顔面神経麻痺

ある日、うがいをしようとしたら口の端から水がこぼれる。食べようとしたらうまく噛めない…
その症状は顔面神経麻痺かもしれません。

●顔面神経麻痺とは?
読んで字の如く、顔面神経が麻痺、つまり顔の動きが悪くなってしまう病気です。
多くは片側のみの発症です。稀に両側発症の方もいらっしゃいます。
他に難聴、めまい、痛い皮疹、味覚障害が出現する場合があります。

●原因は?
最近はヘルペスウイルスによる症状ではないか?といわれています。
ヘルペスウイルスにも2種類のウイルスがおり、
・ベル麻痺:単純ヘルペスウイルスの再活性化による症状
・ハント症候群:帯状疱疹ウイルスの再活性化による症状
と分けられています。
他に、腫瘍による麻痺や事故など外傷による発症、中耳炎など耳の病気からの発症、全身性の神経の病気による症状であることもあります。
とはいえ、原因不明の麻痺であることも多々あります。

●検査は何をするの?
・麻痺の程度を測る検査:医師が実際にお顔の動きを拝見し、麻痺の重症度をスコア化させていただきます。
・聞こえの検査:麻痺と同時に聞こえが悪くなっていることがあります。ご本人も気づいていないことがあるので、検査で評価します。
・血液検査:先ほどのウイルスが再活性化しているのか?またステロイドを使ってもいい全身状態かの確認のために行います。
・CT、MRI:腫瘍による麻痺が疑われる場合には検査をすることがあります。
・誘発筋電図:電気を神経に流し、どれくらい神経がダメージを受けているかを調べます。

●治療は何をするの?
・ステロイド(飲み薬、点滴):麻痺の程度により投与量が異なります。神経の炎症を抑える治療になります。
・抗ウイルス薬:上のヘルペスウイルスに対する薬になります。
・神経の血流を改善する、保護する内服薬が同時に処方されることがあります。
・点眼、目の保護:麻痺の程度によっては、瞼が完全に閉まりきらなくなり、目の表面が乾いてしまうことがあります。乾燥がひどいと角膜炎を起こし、視力低下の原因となります。視力低下は麻痺が改善しても治らないため、なるべく乾かないように点眼や眼軟膏、テープで瞼を閉じるなどして保湿していただく必要があります。
・リハビリ:顔の動きが正しく改善するようにリハビリをしていただく場合があります。しかし、自己流でのマッサージやリハビリなどはかえって症状を悪くすることがあります。医師の指示があるまではあまり刺激しない様にしたほうがいいです。

麻痺の程度が重症の方については、顔面神経減価術が適応になることがあります。

●治療後はどうなるの?
ベル麻痺:80%の方が治ります。
ハント症候群:50−60%の人が治ります。
また、重症度、持病によっても治り具合は変わります。詳しくは主治医の先生に聞いてみてください。
治療してもすぐに治る訳ではなく、短い方で1ヶ月、長い方で半年ほどの時間をかけて徐々に改善してきます。

麻痺が残存した方については、顔の左右差を軽減するための手術が適応になることもあります(麻痺を改善する手術ではありません)
ただ、治療後すぐに治療効果判定をするものではありませんので、大体発症してから半年後の状態を見て手術の適応かどうか判断することになります。

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