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第84回 菊花賞のみどころ

本日も多忙につき、やむを得ず全出走馬解説はお休みとし、通常モードでのみどころ解説となります。内容は通常よりも充実させますので、どうかご了承くださいませ。


京都11R 菊花賞


まずはじめに、牡馬現3歳世代の力関係を振り返っておくことから始めましょう。


皐月賞、ダービーは、着順こそ入れ替わりがあったものの、ソールオリエンスとタスティエーラがそれぞれのレースで1,2着を分け合う形に。よって、このことだけを前提に考えるのであれば、今年の菊花賞はこの2頭が不動の中心的存在になると評価する論調が一部にあるのも、当然うなずける話ではあります。

しかしながら、皐月賞4着のメタルスピードは、秋になって2勝クラスのレースで2戦続けて人気を裏切る形となりましたし、日本ダービーは14着トップナイフまでがわずか1秒差の中に凝縮する大混戦で勝ち時計もいたって平凡でしたので、はたして今年の皐月賞、ダービーの着順をどこまで真に受けていいのか、ひどく迷わされる状況にあるのもまた事実。そんな気がしてなりません。


つまり、皐月賞、ダービーの着順を軽く受け流すわけにはいかないけれども、一方でひと夏を越して舞台設定が大きく異なる菊花賞というレースにおいては、春の力関係が根っこからゴロンとひっくり返ってもまったく驚けないのではないか、と。

実際、トライアルのセントライト記念1着馬と神戸新聞杯の2着馬は、春のクラシック不参戦組でしたし、こうした客観的な事実をシンプルに積み重ねていけば、「枠順や展開などのちょっとしたところでほんのわずかな想定外が起こっただけで、上位人気馬が揃って圏外に消え去る」とパターンも、大いに想像しておくべきなのかなと思ったりもするわけでして、、、

ただし、セントライト記念勝ちのレーベンスティールはデビュー戦でソールオリエンスの僅差2着でしたし、神戸新聞杯2着のサヴォーナは、3月の阪神ゆきやなぎ賞でサトノグランツとクビ差の接戦を演じていたわけで、人気面はともかく、過去に実績面で裏付けのあった馬がトライアルを好走してきたという事実は、しっかり押さえておかないといけませんが……。


次に、展開と道中の並びを推察してみます。

この枠の並びであれば、ゲート五分を前提に内目の枠から注文をつけてパクスオトマニカがハナを主張していくのではないでしょうか。

この馬は、ダービーの時も隊列が決まりかけたところで外から強引にハナを奪って行ったくらいですし、となりのリビアングラスはテンのダッシュ力が特に優れているタイプでもありませんので、スタート五分ならパクスオトマニカがなんとかハナを取り切ることはできるのかな、と。


そうすると、リビアングラスが無理せず引いて番手の位置に収まる形になるでしょうから、この形になると、パクスオトマニカが瞬発力勝負になるのを嫌って大逃げにでも持ち込まない限り、前半からタイトなペースで流れるイメージはあまり湧いてきません。

仮にそうだとすると、道中で馬群がかなり密集した形になることも想定され、やはり枠順の有利不利は、それなりに結果に反映される可能性は少なくないとも言えるでしょう。

ただしそうは言っても、外枠に入った川田JやルメールJが、「座して死を待つ」消極的な乗り方をするとも思えませんので、道中で一気にレースが動く可能性も捨てきれず、結局のところこのあたりをどう考えるかに関しては、事前にあまり深読みしすぎないほうがいい。あくまでも個人的見解ではありますが、現状はそんなふうに考えているところでもあります。


以上、こうして今回の出走メンバーを多角的に考察していくと、春のクラシック出走組に関しては、当時の着順に関係なくほぼ全馬にここで勝ち負けをする可能性があると言っても過言ではないのでしょう。

また、他路線組と言っても、クラシック出走組と未対戦の純然たる上がり馬はドゥレッツァただ一頭であり、そのドゥレッツァも、サトノグランツを負かした未勝利戦がここでの評価を決めるひとつのヒントにはなるわけですから、「馬券圏内に絡んできそうな馬を探す」という視点で言えば、ノーチャンスと断言できるような馬は、今年は出走馬中にただの一頭もいない。そう結論づけていいのかな、と。


