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第166回 天皇賞(秋)の回顧

ちょっと複雑な気持ちはありますが、まずはパンサラッサの大逃げによって世間的にレースが盛り上がったのは、非常によかったな、と。

あのゴーステディでの逃げ争い大暴走事件が2003年の出来事でしたから、あれから19年、2着には敗れはしましたけど、吉田豊Jにとっても溜飲を下げる好走になったのではないでしょうか。

では、早速、レースを振り返っていくことにしましょう。

東京11R 天皇賞(秋)


まずはじめに全体のレースラップを振り返っておくと、12.6 - 10.9 - 11.2 - 11.3 - 11.4 - 11.6 - 11.8 - 11.6 - 12.4 - 12.7ですから、パンサラッサは自分の競馬をやり切って、現状の力は最大限出し切れた。そう評価していいのだと思います。

その上で、この1:57.5という勝ち時計はハッキリ言って遅いですし、勝ったイクイノックスからしんがり負けを喫したバビットまでが、たったの1秒2差だったことを見ても、レース総括という意味で言えば、期待外れの大凡戦に終わったというのが正しい見方なのでしょうね。


さて、そうなった原因について、ですが、端的に言えば、「後続のジョッキーがヘタレだった」と総括するほかないのでしょうね。

「戦犯」という言い方が適切かはわからないですけど、このレース全体のレベルを下げ、自身が騎乗するジャックドールも力を出し切れずに終わった藤岡佑Jが、少なくとも「逆シリーズ男」ならぬ「逆天皇賞男」であったことは間違いありません。

ジャックドールが、GⅠウィナーになれる条件が「これでもか!」と揃った中で、日和ったレースをしてキレ負けしているようでは、はっきり言って目も当てられませんし、そうなることをあらかじめ予期していた当研究所視点で見ても、あまりにもお粗末な騎乗だったな、と。

ここ最近の藤岡佑Jは、かつては魅力的に映ったカドが取れてしまって、平凡なジョッキーに成り下がってしまった印象もありますから、たった一度の騎乗ミスというよりは、今の彼の限界を示したレースになってしまったような気もします。

もちろんこれは、個人を対象とした誹謗中傷などではなく、奮起を促したいという想いも込めての苦言なのですが、藤岡佑Jには、この敗戦の責任が馬にあるのか、それとも自分にあるのか、その事実をしっかりと検証し、今後のV字回復に向けた起爆剤にしてほしいな、と。


さて、いろいろあった今年の秋の天皇賞ですが、勝ったイクイノックスのパフォーマンスには、いっさいケチをつける理由は見当たりません。

レース序盤は脚を溜めるしかないこの馬にとっては、ペース云々に関係なく自分にレースに徹するしかないわけで、その中においては、これ以上ない最高のパフォーマンスを見せられたんじゃないか、と。

おそらく、ですが、もっと速い流れになっていれば、勝ち時計は秒単位で詰まったはず。心配された仕上がりの面もまったく問題ありませんでしたから、今後に向けて、という面も含め、素晴らしいGⅠ勝ちになったのではないでしょうか。

その上であえて付言しておくと、ジャックドールにまともな競馬をされていたら、この馬はまたしても2着という結果だったでしょうし、その点、「人気馬に騎乗したジョッキーたちに軒並みミスが出た中で、ルメールJが完璧なレースをして勝ち切った」という事実だけは、一応、おさえておく必要がありそうですけど。


2着のパンサラッサは、自分のレースをやり切っての2着ですから、これ以上ない素晴らしいパフォーマンスを示せたと思います。

変に日和ることなく、序盤からガンガン飛ばして見せ場をつくった吉田豊Jの騎乗ぶりも、まさにブラボーでしたね。


3着ダノンベルーガは、本当に惜しいレースになってしまったな、と。

勝ち馬との差は、ほぼコース取りの分だけ、という感じでしたから、馬のほうは、こちらの期待に応える見事な走りを見せてくれたと思います。

ただし川田Jに関しては、前日のリバティアイランドでの取りこぼしに引き続いてのコース選択ミスですから、トップジョッキーの2日続けての致命的なミスという点では、一定の批判は免れないでしょう。


4着ジャックドールは、このヘタレな競馬で4着ですから、「ジョッキーがまともな競馬をしてくれていたら……」と悔やんでも悔やみきれない敗戦となってしまいました。

個人的には、今回の枠の並び、レースの流れでは、別のジョッキーが乗っていれば10回に7回はこの馬が勝っていただろうと考えていますので、この敗戦をもって馬に対しての評価を下げる理由は一切ない。そう考えます。

ものすごく極端な言い方ですけど、今回、今村Jがこの馬に乗っていたら、おそらくGⅠ初勝利を挙げていたんじゃないか、と。それくらいの感触ですからね。


5着シャフリヤールは、はっきり力負けでしょう。

結果論、「この馬、本当に強いの?」という私の直感は当たっていたわけですけど、そのことを踏まえて言えば、相手次第にはなりますがジャパンカップでの巻き返しを期待するのもどうかな、とはなってきますね。


6着カラテは、このスローな流れにお付き合いしてしまっては、キレ負けするのも致し方ないと思います。ただ、結果的に内枠がアダとなった格好なので、鞍上のエスコートは責められませんね。

7着マリアエレーナは、2コーナーでノースブリッジに体当たりを喰らって行きたがったのがすべてでした。あそこがスムーズだったら、仕掛けどころを含めてまったく違うレースになっていたでしょうから、今回に関してはちょっと運がなかったな、と。


いや~、個人的な読みは悪くなかったんですけどね。

今年のGⅠは、あとちょっとのところで噛み合わないレースが続きますが、みどころ解説の内容は及第点以上だと思いますから、その点だけはよかったのですけれど……。

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