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第29回ブリーダーズCターフ(2012年) [競馬ヒストリー研究(18)]

いよいよ、日本調教馬6頭が5競走に出走するブリーダーズCが現地時間5,6日の2日間にわたって今年はカリフォルニア州サンディエゴのデルマー競馬場で行われる。

ブリーダーズCと言えば、海外競馬に明るくないファンでも一度はその名を耳にしたことがあるのではないだろうか。13のGIを含む14競走を施行し、全てのカテゴリーのチャンピオンがこの2日間で決まるという、春のケンタッキーダービーと双璧を成す米国競馬の祭典である。

全レースの総賞金を合わせた合計額は3000万ドル。メインレースのクラシックは総賞金700万ドル、最も賞金の低いレースに至るまで総賞金100万ドルの所謂ミリオンレースである。世界でも屈指の高額賞金開催とあって、欧州や南米、アジア等各地から多くの一流馬が参戦することでもおなじみだ。

1984年に創設され、日本調教馬として初めて出走したのが96年のクラシックに出走したタイキブリザード。その後は2020年まで5競走に延べ13頭が参戦している。


2012年にサンタアニタで行われたブリーダーズCターフに出走したのはトレイルブレイザー。オーナーは米国で積極的に生産・購買活動を行い、日本産の現地調教馬Sunday BreakでGIIのピーターパンSを制した前田幸治氏だ。

前年の11月にアルゼンチン共和国杯で重賞初制覇を挙げ、続くジャパンCでは武豊騎手が初めて騎乗し、凱旋門賞馬や北米のタイトルホースらにも先着する4着。その後は香港ヴァーズにも出走し、初の海外遠征も経験した。

しかし同年は2月に京都記念を勝ち、ドバイシーマクラシックに遠征する予定だったところ、鼻出血を発症して回避。その後宝塚記念の直前にも再度発症したことから、運動誘発性肺出血の予防効果がある利尿剤ラシックス(フロセミド)を投与した馬のレースへの出走が認められている米国への遠征に踏み切った。


9月に渡米したトレイルブレイザーは本番と同じサンタアニタ競馬場で1か月前に行われる前哨戦に臨んだ。出走したレースは97年にタイキブリザードも出走したBCマイルの前哨戦であるGIIのアロヨセコマイルS。マイル戦への出走も初めてで、日本同様に軽い西海岸の芝らしく1分31秒95という速い勝ち時計の中、半馬身差の2着に好走。本番のBCターフへ期待を抱かせた。

迎えた本番に4番人気で臨んだ武豊鞍上のトレイルブレイザー。1番人気は米国東海岸でマンノウォーS、ソードダンサー招待S、ジョーハーシュターフクラシック招待Sとこの路線のGIを3連勝してきたPoint of Entry。

2番人気は前年の勝ち馬、愛国A.オブライエン厩舎のSt Nicholas Abbey。3番人気のSharetaは前年に凱旋門賞で2着し、ジャパンCにも出走していたことから日本のファンにも馴染みのある存在で、同年はここまでヨークシャーオークスとヴェルメイユ賞のGI2勝を挙げていた。

この他には、ターフクラシックS、アーリントンミリオンと中部で行われたGIを2勝したLittle Mikeや、芝未勝利ながらオールウェザー馬場でパシフィッククラシックSなどのGIを3勝し、ケンタッキーダービーでも3着したDullahanなどが顔を揃えた。


12頭立ての大外枠からスタートしたトレイルブレイザー。先行する3頭を見ながらサンタアニタ競馬場名物のヒルサイドコースを下り、好位でレースを進める。

3角でスパートをかけて先団に取りつき、3番手から抜け出しを図るLittle Mikeに並びかけて直線を向くも、そこからもう一伸びを欠き、Point of Entry とSt Nicholas Abbey に交わされて4着でゴールした。

とは言え、勝ち馬はこれがGI3勝目で、2,3着の2頭もGIを3,4勝している中にあってGI未勝利のトレイルブレイザーが互角の勝負を演じたこと、武豊騎手にとっても、過去に長期参戦も経験した勝手知ったるサンタアニタで勝ちに行って見せ場充分の競馬を作ったことは間違いないだろう。


この4着という着順が、ブリーダーズC全体でも日本調教馬にとっては2010年にフィリー&メアターフでのレッドディザイアと並んで、日本人騎手にとっても1990年のスプリントでAdjudicatingに騎乗した河内洋騎手と1994年のディスタフでErin Birdに騎乗した武豊騎手に並ぶ最高着順であり、日本調教馬及び日本人騎手が勝利はおろか3着以内に好走した例は未だない。

だが、この2012年から見ても日本と海外の一流国との差は更に縮まっており、今年ラヴズオンリーユーが出走するフィリー&メアターフやターフなど芝のレースをいつ勝利してもおかしくないことは、他国での活躍が示す通りであろう。

ブリーダーズCというビッグタイトルを日本の馬と騎手が制し、新たな歴史が刻まれる瞬間はもうそこまで来ている。

ターフに出ても十分勝負になったと思いますが、ラヴズオンリーユー陣営が選んだのはフィリー&メアターフでした。もちろん日本勢では最も勝利を期待できる1頭です。欧州産馬が5連勝中ですが、オペラ賞を勝って臨むRougirにも注目しています。

マイルは西海岸での開催なら米国調教馬と米国産馬が完全に優勢。ここはディープインパクト産駒Beauty Parlourの仔Blowoutと、4連勝中のMo Forza、同馬と接戦が続くHit the Roadの地元勢にも注目します。

ジャパンCの登録馬3頭も出走するターフ。ここも西海岸では米国調教馬が毎回のように連対圏まで浮上。その中でも注目したいのはGufo。米国産馬でも好走しているのは父が欧州の種牡馬であったりSadler's Wellsを持つ血統です。ジャパンCの褒賞金対象レース・ソードダンサーSを制している同馬。ここを好走して是非とも来日を果たしてほしいという期待も込めたいです。


それではー

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