7 肉を切らせて骨を断つ


肉を切らせて骨を断つ。これが、僕の馬券戦術を端的に表した言葉だ。ここで、馬券裁判前後における正確な馬券回収率と年間の利益額を紹介しておこうと思う。

平成14年 回収率:113 %  利益額:約 56 万円
平成15年 回収率:126 %  利益額:約 330 万円
平成16年 回収率:133 %  利益額:約 909 万円
平成17年 回収率:105 %  利益額:約 1,875 万円
平成18年 回収率:109 %  利益額:約 5,891 万円
平成19年 回収率:106 %  利益額:約 1億2,190 万円
平成20年 回収率:107 %  利益額:約 1億0,546 万円
平成21年 回収率:114 %  利益額:約 2億0,792 万円
平成22年 回収率:105 %  利益額:約 5,565 万円


データの信ぴょう性が高い9年分を取り出してみると、ざっくり、こんなイメージになるだろう。ちなみに、平成13年以前の馬券回収率は、概ね、100~105%あたりを右往左往していたと記憶している。


全体傾向としては、平成16年を頂点として回収率が下がってきているようにも見える。実際、数値上はそのとおりなのだが、実のところこれにはちょっとした「ワケ」がある。

ちょうど平成16年頃、年間回収率が安定して100%を大きく超えるようになっていたこともあって、僕は1点あたりの馬券購入金額を徐々に増やしていくことを試みた。

それにより何が起こったかというと、自身の馬券購入圧がオッズを確実に下げる結果になってしまったのだ。

そうなると、「回収率」の数値が伸び悩むのは自明の理。最終的に「回収率」を指標として馬券成績を観察しようとすると、あたかも成績が下がったように見えるようになってしまったというのが真実である。


利益額を見てもらえればわかるように、僕の馬券成績は概ね右肩上がりで推移していたことは明らかだろう。

たしかに「回収率」は、馬券成績を評価する上で最も重要な指標ではあるのだが、年間億単位のオーダーで馬券を購入しているケースでは「回収率」の数値だけで馬券成績を評価するのは困難であるということ。

違う角度から言えば、僕が実践したような年間億単位の馬券購入でもしない限り、ここまで紹介してきたやり方で地道に馬券戦術を磨いていけば、基本的に「回収率」は右肩上がりで推移していくはずなのである。


ネット上では、馬券裁判の中で公表された資料なども基にして、僕の馬券成績について評価を試みているものを見かけることもあるけれど、その分析の精度はかなり残念なレベルであるというほかないだろう。

馬券購入圧の影響を無視してデータを解析しているうちは、馬券戦術の本質など見えるわけがない。

もちろん、本人だって自身の馬券購入圧が明確にオッズを下げていることにすぐに気が付いたわけではないし、その下げ幅がどの程度かという感覚を身につけるのにもそれなりに時間はかかった。こればかりは、経験者でなければ、絶対にわからない感覚だと断言してもいい。

経験したこともない者が、当事者に直接取材することもなく、他人のノウハウについてあたかも真実を語っているかのように発信する。そして、読者からお金を取る。こんな行為は、僕に言わせれば詐欺みたいなものだ。

少し毒づいてしまったけれど、誤解のないよう、これだけはここではっきりと言っておこうと思う。


ところで、ここで過去の「回収率」と「利益額」を公開したのは、その数値を単に自慢したいからとか、そんなゲスな理由ではない。ここで付け加える「的中率」のデータと比較してもらいたいからだ。

先ほどのデータに「的中率」を加えると、だいたいこんな感じになる。

平成14年 的中率:26%  回収率:113 %  利益額:約 56 万円
平成15年 的中率:29%  回収率:126 %  利益額:約 330 万円
平成16年 的中率:33%  回収率:133 %  利益額:約 909 万円
平成17年 的中率:25%  回収率:105 %  利益額:約 1,875 万円
平成18年 的中率:28%  回収率:109 %  利益額:約 5,891 万円
平成19年 的中率:24%  回収率:106 %  利益額:約 1億2,190 万円
平成20年 的中率:26%  回収率:107 %  利益額:約 1億0,546 万円
平成21年 的中率:27%  回収率:114 %  利益額:約 2億0,792 万円
平成22年 的中率:20%  回収率:105 %  利益額:約 5,565 万円


このデータからわかるのは、もっとも的中率が高かった平成16年でも、概ね3レースに1レースしか的中しておらず、もっとも的中率が低かった平成22年などは5レースに1レース程度しか的中していないということ。

では、なぜこんなに的中率が低いのに、毎年、安定的に多額の利益が出ているのだろうか?


