アカウンティング(企業会計)の基本⑤:「減価償却」の理解は、こんなに簡単だった
前回は、財務三表のうちのC/Sについて書きました。
今回からは、少し「各論」に入った内容を、いくつか書いていきたいと思います。各論として、まず今回は「減価償却」について書いていきます。
そもそも、減価償却って何?
皆さんは、会社で「減価償却」という言葉を聞いたことがありますか?例えば、モノづくりをする製造業で働いている人だと、一度は聞いたことがあるかもしれません。自分なりに、一言で減価償却を定義すると「固定資産の価値を表す会計上の概念」となります。具体的にどういうことか、次に例を示しながら、説明していきます。
減価償却の例
例えば、個人で新車を 300万円で購入したとします。1 年後、その車を売却しようとしたとき、売値が200万円だったとします。これを言い換えると、1 年で100 万円分の資産を使用したため、資産価値が200万円に減少したということになります。この考え方を採り入れたのが 「減価償却」です。つまり、「“価”値が“減”っていく度合いに応じて“償却”(=整理 をつけていく)」ということです。
時間の経過とともにその価値が減少していくような「固定資産」は、価値の減少分を毎年計算し、固定資産の価値を修正(※)しなければなりません。その資産が使える年数(耐用年数)を算出し、その年数に応じて価値を減少(償却)していきます。
(※)P/L上では、毎年、費用として計上します。そして、B/S上では、毎年、固定資産の価値が下がります。例えば、製造業で使う「製品を作る装置」であれば、P/L上は減価償却費は「製造原価」として計上され、B/S上は、その分の固定資産(製品を作る装置)の価値が下がります。
減価償却で押さえるべきポイント
減価償却を考える際には、下記3つのポイントを押さえる必要があります。
耐用年数
減価償却の代表的な方法(定額法、定率法)
残存価値
耐用年数
耐用年数とは「何年かけて、取得した固定資産の価値を残存価値まで償却するか」という年数です。
耐用年数は、企業が任意に決めることができますが、税金を計算する際には対象となる資産の種類と資産ごとの耐用年数が税法で細かく規定されているため、多くの企業が税法で規定された耐用年数を用いて減価償却計算を行っています。
ただし、すべての固定資産が減価償却の対象となるわけではなく、土地は使用年数による価値の減少はないとみなされ、 減価償却の対象となりません。
減価償却の代表的な方法(定額法、定率法)
減価償却の代表的な方法として「定額法」と「定率法」があります。
固定資産価値の「実際の減少額」を毎年測定するのは実務上困難であるため、認められた減価償却方法を継続的に使って計算することが求められます。その認められた計算方法が、「定額法」と「定率法」です。
定額法
毎期一定額を償却していく方法です。
定率法
固定資産の耐用期間中、毎期期首における資産価値に一定率(償却率)を乗じた減価償却費を計上する方法です。
残存価値
最終的にいくらまで、固定資産の価値を償却するかという金額です。
平成19 年度税制改正において、残存価額をゼロ(厳密には、備忘価額である1 円)まで 償却を行えることになりました。
減価償却の最後に
減価償却の例で感じた人もいらっしゃるかもしれませんが、P/L、B/Sは、その企業が採用する「方法」で、結構見え方が変わります。そのため、こういった「方法」を熟知していると、「V字回復の演出」もできたりします。 これは、決して悪いことではなく、「アカウンティングをはじめとした、ビジネスのルールを熟知しているからこそできる業」であると、個人的には考えます。
今回は、ここまでにします。
次回、また各論で「運転資本(ワーキングキャピタル)」について書いていきたいと思います。
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