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第1回ドバイワールドC(1996年) [競馬ヒストリー研究(37)]

世界最高賞金を誇り、鳴り物入りでスタートしたサウジCは創設3回目を数え、日本馬が4勝と大活躍した今年は過去最大の注目度となった。しかし、やはり中東の競馬を象徴するビッグイベントと言えばまだまだドバイミーティングの存在は大きい。

創設から四半世紀以上経ち、中東はおろか世界の競馬シーンの中で完全に定着した大きな要因の一つは、1996年に行われた記念すべき第1回のドバイワールドCにこの馬が出走し、勝利したことであることは間違いないだろう。そうとまで言わしめる90年代の米国競馬におけるスーパースター・Cigarの栄光を今回は振り返っていきたい。

 

1993年の2月に3歳でデビューしたCigar。2戦目にダート6ハロン戦で初勝利を挙げるとその後は芝のレースに出走。暫くして2勝目を挙げ、重賞でも好走するが、GIのハリウッドダービーでは11着に大敗して3歳シーズンを終えた。

4歳になり、西海岸のA.ハシンガーJr.厩舎から東海岸の”ビル・モット”ことウィリアム・モットの厩舎へ転厩。しかし、芝路線の層が厚い東海岸ではアローワンス(一般)戦でもまともに勝ち上がることが出来ず、転厩5戦目に1年5か月ぶりとなるダート戦を使われることとなる。

そしてそのダート8F戦を8馬身差で圧勝すると、いきなりGIのNYRAマイルHに出走し、GI5勝馬のDevil His Dueに7馬身差をつけて勝利。瞬く間にGIホースとなってしまう。

その後もCigarの快進撃は止まらず、5歳となった1995年はブリーダーズCクラシックを始めとしたGI8つを含む10戦10勝。6歳シーズンの1996年は年明け初戦のドンHで58kgを背負って連覇し、この年新設されたドバイワールドCへ招待を受け、初の海外遠征を敢行した。

 

Cigarにとっては、地元ゴドルフィンのGI2勝馬Hallingとは既にBCクラシックで対戦経験があったが、欧州はおろか世界中から一流馬が集った当レースでは更に相手関係は未知と言える一戦であった。

特に、前年のキングジョージVI&QESでLammtarraとクビ差の名勝負を演じ、愛チャンピオンSを制したPentireや、豪州で前年10,11月の春シーズンにコーフィールドSとマッキノンSを制するなどGI5勝のDanewinなどは目立つ存在と言えた。他にも日本からダート重賞6勝のライブリマウントが出走していた。

 

いつも通り好位から競馬を進めたCigar。北米にはない600mの長い直線を前に他の先行勢は手応えが一杯になり始める中、持ったまま堂々と先頭に並びかける。

Pentire等を完全に置き去りにし、あとはどれだけ差が開くかと思われたところ、外からSoul of the Matterの強襲を受ける。一旦は鼻面を並べられ絶体絶命かに見えた次の瞬間、根性に火が付いたCigarが盛り返し、再び半馬身前へ出てゴール。300m程続いたまさに死闘と呼べる叩き合いを制した。

圧勝続きであったCigarにとっては連勝スタート以降初めて経験する接戦であったが、精神力の勝利と言えるこの日の競馬によって、また一つ名馬の証を手にしたとも評された。

 

前年までに12連勝を果たし既に米国競馬界のスーパースターとなっていたCigarだが、ドバイワールドCを制してその人気は更に加熱。Cigarに出走してもらうべく各地の競馬場が誘致合戦を展開し、95年の10月から続いていた連勝も最終的にはCitationが持つ16連勝の記録に肩を並べた。

この年限りで引退したCigarは3年後、「ブラッド・ホース」誌が選んだ「20世紀のアメリカ名馬100選」で18位にランクされた。Secretariatをはじめとする70年代までの名馬や、Man O' Warなど戦前のレジェンドホースらの人気が特に高い米国において、これは80年代以降に生まれた馬の中では最高位にして、唯一となる上位30頭入りを果たしている。4歳秋までは二流のターフホースであった彼のまさにアメリカンドリームと言える成り上がり方はアメリカ人の心を確かに鷲掴みにした。

 

昨年はラシックスフリーで開催されたブリーダーズCでは海外馬の台頭を許し、ケンタッキーダービーを巡る一連の騒動は誰も喜ぶことの出来ない結末を迎えることとなってしまうなど、米国の競馬界は決して明るくないニュースばかりが目立ってしまっている。その復活の狼煙として、またいつかCigarのようなスーパースターが現れ、ドバイワールドCのような全世界の注目を浴びるビッグレースでその強さを見せてほしいと思っている。


日本馬が大活躍したサウジCも盛り上がりましたが、ドバイミーティングも今年は例年以上にバラエティに富んだ顔ぶれです。特にペガサスWCをダブル制覇したT.プレッチャー厩舎の2頭がそのまま参戦してくれたことでワールドカップ感がかなり増したように感じます。

ゴールデンシャヒーンは米国馬の中でも純粋なスプリンターというよりは少し長めの距離を使ってきた馬を狙いたいです。Drain the Clockを中心に、リピーターも多いだけにレッドルゼルも無視できません。

ドバイターフは最も日本馬に分があるカテゴリーですが、度々複穴を開けている休み明けでない欧州勢を狙ってみたいです。昨年快勝のLord Northは今年プレップを使っての参戦。My Oberonあたりも面白そうです。

シーマクラシックはゴドルフィンの地元馬含む英国勢が5連勝中。もちろん中心は大将格のYibir。相手はオーソリティを筆頭に、前走で軽い馬場と遠征を経験したDubai Honourあたりも。欧州の現4歳世代も高水準です。

ワールドCは久々に米国勢が強力です。距離経験のないLife Is GoodよりはHot Rod Charlieを、サウジC組の2頭も同様に10Fの実績で勝るCountry Grammerの方を上に取りたいです。


高松宮記念はグレナディアガーズに期待します。千四がベストの馬だけに、この距離なら時計が掛かって丁度良さそう。前走56kgを背負って同コースの阪急杯より記録面では上回ったロータスランドにも注目します。

それではー

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