もちろん、このような結果が導き出されるのには、明確な理由が存在する。

それは、ここまで詳しく説明してきたように、僕の馬券戦術が、購入点数を極限まで絞り込み「無駄馬券」を買わないことを徹底するものだからにほかならないのである。

改めて確認しておくが、目標は、あくまでも100%を上回る回収率を達成すること。

だから、3レース連続不的中が続いたからって、僕はまったく気にしない。さすがに10連敗もすれば、少しは動揺もするのだけれどね……。


こんなふうに生データも用いながら説明してみると、僕の馬券戦術が、冒頭で書いたような「肉を切らせて骨を断つ」ものであることがわかってもらえると思う。

ザックリ言えば、「3レース不的中が続いて『肉を切られて』しまっても、4レース目の的中で『骨を断って』やればいい」。そういうことだ。

しばしば競馬評論家が推奨するような"とにかく目の前のレースをあてようとして、あれこれと『押さえ馬券』を購入する"という方法では、「気づかぬうちに少しずつ肉がはぎ取られていって、気がついたら骨までバッサリ断たれていた」なんてことになりかねない。

必要以上に目先のことに気をとられ、「馬券をあてること」ばかりに注力してしまっているようでは、年間回収率100%超えなど夢のまた夢なのである。


ところで、ほかの馬券裁判例にも目を向けてみると、僕とは明らかに異なる馬券戦術によって、利益をあげている事例がいろいろと存在することがわかる。だから、僕の馬券戦術こそが、競馬で利益を上げるための唯一無二の方法だなんて、口が裂けても言わない。

他の馬券裁判当事者の方々が、実際にどのような馬券戦術を採っていたのか、その詳細を知る術を僕は持ち合わせていないけれども、ひとつだけはっきり言えるのは、不断の努力によって生み出された馬券戦術には、一般の競馬ファンのアプローチとは一線を画した独自のノウハウが必ず存在するということ。

もしあなたが、年間回収率100%超えを本気で目指そうとするなら、一般の競馬ファンとの差別化が可能な、自分に合った馬券戦術を見つけることが何よりも優先されるべきなのではないだろうか。


ちなみに、僕が実践していた馬券戦術は、その戦術を完全に自分のものにしようとすれば、相応の時間がかかることは否めない。即効性に乏しいと言えばまさにそのとおりであり、見ようによっては、その点が唯一のデメリットであるとも言えるかもしれない。

一方で、この戦術は、競馬の本質に切り込んでいくスタイルを採っているため、極めてアナログ的な手法でありつつも、好不調の波が小さく、年間ベースで見ればかなり安定的な成果を期待できる。この点は、特に強調できる部分であると言えるだろう。

さらにもうひとつの強調点は、100円単位の少額の馬券購入でも、この戦術は何の問題もなく活用できるところ。「ある程度のまとまった軍資金が無いと使えない」とか、そんな制約も一切ない。

何を隠そう僕自身が、まとまった軍資金など持ち合わせていない状況から、実際に競馬をはじめたわけだからね。


最後の最後にこんなことを言ってしまっては身も蓋もないのだけれど、もし読者の皆さんがすぐに僕の馬券戦術を採用したとしても、年間回収率が100%を超えるところまで、すぐには到達できないかもしれない。

その理由は、「指数」や「法則」とは違って、既存の方程式に当てはめて購入する馬券を決めるのではなく、いろいろと自分自身で判断しなければならないことが多いから。そのことは、皆さんにも、ちゃんと理解しておいてほしいと思う。

けれども、僕の馬券戦術を採用することで、皆さんの年間回収率は少しずつでも目に見えてカイゼンしていくことだろう。だって、このマガジンの内容をしっかりと読み込んでくださった競馬ファンの皆さんなら、「無駄馬券」に投資する金額が確実に減っていくことだけは間違いないはず。よっぽど予想力に問題がある場合を除けば、むしろ一定の成果が出ない方がおかしいのだ。

現実には、あっという間に年間回収率が100%を超えてしまう人も現れるかもしれないし、牛歩の如くゆっくりとしか数値がカイゼンしない人もいるかもしれない。それでも、自身の実力UPを誰もが実感できることだけは間違いないと僕は信じている。この点だけでも、やってみる価値は十分というものだろう。


読者の皆さんには、是非、本マガジンに掲載したノウハウを活用してもらって、競馬を楽しみながら馬券収支の向上を目指してもらいたい。

僕は、心からそう願っている。


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!


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