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第82回 菊花賞の回顧

いろいろと忙しくしていて、回顧記事をアップするのが遅れてしまいました。ゴメンナサイ!

さて、強風が吹き荒れた前週とは打って変わり、好天に恵まれた阪神競馬場。トラックバイアスに大きな変化はありませんでしたが、やはり風がおさまった影響は大きく、秋華賞のように極端に上がり時計がかかるレースになりませんでした。実際に後半1,000mのラップが、12.4 - 11.7 - 11.5 - 11.4 - 12.2ですから、それこそディープインパクト級の馬でもなければ、「後ろからズドン」は厳しい馬場だったと思います。


個人的には、オーソクレースに一角を崩される形にはなってしまったのですけれど、見どころ解説で最初に名前を挙げた4頭のうち3頭が1,3,4着なら、最低限の仕事はできたのかなと思っています。勝つ確率がもっとも高いのはタイトルホルダー、馬券圏内の可能性という意味ではディヴァインラヴ、この予想も的中はしましたからね。

とは言え、予想がどうこう以上に、横山武Jが胆力のある騎乗を見せてくれたことや、ディヴァインラヴが最後スタミナ切れを起こしてフラフラになりながらも3着を死守したことに、大きく心を動かされました。全体時計も優秀だと思いますし、とても内容の濃い素晴らしいレースになったことが、なによりもうれしかったな、と。


勝ったタイトルホルダーは、横山武Jが覚悟を決めてハナに行ったことが、結果的には吉と出た格好になりました。

もしワールドリバイバルの津村Jが、絶対にハナを譲らないという姿勢で突っ張ってきたら、おそらく共倒れは必至だったでしょうから、ある意味、非常にリスクが大きい作戦だったとは思います。正直、見ているこちらも、ゲートからの1ハロンほどは、ヒヤヒヤしながら両者の攻防を観ていたくらいですから……。

その反面、いわゆる自称「競馬評論家」が増殖し、結果を見てからあれこれと批判されることが多くなったこの世の中では、こういったリスキーな作戦を実行に移すのはとても勇気が要ること。若さゆえに実行できたと言えばそれまでですが、批判を恐れず、自らが最善と考えた作戦を見事にやり遂げた横山武Jには、最大限、称賛を拍手を贈りたいですね。


もちろん馬のほうも、中盤でうまく息が入ったとはいえ、前半の3ハロンを12.5 - 11.1 - 11.5で入って、最後までしっかりと脚を残せたのは地力以外の何物でもありません。マイラー色が強いドゥラメンテ産駒でも、母系から受け継いだスタミナがここ一番で生きた印象もありますし、厳しい展開にさらされた皐月賞で2着を死守した底力は、やはり伊達ではなかったということでしょう。

キャラ的に、どうしても追っての味に欠ける点は否めないですけど、この先、スイートスポットの狭い個性派としての活躍は期待していいように思います。今回も、なぜか単勝オッズが4番人気であったように、基本は人気になりにくいタイプ。自分の形に持ち込めず、1回、2回と凡走を繰り返しても、すぐには評価を落とさないで、条件が合致するレースで自信を持って狙い撃つ。今後は、この馬とそんな付き合い方ができたらいいですね。


2着のオーソクレースは、馬体の張りが戻り、こちらの想像以上に体調面は良化していました。それでも、やはり大外枠の不利はありましたし、特に展開が向いたわけでもない中、2着まで突っ込んでくるのですから、この馬、やはり地力が高いですね。

もともと、昨年暮れのホープフルSでタイトルホルダーには先着しているわけですし、素質的にここで通用することは明らかだったわけですが、大幅な体調良化と距離適性の部分は、完全にこちらの読み違い。この馬としては、力通りに走って、力通りの結果を得たとシンプルに理解すべきでしょう。2着でも、非常に見事なパフォーマンスだったと思います。


