昇格するとともに出走資格が4歳以上となり、翌月には3歳馬と古馬が対戦するGIエクリプスSやキングジョージVI&QESを控えることもあって、欧州芝10F路線のシーズン前半における最強古馬決定戦という位置付けに当たる。

 

2012年のプリンスオブウェールズSで注目を集めていたのはSo You Think。A.オブライエン調教師が管理するクールモアグループの所有馬であるが、豪州でデビューしたニュージーランド産馬という異色の経歴を持つ馬だ。

英・愛ダービー、BCターフなどGIを6勝し、シャトル種牡馬としてオセアニアでも活躍した父High Chaparralと、新国でGIIを制した母Triassicの間に産まれたSo You Think。メルボルンC通算12勝を誇る豪州のレジェンドトレーナー・B.カミングスの厩舎から2009年の5月にデビューした。

3歳シーズンの2戦目に初重賞制覇を飾ると、その2走後には僅か5戦目というキャリアで古馬を含めた中距離の最強馬決定戦コックスプレートに出走し、勝利。3歳春にして古馬相手にGI初制覇を成し遂げた。

休養を挟んだ翌2010/11シーズンの前半はアンダーウッドS、コーフィールドS、コックスプレート、マッキノンSと中距離路線のGIを総なめし、メルボルンCにも1番人気で出走。ここを3着に敗れた後クールモアグループへトレードされ、愛国のA.オブライエン厩舎に移籍した。

 

2011年からD.スミスの紫色の勝負服を背に欧州で戦うこととなったSo You Think。移籍初年度はタタソールズゴールドC、エクリプスS、愛チャンピオンSとGIを3勝。欧州の平地シーズンが終わると米国のBCクラシック、2012年の初戦にはドバイワールドCにも遠征するなど更なる挑戦にも打って出た。

その後愛国に戻ってタタソールズゴールドCを6馬身差で連覇すると、前年はクビ差の2着に敗れたプリンスオブウェールズSへ駒を進め、単勝1.8倍の1番人気に推された。

他の出走馬は、2番人気が前年の英国ダービーを1番人気で3着に敗れ、シーズン初戦の前走GIIIブリガディアジェラードSを勝利してきたエリザベス女王所有のCarlton House。以下、3戦3勝の上り馬Farhh、前年のガネー賞を勝ち、2走前にドバイワールドCで3着した仏国のPlanteur、前年の仏ダービー馬Reliable Manなどが続いた。

 

2走前からコンビを組むJ.オブライエンを背に7番ゲートからスタートしたSo You Think。ペースメーカーの僚馬Robin Hood、米国から遠征したBig Blue Kittenを見ながら好位の3番手に位置取る。Carlton HouseはSo You Thinkから2列後ろの内、Farhhは後方馬群からレースを進めた。

直線を向いてBig Blue Kittenが先頭に立つもすぐに一杯になり、So You Thinkが手応え良く並びかける。次の瞬間、空いた内のスペースからCarlton Houseが飛び出し、鞍上のR.ムーアが激しいアクションで追いながらSo You Thinkを強襲。それを見たSo You ThinkのJ.オブライエンも左ステッキを入れてCarlton Houseに併せに行く。

完全に人気2頭によるマッチレースの様相となったが、残り1/2F余でSo You Thinkが競り勝ち、最後は2+1/4馬身差を付けて快勝。この勝利で欧州では5勝目、通算で10勝目となるGIタイトルを手にした。

 

So You Thinkはその後、エクリプスSを最後に南半球の種付けシーズンに合わせて引退する運びであったが、直前に跛行が確認され、回避。結果的にはこのプリンスオブウェールズSがラストランとなった。

常に好位先行して抜け出す堅実なレースぶりで、英国ダービーや凱旋門賞を制したWorkforce、4か国でGIを制した名牝Snow Fairyといった強豪たちをも寄せ付けなかったSo You Think。派手さはなかったものの、欧州の芝10F路線においてその強さを印象に残した名馬の1頭であると言えるのではないだろうか。


プリンスオブウェールズSはまず現地1番人気のBay Bridgeに注目したいです。目下5連勝中でプレップ重賞のブリガディアジェラードSを5馬身差で圧勝。同レースからの連勝でGI初制覇という馬は近5年でも2頭おり、ひとつのパターンとして定着していますが、同馬もそれらに続くニュースターとなれますか。
A.オブライエン厩舎のBroomeも登録が残っていますが、早くもR.ムーア騎手で想定されています。M.スタウト師とも旧知の間柄ですし是が非でも勝ちを狙ってくるでしょう。

あとはチャンピオンSを2着したアスコットに戻るDubai Honourや、2走前までGIを3連勝したState Of Restを含め、層の厚い4歳勢を中心に見たいと思います。

エプソムCは復調してベストな条件に戻るダーリントンホール、函館スプリントSは速い流れで先行してしぶといキルロードに注目しています。


それではー

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