元想細片/150612

●星屑吹雪(風)

 とある川のほとりにある町では、夏の終わりの夜にひやりと涼しい風が強く吹き続ける夜がある。その晩に空を見上げると、数え切れないほどの流れ星のような光のきらめきが風に乗って流れて行くのだという。
 川を離れた場所では風が吹いても光の粒は見えないことから、星空に本物の流れ星が出ているのではなく、川べりの空にだけ何かが飛んでいるのだろうといわれているが、川から吹き上がった水滴が飛んでいるのだとか、あるいは夏に飛んでいた虫の死骸が風に吹かれているのだとか、幾つかの説はあるが実際のところははっきりしていない。
 理由はともかく、非常に美しい風景であるため、この現象をひとめ見るために、時期をあわせて遠路はるばるこの町へやってくる旅人もいるようだが、決まった日に見られるというものでもないため、この星屑吹雪を見るには幸運か、あるいはそれなりの長逗留が必要なようである。

※この「 #元想細片 」は、架空の品物を扱った百科事典風の読み物です。
 詳しい説明はこちらのページをご覧ください。

次回の更新は「ま」で始まる花です。

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