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第50回スプリンターズS (2016年) [競馬ヒストリー研究(12)]

10月3日に中山競馬場で行われるのは、秋のGIシリーズ開幕を告げるスプリンターズS。今回振り返るのは、同日の凱旋門賞で海外馬券発売が初めて行われた2016年の一戦だ。


2014年に行われた路盤改修と、近年各場で取り入れている開幕1,2か月前のバーチドレンやシャタリングマシンで路盤をほぐすエアレーション作業によって、年間でも特に硬度が高く速い時計が出るイメージだった初秋の中山競馬場の馬場が一変した。

改修前の5回と改修後の6回(09-13年/15-20年)を比較すると、平均勝ちタイムが1分7秒2/1分7秒8、最速上り3Fの平均が33秒5/33秒2と、全体時計が掛かるとともに速い上がり3Fタイムが出やすくなっている。

そして、特筆すべきは勝ち馬の脚質。改修前の勝ち馬5頭は全て3角で出走馬の半数より前方に位置取りだったところが、改修後は6頭中4頭が半数より後方の位置取りに変化。

先団で自らレースの流れを作るか、比較的前でその流れに乗る競馬が勝ちパターンであったところ、15番手で4角を通過して直線で14頭をごぼう抜きにした昨年のグランアレグリアのように、流れに関係なく後方で脚を溜めて直線で差し込むというシーンが気付けば毎年見慣れた光景ともなっている。これはスピード勝負のスプリント戦としては異質な傾向と言えるだろう。


この馬場を味方につけたのが2016年の当レースでGI初制覇を飾ったレッドファルクスだ。

同年のメンバーは明確な逃げ馬が不在で緩めのペースが予想された。事実前半3F33秒4というGIとしては決して速くないラップで逃げたミッキーアイル以下、シュウジ、ネロ、ソルヴェイグといった2番手集団の3頭も直線半ばまで脚色が衰えず、このまま前残りの決着とも思われた。

しかし、残り200mの時点でまだ中団位置にいたレッドファルクスが坂を上ってからゴールへ引き寄せられるかのように一気に切れ、ただ1頭前の集団を差し切った。


翌2017年は更にスローな流れを直線豪快になで斬って連覇。流れに関わらず逃げ・先行馬も改修前と変わらない程度の割合で好走はしているのだが、クッション性が上がったことで、逃げ・先行馬にとっては惰性で押し切ってしまうことが出来ず、差し馬にとっては弾むような馬場で瞬発力を活かせるという面が最後の一押しに効いているのではないだろうか。

また、芝1600mの重賞勝ち馬及びGI3着以内馬による優勝例は中京コース改修後の高松宮記念では10回中1例しかない一方、中山コース改修後の当レースは6回中4例に増えている。以前は高松宮記念の方がマイラー寄りの馬が勝ち切るレースであったが、この関係が逆転しているという点も実に面白い。

「スプリント」「短距離」という言葉からは、序盤からスピード全開で飛ばすような馬がイメージしやすいところだが、このレッドファルクスが見せた直線のスプリント力、一瞬の爆発的な切れ味もまたスプリント王に相応しい極限のスピードのもう一つの形と言えるのではないだろうか。


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今年のスプリンターズSは高松宮記念に続いてダノンスマッシュとレシステンシアの一騎打ちムードですが、本編の内容からこの2頭に優劣をつけると上に取れるのはダノンスマッシュの方でしょうか。

他にも、前走差しの効かない馬場と展開に泣いたアウィルアウェイと、出遅れが響いたジャンダルムあたりの一発にも警戒したいですね。


それではー

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