ということで、今年の菊花賞は上記で述べたようにどの馬にもチャンスがある大混戦模様となっていますので、最後は自らの感性を信じ、ここから有力馬を絞り込んで行くことにします。

まずは、タスティエーラ、トップナイフ、ノッキングポイントを除き、前走でトライアル戦を使ってこなかった馬たちの評価から。

ポイントになるレースは、ドゥレッツァが勝った日本海ステークスと、リビアングラスが勝った阿賀野川特別。実のところこの2レースは、同じ週に新潟競馬場で行われ、道中のラップ構成に多少の差はあれど、勝ち時計は似たり寄ったりなんですよね。

今年の3歳牡馬世代のレベルであれば、「ハイレベルの2勝クラス戦を勝ち切った馬は、菊花賞でも十分に通用する」という図式を適用しても大丈夫でしょうから、この理屈に当てはめるのならば、ドゥレッツァ、リビアングラス、そして阿賀野川特別で僅差の2着したウインオーディンの3頭に関しては、少なくとも「菊花賞で馬券圏内を賑わず資格がある馬」と評価していいように思います。


続いてトライアルからの参戦組に関しての評価ですが、セントライト記念組からは、2着ソールオリエンスと6着ウインオーディンの双方を圏内扱いとすべきであると考えており、神戸新聞杯組からは、1着サトノグランツ、2着サヴォーナ、5着ハーツコンチェルトの3頭に馬券圏内のチャンスがある。そう考えていいのかな、と。

そうすると、ここまでの評価で篩の上に残っているのは、ドゥレッツァ、リビアングラス、ウインオーディン、ソールオリエンス、サトノグランツ、サヴォーナ、ハーツコンチェルトに、ダービーから直行で使ってくるタスティエーラ、夏に古馬との混合重賞で好走してきたトップナイフ、ノッキングポイントを加えた10頭ということになります。


さて、今年の菊花賞は、ここからさらに篩にかけていく作業が非常に難しいわけですが、結論を出すにはそうも言ってはいられません。

ここからは、各馬の距離適性のほか、枠の並びや展開、そこに状態面を加味しつつ、消去法を適用しながら一頭一頭絞り込んで行くしか良い方法がみつかりませんので、このやり方が正しいのかどうかはなんともですけど、そこは自分を最後まで信じて……ということになります。


でもって、次にこの10頭の中から断腸の思いで選外扱いにしたのは、ソールオリエンス、タスティエーラ、リビアングラス、トップナイフ、ノッキングポイントの5頭。

ソールオリエンスに関しては、右回りではコーナーでスムーズに加速できない馬ですので、京都の4コーナーを勢いをつけつつロスなく回ってくるのはおそらく難しい。そう決めつけて消すことにしました。距離適性的にも、この馬のベストは二千前後であると考えてもいますので。

タスティエーラに関しては、立ち回りのうまさで皐月賞、ダービーと好走を続けてきましたけど、正攻法の競馬で最後の伸びを欠いた共同通信杯のレースを振り返ってみると、京都の3,000mという特殊な舞台でこの馬の持ち味が生かされるイメージが湧かなかったのですよね。

リビアングラスは、とにかく一瞬の切れる脚がないので、やはり逃げる形がベストであると考えており、今回はマイペースの逃げに持ち込むのは難しいであろうという想定の下、力的には通用していい馬であることを理解しつつも、今回はベストパフォーマンスまでは期待できないと判断しました。

トップナイフは、切れる脚こそないものの、常に人気以上に走ってくる異端児という印象ですが、気になるのは前3走ですべて出遅れていることなんですよね。好スタートを切って好位のインを確保できたら怖いですけど、最内枠を引いた今回、再度出遅れたとしたら……とはなります。よって、前走の札幌記念2着は大いに評価すべきと考えつつも、今回はスタートで終わっちゃう可能性のほうを支持することにしました。

ノッキングポイントは、今年に入ってからの精神面の成長が大きく、常にこちらの想定以上に走ってくる印象ですが、京都の3,000mが舞台になる今回に関して言えば、「さすがにどうなの???」とはなります。


