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父と月とお酒

ほろ酔い気分で帰ってきた父が「お月さんがとてもきれいだよ」と
言うので、外に出て月を見ました。夜空にこうこうと照る月を、
しばし私は父と見入っていました。
父はお酒をこよなく愛していました。その夜は初めて行った居酒屋が
余程気に入ったのか、老夫婦が切り盛りしていて落ち着いた雰囲気の
お店で、ゆっくりとお酒を飲むのにはぴったりの所だという事などを
楽しそうに話してくれました。
私は父のこんな話を聞くのがとても好きでした、私が高校生の頃の事です。
父は出世とかお金にはまつたく縁のない生き方をしていました、そして純粋に仕事を愛していた父を、あまり理解してくれる人はいなかったと、後年母
から聞きました。そんな父の慰めはお酒だったのでしょうか。
私が成人する前に亡くなった父ですが、晩年はよく定年になったら小説を
書きたいと言っていました。本を読むのが好きなだった父、そしてちょっと
ロマンチックな所もある父の書いた小説を読んでみたかったです、それが今でも心残りです。

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