絵が上手くなるために重要なこと Part2

Part1はこちら

Part1の記事では、絵が上手くなるためには"気付きを得る"こと、そしてその気付きを得たことで自分の中の認識がアップデートされるということを説明しましたね。

Part2では、より効率的に気付きを得るために大切なこと、そして自分の絵に反映していくという部分について詳しく書いていきたいと思います。

7. 効率的に気付きを得るためには

前回の記事で、練習や自分の作品作り、他人の作品を見る時に意識して気付きを得ようとすることが重要だと解説しました。

では、より多くの気付きを得るためにはどうするのが良いのか?

オススメなのは、『自分が描けないもの・苦手なもの』を調べたり練習することです。

絵を描いていて「ここが上手く描けないな」とか「このパーツ苦手だなぁ」と思うことってありますよね?そういった"壁"にぶつかった時こそ、新たな気付きを得る絶好のチャンスなんです。つまり、絵が上達するチャンスということです。

「描けないな」「苦手だな」と自分で感じている部分というのは、自分の中で今の認識がしっくりきていないという証拠。そういう時に資料を見て構造や比率を学んだり、何度も練習してみたり、他の人がどういった描き方をしているのかを見ることでたくさんの気付きを得ることができます。

自分の描けないもの・苦手なものにひたすら向き合うのがしんどい…という場合には「好きなもの」や「描きたいもの(描けるようになりたいもの)」について気付きを得るのも効果が大きくオススメです。

よりたくさんの気付きを得よう!と意識していても、人間はどうしても自分が興味のあるものに意識が向きます。この『興味のあるもの』というのは「好きなもの」はもちろんですが、実は「描けないもの・苦手なもの」もこれに含まれるんです。

たとえば、自分が描くのが苦手だと自覚しているものについつい目がいってしまった経験はないでしょうか?今描いているイラストの手が上手く描けなくて、仕事中もつい自分の手を観察していた…とか、髪の毛を描くのが苦手で、テレビを見ている時も無意識のうちにシャンプーのCMをじっくり見てしまっていた…などです。

つまり、より多くの気付きを得て自分の認識をアップデートするためには、自分の興味のあるもの(好きなもの・描けるようになりたいものや、描けないもの・描くのが苦手なもの)について資料を集めたり構造を調べたり他の人の描き方を観察したりすることが効果的ということです。

ちなみに、幅広くいろんなものに興味を持ち、今まで描いたことがないものに積極的に挑戦していくタイプの人はぐんぐん上達するように感じます。これは興味を持つ対象が広いことで、得られる気付きも多いということだと思います。

「自分の興味のあるものがよく分からない」という場合には、『今まで描いたことのないもの』にどんどん挑戦していくのも良いかもしれません。

8. 結局どの練習法が効率が良いのか?

この疑問はたびたび話題にあがったり議論がおこなわれたりしていますね。模写が良いという人もいれば、デッサンをやるべきという人もいたり。

私の解釈としては、『たくさん気付きを得られるのであればなんでも良い』です。

そもそもの前提として、「この練習をしたら〇〇が描けるようになる」というよりは「〇〇を描けるようになりたいからこの練習をする」という方が目的が明確な分、得られる気付きが多いように思います。

「〇〇を描けるようになりたいからこの練習をする」の方が、あらかじめその練習で得ようとする気付きの方向性が定まっています。すると、よりその〇〇について多くの気付きが得られます。これは先ほどの7章で書いた『興味のあるものの方が得られる気付きが自然と多くなる』ということと同じですね。

そう考えると、『練習』という手段があって『絵が上手くなる』という結果がついてくるというよりも、練習はあくまで『絵が上手くなる』という目的のための手段の一つであるとも言えるでしょう。

それは言い換えると『絵が上手くなるための手段は練習だけではない』ということでもあります。

練習以外にも、資料を見たり、勉強して知識をつけたり、他の人の作品に触れることや自分の絵と向き合うことによっても気付きは得られるからです。そう、たくさん気付きを得られるならなんだっていいんです。

絵が上手くなるためには手段にとらわれず「これを描けるようになるためにはどんな手段が有効か」ということを試行錯誤してみることが大切です。

9. 練習量と経験値は比例しない?

