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第83回 菊花賞のみどころ

明日は、阪神競馬場で菊花賞が行われます。

今週も全頭解説などを通じて、先週に引き続きレースの全体像にしっかりと迫れたらいいですね。

では、早速、レースのみどころについて解説していくことにしましょう。


阪神11R 菊花賞


はじめに、今年の3歳牡馬のレベルについて、簡単におさらいをしておくことにしましょう。


まず、春のクラシック戦線を簡単に振り返ってみると、皐月賞は枠順やトラックバイアスの影響が大きかったので、レースを俯瞰して見ると、上位の着順はあまり参考にならない大混戦だったという評価でいいと思います。

一方のダービーは、序盤からペースが流れた分、好時計決着にはなりましたけど、実質マイラー寄りのキャラクターであるドウデュースが勝ち切ったことを含めて考えると、離された5着以下だった馬たちは、率直に言ってそこまでのレベルではなかったのかな、と。


次に、各ステップレースの結果を振り返っておきましょう。

セントライト記念は、春のクラシック組1頭と、2勝クラスの身で挑戦した馬2頭での決着。

神戸新聞杯も、春のクラシック組1頭と、3勝クラスの身で挑戦した馬1頭、2勝クラスの身で挑戦した馬1頭での決着となりましたから、一歩引いて見ても、そこまでハイレベルだったとは言えない。そう理解しています。

ただし、セントライト記念の1,2着馬は、長く脚を使って及第点の時計で走れていますし、神戸新聞杯の勝ち馬は、秋の中京芝2,200m戦としては満足のいく時計で走れていますから、少なくともこの3頭に関しては、本番でも勝負に絡んで来られるだけの裏付けがすでにある。そうも言える気はしますね。


今度は、いわゆる上がり馬についても、ここで簡単に触れておくことにしましょう。

例年、菊花賞本番でも通用する上がり馬に共通するのは、2勝クラスのレースで強い相手に完勝した実績があること。過去2年を振り返ってみても、一昨年2着のアリストテレスは、ステップレースとなった中京の小牧特別で後の重賞好走馬を力勝負で退けていましたし、昨年3着のディヴァインラヴは、中京の木曽川特別で今や長距離重賞の常連ともなっているマカオンドールを負かしていました。

ただ今年に関しては、各トライアルレースで条件馬がそれぞれ2頭ずつ、馬券圏内に喰い込んだ事実を見てもわかるとおり、本番で通用するために必要となる実績のハードルは、例年よりも大きく下がっているようにも思えます。

つまりレースレベルに関係なく、すでに2勝クラスを勝っている馬なら、ここでも通用の可能性がある。そう考えていいのでしょう。


さて、どうでしょう。

今年は"乱菊"なんて表現が使われるほどの大混戦と一般的に見られていますが、少なくともその見立てに大きな誤りはないように思われます。メンバーをパッと見渡しても見ても、極端に言えば「全馬に勝つチャンスがある」と言っても過言ではないくらいですからね。

そう考えると、各馬の距離適性はもちろんですが、道中の立ち回り次第で大きく着順が違ってくるとも言えますから、馬券の的中に一歩でも近づくためには、「ジョッキーの作戦面をどこまで読み切れるか」が非常に大事な要素になってくる。そんな言い方ができそうです。


ではここから、全頭解説をはじめていきたいと思います。

①ガイアフォース
中距離馬という視点で言えば、すでに世代最上位の力を備えていることはほぼ間違いない。あとは距離。決してベストとは言えないこのレース条件を、好枠を生かしてうまく乗り切ることができるかどうかだろう。

②シェルビーズアイ
折り合い面の不安はなく、内枠、この距離ともに大歓迎。人気的にずいぶんと見くびられている印象もあるが、どうしてどうして、少なくとも半分くらいの馬を負かしてきそうな雰囲気は持っている。あとは、地力面で足りるのかどうか、そこだけ。

③プラダリア
長距離向き、阪神得意、有利な内枠と、好走できる条件は揃った。あとは、ポテンシャルの比較でどうか。青葉賞勝ち、ダービー5着とも、取り立てて強いという印象がなかった中で、今年のメンバーだとそれでも通用してしまうのかどうか。そこの判断が難しい。