さてさて、これでいよいよ残りは5頭となりました。

まあ、この先は無理矢理順番を付ける必要もない気がしますけど、なんだかんだ言っても菊花賞という権威あるレースですので、最後までリスクを負って突き詰めて行くことにしましょう。


中心には、②ウインオーディンを推します。

この馬を抜擢したのは、前々走、阿賀野川特別2着のレース内容を高く評価しているから。あのレース、逃げたリビアングラスが道中でペースを落とし過ぎず、淡々と絶妙なラップを刻んでいましたので、追い上げる後続勢にとっては、かなりタフなレースになっていたと思うのですよね。その中で、勝負どころで外に出し、自らリビアングラスを追いかけて行きながら最後までバテずに脚を使えたということは、間違いなく淀の3,000mをクリアできるだけのスタミナが備わっていることの証し。個人的にはそのように捉えているところです。

もちろん、鞍上面や関西への輸送など、心配な要素もてんこ盛りではあるのですけれど、死角が多いのは何もこの馬に限ったことではありませんし、前走のセントライト記念ではソールオリエンスに完敗という結果でしたけど、当時とは求められる資質がまったく異なる今回の舞台なら、逆転も不可能ではない。最後はそう判断しました。


2番手は、⑧サヴォーナ

この馬は、前走を人気薄で好走した格好となりましたが、中心視していたこちらからすれば、概ね順当な好走劇だったという評価になります。

こちらは、スッと先行できてそこからひと脚使える点が何よりもの魅力なわけですけど、この秋の池添Jを見ていると、神戸新聞杯のこの馬も、京都大賞典のプラダリアも、意識してインのポケットの位置を取りに行った印象があって、ここも序盤にインの好ポジションを確保し、そこで動かずにジッと脚を溜めるという競馬をしてきそうな点は、馬のキャラクターと合わさってとても魅力的。そう考えて、この位置に置くことにしました。


3番手は、⑪サトノグランツ

サヴォーナを2番手に評価するなら、この馬だって……ということには当然なります。実際、「淀の3,000mという舞台はこの馬にピッタリ」という印象もあって、今回もまた、この馬がサヴォーナに先着するという帰結があってもいいのは間違いないでしょう。

ただ、それを承知で一列評価を下げたのは、長距離戦の川田Jは、道中で無駄に動き過ぎることが多く、その点が気がかりだから。前走のように、最後の最後に脚を使う形ならいいのですけれど、ここは外を回して自分から勝ちに行くレースを選択しそうな気がしますので、そうなった時に、終いがジリジリにならないかという心配をどうしても拭い去ることができなくて、、、


4番手は、⑫ハーツコンチェルト

この馬に関しては、「力はあるが不器用」という一般的な評価に対しこれと言った異論はありません。前々走のダービーも、前走の神戸新聞杯も、間違いなくこの馬が一番キツイ競馬をしているわけで、それを踏まえれば「今度こそ!」という考え方も成立するわけですが、「不器用な馬に小細工ができない松山J」という組み合わせは今回も一緒ですから、またしても似たり寄ったりのレースになってしまって、似たり寄ったりの着順に落ち着く。そんなシーンがどうしても頭に浮かんできてしまって……。

まあそれでも、少しでもハマればこの馬が勝ち切ってもいいのは確かですので、最後のひと枠にはこの馬を採ることにしました。


なお、ドゥレッツァを選外としたのは、どうしてもこの馬に3,000mへの適性を見いだすことができなかったから。サトノグランツを差し切った未勝利戦ゴール前の映像を見直してもらうとわかるのですが、「寸が詰まって背丈も低いのがこのドゥレッツァ、対して胴が長くフットワークが大きいのがサトノグランツ」というコントラストが鮮明に浮かび上がってきますので。

もちろんこれが中距離戦なら話が別で、迷いなくドゥレッツァを中心視したと思うのですが、今回の舞台で大外枠を引いてしまっては、ルメールJが最大限にうまく乗ってもサトノグランツに先着するのは難しいのかな、と。






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