3着ディヴァインラヴは、これはもう完全にこちらの期待どおりの走りをしてくれましたね。福永Jも、好位の完璧なポジションを早々に確保して、じっくりと脚を溜めるレースができていましたから、タイトルホルダーを脅かすところまでは行かず、最後の追い比べでオーソクレースに見劣るという結果になっても、これはもう120%実力を出し切ったものと受け止めるべきだと思います。

大一番での堂々たるレースぶりももちろんですが、菊花賞への挑戦を決めた陣営の決断も見事。結果は3着でも、今年の菊花賞を大いに盛り上げてくれた影のMVPは、間違いなくこの馬だったのではないでしょうか。


4着ステラヴェローチェは、やはり地力がありますね。体調面、適性面、展開面、どれをとってもマイナス要素ばかりが目立つ状況下でのこの結果は、本当に見事というほかありません。形的には、人気を裏切った格好になってしまいましたけど、個人的には、あらためてこの馬の底力を再認識することになりました。

ただしこの馬、共同通信杯を除くここまでのレースでは、本当にすべてがうまく行き過ぎていたと思うのですよね。本来、こうした不器用な面が目立つタイプはもっと取りこぼしが多いはずですから、噛み合えば強い相手にも互角に戦えるけれど、噛み合わないと格下相手にも簡単に取りこぼす。今後は、そんなタイプの馬になっていくような気がしています。


5着ディープモンスターは、臨戦過程を考えれば、よく走っているとは言えるでしょう。ただ、大きく成長した感じもありませんでしたし、基本は人気先行のタイプですから、今後は、決して狙い過ぎることなく、評価控え目を基本にして上手に付き合っていくべき馬なのかな、と思っています。

6着ヴェローチェオロは、やはり前走の勝ちっぷりは伊達ではありませんでした。距離も思った以上にこなせましたし、展開が向かない中でも、この馬なりにいい走りはできていたな、と。この内容なら、いずれGⅡ,Ⅲのハンデ戦くらいなら好勝負できそうな気もしますね。ただ、脚質面での信頼度が低い分、われわれ競馬ファンの側に、狙いどころを見定める眼力が求められるのは確かでしょう。


13着レッドジェネシスは、パドックで発汗し、かなりイレ込んでいましたから、レース前の時点で終わっていたと考えるのが妥当なんじゃないかと思います。ただし、レースラップを振り返ってみれば、たとえこの馬が完調で出走できていたとしても、2着争いに絡んでこられたかは非常に微妙だな、と。道中で川田Jが動きを見せなかったのは確かに意外でしたが、いずれにしても今回は、最初から八方塞がりだったと総括するのが正しい。個人的には、そう考えています。

ところで、レース後の川田Jのコメントを報じたネット記事に関し、なんだかずいぶんとコメント欄が荒れているようでしたが、この敗戦は、この馬を上位とほぼ差のない3番手評価とした自分としても、想定の範囲内の結果。悔しい気持ちはわからなくないけど、馬券を外した責任をジョッキーにおっかぶせるような競馬ファンが多数派を占めているうちは、競馬界全体のレベルアップは望めません。その意味で、川田Jに対し誹謗中傷とも取れるコメントがネット上に数多く見られる状況は、非常に残念でなりませんね。


さてさて、個人的には、菊花賞は今年も印象深いレースになりました。

前日にアップした見どころ解説記事を参考にしてくださった方で、オーソクレースが抜けて完全に馬券を取り逃がしてしまった方には大変申し訳なく思いますけど、この能力比較が非常に難しいと言われるレースで、高い精度のレースシミュレーションができたことには、非常に充実感があります。

秋のGⅠシリーズはまだまだ始まったばかりですから、この先も、皆さんに少しでも有用な情報・解説をお届けできるよう、努力していきたいと思います。引き続き、「本気の競馬力向上研究所」及び「競馬なんでも相談室 ~あなたに必要な処方箋、ここにあります~」をどうぞよろしくお願いいたします。



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