④ボルドグフーシュ
すでに2勝クラスを勝っていて、前走もトライアルらしい脚を測るようなレースで3着なら、この馬にも「ハマれば……」の期待は十分。ただ、脚質が脚質なので、このレース条件で本当にハマるのかどうか、過度な期待まではどうかだが、、、

⑤ヤマニンゼスト
3走前の札幌戦、1勝クラス勝ちの内容が強く、前走は人気の盲点になっていただけで、決してフロックという内容ではなかった。ただし、ここに入ってのガチンコ勝負ではさすがにキツそうなので、「道中、うまく立ち回ってどこまで」という前走同様の競馬になりそう。

⑥ビーアストニッシド
この大一番で、岩田康Jが逃げ戦法に回帰してくるのかどうか、そこがレース結果に及ぼす影響は甚大だろう。キャラ的には、長距離でいいという感じもないので、ここ2走のように控える競馬を選択してくるなら、正直、あまり怖さは感じない。

⑦アスクワイルドモア
はっきり地力勝負では足りない馬だが、消耗戦に確かな実績がある点はこの馬のストロングポイント。大混戦ゆえ、他馬が揃って色気を持った乗り方をしてくるようだと、5月に行われた京都新聞杯同様、この馬にハマるシーンもゼロではなさそうだが、、、

⑧マイネルトルファン
レースぶりや血統背景から、このレース条件は歓迎だろう。さらに長距離戦に強い丹内Jが鞍上という不気味さもあるが、さすがに実績不足であることは否めない。「未知の魅力」が単なる妄想に終わるのかどうか、そこの判断がカギとなってくるだろう。

⑨シホノスペランツァ
長距離戦に実績があって、自在に動ける機動力があるのがこの馬の魅力。ボルドグフーシュあたりとは大きな力差がないので、浜中Jの「インで死んだフリ作戦」がハマれば、一発の可能性を否定はできない。

⑩セイウンハーデス
毎度、自分の力だけはしっかりと走っている印象のこの馬、裏を返すと一発の魅力に乏しいタイプであるとは言えそうだ。ただし、この条件で自爆のリスクが低いというのは、相対的なアドバンテージにはなりそうで、あとはそれでどこまで善戦できるかだろう。

⑪ドゥラドーレス
春は運に見放され続けてきたこの馬にとって、紆余曲折を経てようやく辿り着いたGⅠの舞台。ポテンシャルの高さは今さら言うまでもなく、あとはこの距離でも折り合いよくスムーズなレースができるかどうかだろう。

⑫ヴェローナシチー
ジリっぽくて、「最強の1勝馬」への道を歩み続けている印象もあるこの馬だが、それゆえ、このレース条件はフィットしそうなイメージしかない。過去に最強の1勝馬と呼ばれたシャコーグレイドやエタリオウとは、本質的な部分でキャラクターが異なるものの、「脚の使いどころがハマれば、相手が強くても上位進出は可能」という面は共通しているようにも思える。

⑬ディナースタ
後方待機からの向正面マクリ。この馬の動きが、勝負どころで大きくレースを動かすことだけは間違いなさそう。自身も前走で2勝クラスを勝っており、最低限の好走基準はクリアできているので、あとは相手が大幅に強くなったここで、はたしていつもの大味なレースぶりでも通用するのかどうか。そこだけだろう。

⑭アスクビクターモア
春の実績と前走のレースぶりから、ここでも主役候補の一頭になることは間違いないだろう。あとは、関西への初輸送、掛かるところのある馬の外枠、田辺Jの不安定なエスコート、長距離馬の育成実績に乏しい厩舎力など、さまざまな課題を克服できるかどうか。すべてはそこにかかっている。

⑮ポッドボレット
春シーズンの対戦相手を振り返ってみると、ここでもポテンシャル面で足りないという印象はまったくないので、このレース条件で、スンナリと先行する自分の競馬ができるのかどうかだろう。あとは、このところの坂井瑠Jのレースパターンを踏まえると、ゲートからかなり積極的に出していく形になりそうなので、それがレース全体にどのような影響を与えることになるのか。そこも注目点のひとつになりそうで……。

⑯フェーングロッテン
ブリンカーを着用以降、一気に成績が安定したこの馬。前走の新潟記念で古馬相手に好走した実績は、決して侮ることはできない。あとは掛かる気性のこの馬にとって、このレース条件での外枠を克服できるのかどうか。そこがこの馬の運命を大きく分けることになりそうだ。