『絵は描けば描くほど上手くなる』それは正しいと思います。少しずつでも続けていれば気付きは蓄積されていくからです。しかし『描けば描いただけ上手くなる』かというと必ずしもそうではないと思います。

絵の上達スピードに個人差があるのはきっと皆さんお気づきかと思いますが、それは単純に描いた時間や枚数の差だけではないんです。

昔から何年も絵を描いている人よりも、ここ数年で描き始めた人の方が絵が上手いことって結構ありますよね。これは別に、後者の人が前者の人が費やしてきた時間以上の時間を短期間で捻出したというわけではありません。

じゃあその差ってどこ?と考えた時、たどり着いた答えは"気付きの量"でした。つまり得ている経験値に差があり、後者の人が前者の人のレベルを追い抜いたということです。

なにそれずるい、と思われるかもしれませんが、これは割と当たっているように思います。後者の人は絵の練習や勉強、自分の作品作り、他の人の作品鑑賞を通じて前者の人よりも多くのことに気づき、自分の中の認識をアップデートして自分の作品に反映しているのです。

後者の人は『要領が良い人』とも言えるかもしれません。でも「自分は前者かも…」という人も安心してください。ここまで読んでくださった方なら、気付きの量を増やすためにはどうすれば良いのかもうお分かりだと思います。これからは『気付きの量を増やす!』ということを意識して描き続けていれば経験値はどんどん増えていくはずです。

9. 自分の絵への反映は早い方が良い

ここまで『気付きを得る』ことと『自分の中の認識をアップデートする』ことを中心に解説してきましたが、この章ではサイクルの一番最後『自分の絵に反映する』ことを解説していこうと思います。

練習や勉強、自分の作品作り、他の人の作品鑑賞、あるいは写真や実物を見ることによって得られた気付きによってアップデートされた認識を自分の中で定着させるためには、できるだけ早く自分の絵に反映することが重要です。

そうやって自分の中のアップデートされた認識を自分の絵に反映して描いてみることで、「上手く描けたな」と思えば自分の上達を感じモチベーションも上がります。

しかし逆に「なんか違うな」ということもあるかと思います。そういう場合は「どこが違ったのか」「どうすれば上手くいくのか」を考え、再び資料を見たり他の人の描き方を調べたりするうちにまた新たな気付きが得られます。これは遠回りではなく「こういう場合は上手くいかなかった」という認識が自分の中に蓄積されることなので、悲観することはありません。

もしすぐに自分の絵に反映できる状態ではない場合には、メモを取ることも有効です。気付いたことを具体的にメモしておくことで、後からでも思い出しやすくなります。

10. 補足

『自分の絵に反映する』という言い方をしましたが、これは自分の得た気付きを自分の絵に反映するということで、誰かの絵をそのまま反映するということではありません。

ただし、丸パクリはだめですが、他の人の絵の描き方やニュアンスなどの要素に気付きを得て自分の絵に取り入れていくことはどんどんやって良いと思います。その際はできるだけたくさんの作家さんの絵から気付きを得て自分の絵に反映していきましょう。

1人の作家さんの絵からのみ気付きを得ていると、自分の中の認識がどうしてもその作家さんの中の認識と似てくる場合があります。大切なのは、たくさんの気付きを得て自分の中の認識をアップデートすることで、より自分の好み・理想の絵を表現するために必要な認識を選びそれを自分の絵に反映するということです。

時々「模写をしていたら自分の個性がなくなる」という人もいますが、私は自分の中の認識の中からどれを選び取って自分の絵に反映させるかが個性だと思っています。Part1で書いた例え話の『前髪に眉と目が透けている表現』で説明すると「私は透けさせた方が好き」「僕は透けてない方が良い」という風にどちらかを選び取ることで個性が出るのではないでしょうか。

11. 最後に

Part1、Part2と、絵が上手くなるために重要なことを長々と解説してきましたが、『絵が上手くなることがすべて』と言いたいわけではありません。

趣味で絵を描いていて、楽しいのが一番!上達なんて二の次!という方もいらっしゃるでしょう。もちろん楽しいことは大切です。上達ばかりを気にして、絵を描くのが嫌になってしまったらそれはとても悲しくてもったいないことだと思います。

ただ、絵を描いている人で『上達したくない人』というのはほぼいないのではないかと私は思っています。なぜなら、絵を描いている人というのはきっと、なにか描きたいものや表現したいもの、自分の理想がある人だと思っているからです。あるいは人に褒められたい、人を楽しませたい、というタイプの人もいるかもしれません。

つまり、なにか絵を描く目的があって描いている人がほとんどだと思っています。その目的を達成するために、今よりももっと絵が上達したいと思う人も多いのではないでしょうか。

また、絵が上手くなっていくこと自体に楽しみを見出している人もいるかもしれません。実際、絵を描いていて自分の上達を感じると嬉しいですよね。

この記事が絵を描いている方にとって、より楽しく有意義に絵を描き続けるためのヒントになれば嬉しく思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました。私自身も今後たくさんの気付きを得られるように精進していこうと思います。

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