元想細片/150407

●這いずり鳥(鳥)

 池というよりもむしろ沼地に近い泥池やその周辺に生息する鳥の一種。自らが泥まみれになりながらも全身で泥地を掘り返し、沼地に生息する虫や小魚などの小動物を食べて生きているようだ。
 基本的にいつも泥まみれの姿に興味をもった研究者がこの鳥を捕まえて水で洗ったところ、ごつごつとした羽根や妙な方向に曲がった足、ぎょろりと飛び出た目と、非常に不恰好な姿の鳥が現れたという。
 泥まみれで生活しているこの鳥は飛ぶ事がないので簡単に捕まえる事ができるのだが、泥まにまみれて痛んだ羽に利用価値はなく、またその肉は土臭く美味とは言いがたい。ただ、この這いずり鳥が産む卵をそのまま泥の中につけて熟成させたものは濃厚な旨みと独特の香りが強い珍味として、一部の食通には高値で取引される。が、醗酵臭とも泥臭さともいえない強いにおいは食べるものを選び、しかし一度その魅力に気づくとクセになるという。

※この「 #元想細片 」は、架空の品物を扱った百科事典風の読み物です。
 詳しい説明はこちらのページをご覧ください。

次回の更新は「ひ」で始まる月です。

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