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第37回京成杯(1997年) [競馬ヒストリー研究(27)]

昨年はNHKマイルCを独国生まれのシュネルマイスターが勝利。同レースにおける外国産馬の優勝は2001年以来20年ぶりであり、”マル外全盛時代”を代表するGIだけに、当時を懐かしむ気持ちを抱いた方も少なくなかったことと思われる。

今週行われる京成杯の勝ち馬にも、そんな時代に才能の片鱗を見せた1頭がいる。今回は1997年の一戦をご紹介したい。

 

東西で対になるような番組が組まれていた時代の名残もあり、当時は関西のシンザン記念と同じ芝1600mで施行されていた京成杯。1997年は1頭の外国産馬が圧倒的な人気を集めていた。米国生まれの芦毛馬スピードワールドである。

1990年代前半から米国のトレーニングセールで日本人オーナーによる購買が活発化し、80年代までは中央登録馬全体の1%程度しか存在していなかった外国産馬の層が急速に厚くなっていた。

その1頭である本馬も、2歳時に世界最大級の2歳馬セールと言われるファシグ・ティプトン社のコールダーセールにおいて87万5000ドルで落札された。

 

購買価格からして期待度の高さが伺えるが、セールでの騎乗展示用に1ハロンから2ハロンで速い時計を出すべく鍛えられたためか、美浦の小西一男厩舎に入厩した当初はハロン15秒の併せ馬をこなすにも苦労したという。

また、いい意味でも悪い意味でも頭の良い馬で、後に実戦でも騎乗する的場均が乗れば素直に従う一方で、他の乗り手に対しては勝手気ままな面を見せることもあった同馬。

それに対し厩舎は、最初のうちは好き勝手させてストレスを発散させ、それから教育を進めていくという調教方針を採ったところ、次第に凄い脚を見せるようになり、教えれば教えるほど乗りやすさも向上していった。

 

96年の10月に迎えた東京芝1400mのデビュー戦では上がり3F33秒9の豪脚で他馬を置き去りにして快勝。なお、同年に東京芝コースにおいて上がり33秒台で勝利した馬は他に3頭しかおらず、いずれも古馬オープンクラスであったことからも如何に破格の内容であったかが伺える。

2戦目で重賞挑戦となった府中3歳Sは5着に敗れたものの、自己条件のひいらぎ賞ではやはりただ1頭抜けた脚で差し切り、前週に同コースで行われた朝日杯3歳Sを0秒1上回る走破時計で勝利。そして年明けの3日間開催最終日に施行された京成杯に駒を進めた。

 

実績では新潟2歳S勝ち馬のパーソナリティワンが目立つものの、その他はダートやスプリント戦で2勝目を挙げた馬ばかりというメンバー構成。2勝の内容からスピードワールドが1番人気に推され、単勝オッズ1.2倍の圧倒的な支持を集めた。

9頭立ての大外枠からスタートしたスピードワールド。前3戦と同様にスタートで立ち遅れるも、それまでの中団・後方待機策から一転、すぐに盛り返して好位を追走。

4角を回る頃には抜群の手応えで先頭に並びかけ、直線に入っても殆ど馬なりで突き放す一方。まさに楽勝と言える競馬で、最後は2着のスルーオグリーンに6馬身の差を付けてゴールした。

 

次走も同コースの特別戦クロッカスSで3連勝を決め、NHKマイルCを目指したのだが、捻挫のため回避。前年から4歳馬も出走可能となった安田記念に出走するも、主戦の的場均が負傷のため騎乗出来ず、田原成貴に乗り替わりとなり、3着。

その後は同年の秋には1番人気でマイルチャンピオンシップに出走するも、12着と大敗。それからは当初から不安のあった脚元や爪の状態も思わしくなく、大敗を繰り返し、最終的には再び勝利を挙げることなくターフを去った。

 

昨年9月に行われたキーンランド・セプテンバーセールで、藤田晋氏、大野剛嗣氏、加藤和夫氏など外国産馬を多く所有する日本人馬主の代理人として参加した森秀行調教師が3頭のJustify産駒を落札し話題になっていたことは記憶に新しい。

現地でのインタビューで「日本は購入するにはちょっと高すぎますね。ここでは同じような品質の馬を、送料をかけても手ごろな価格で手に入れることができます。」と語っていた森師。

日本のセレクトセールでの盛況も毎年恒例の話題となっているが、価格の高騰が進み簡単には素質馬を入手し難い状況となった今、そのような逆転の発想から見出された外国産馬に改めて注目してみるのも面白いかもしれない。その中からスピードワールドのような才能溢れる馬がまた現れることを楽しみにしている。

京成杯は前走新馬勝ちの馬が3連勝中で、同未勝利勝ちも含めて勢いを重視したいレース。フジマサフリーダム、タイセイディバイン、ヴェローナシチー、ロジハービンなどこの組を広く狙っていきたいです。

日経新春杯は2走前同コース快勝のフライライクバードや、軽ハンデの馬からは前残りの前走差し勢としては上位で入線したトラストケンシンが面白そうです。

それではー

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