⑰ジャスティンパレス
道中の完璧な立ち回りから、後続を一気に引き離した前走は掛け値なしの強さであった。レースぶりから、距離延長にはある程度対応できそうだから、あとはこの外枠の不利をいかにして最小限にとどめるか、そこがポイントになってくるだろう。

⑱セレシオン
今のところこの馬は、強いレースを見せる時と、思いのほか淡白なレースをする時の両極端なので、まだまだ本格化には至っておらず、その分底が割れていないと評価することも可能だろう。あとは、やはりこの外枠の不利がどう出るのか。福永Jのエスコート次第では、一発があってもおかしくないように思えるが、、、


さて、最後に個人的見解を。

このレースをシミュレーションする上での最重要ポイントは、道中の各馬の並びと、ディナースタのマクリがどの馬を利すると考えるのか、その二点になると考えます。

この大混戦の中で、道中外々とか、折り合いに苦労して馬とケンカしているようでは、わざわざ自らチャンスを潰しているようなものですから、まずはそうならないであろう馬をピックアップできるのかどうか。そこが今年の菊花賞では、予想の成否のカギを握ると思うのですよね。

あとは、仮にロスなく勝負どころを迎えることができたとして、そこから突き抜ける力があるのかどうか。予想を組み立てるプロセスとしては、この順番でいいのかな、と。


ということで、中心には⑪ドゥラドーレスを推します。

あくまでも個人的な見解ですが、もしもこの馬が完調でダービーを使うことができていたとしたら、最低限、勝ち負けだったと今も思っていますから、このメンバーに入れば、ポテンシャル最上位であることに疑いの余地はないと考えます。

さらに鞍上は横山武Jですから、道中でインに入れる意識は持って乗ってくれそうですし、そうなると、残るは折り合い面がどうかだけ。内に入れられずにガツンと行きたがったりしたら、正直、惨敗まであるとは思いますが、そのリスクは覚悟しないとこの馬を狙うことはできません。

よって、「大恥上等」というくらいの覚悟を持ちつつ、この馬のスペシャルなパフォーマンスが、最後の一冠が懸かったこのレースでいかんなく発揮されることを期待したい。今は、そんな心持ちです。


2番手には、⑫ヴェローナシチーを採ります。

このレース条件を考えた時、折り合いに不安がなく、大飛びでいい脚を長く使えるこの馬にピッタリなのは間違いありませんし、鞍上に追える川田Jを迎えたことも、この馬の好走確率を大きく上昇させるもの。そんなふうに考えています。

ディナースタのマクリでペースが一気に上がるところを、鞍上がいかにしてロスなくやり過ごせるかがカギにはなりますが、そこでひと呼吸おいてタイミング良く仕掛けることができると、この馬の持続力が如何なく発揮されるシーンを観られるのではないでしょうか。


3番手は、⑰ジャスティンパレス

この馬にとってこの外枠は痛恨ではありますけど、鮫島克駿Jならどこかの段階で必ず馬群の中に入れてレースをしてくれるはずですから、問題はどの段階で理想のポジションに潜り込めるのか、そこがこの馬に関する最大の関心事となります。

前走のパフォーマンスから、春と比べても力を付けていることは確かですから、レースの流れにうまく乗ることができれば、上位進出は必至。そう考えます。


最後4番手は、①ガイアフォースにしました。

この馬の高いポテンシャルには、以前から特に注目していたいましたし、ここまでの成績を振り返ってみても、概ねこちらの期待に応える成績は残してくれているな、と。ただし気になるのは、3走前に2着に敗れた時の敗因で、正直、今でもちゃんとは説明できないのですよね。

個人的な考えとして、「過去に説明のできない負け方をした馬を、大一番では中心視しない」と決めているので、ダービー3着馬を外からねじ伏せた前走の内容が優秀であること、枠順も最高のところを引けたことを併せて考慮しても、この位置に評価するのが精一杯だった。そんな感覚です。


さてさて、いったい明日はどんなレースになるのでしょうね。

もちろん、「全馬無事に!」が大前提にはなりますが、各馬が力を出し切る激しい戦いになることを、心底期待したいと思います。

その上で、ドゥラドーレスが春の悔しさを見事に晴らしてくれたら、最高の気分ではあるのですけれど。さて、どうなりますか。

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