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秋色の慈悲【クリエイターフェス特別お題】

禧螺

みなさん、こんにちは。禧螺です。

今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。


本日は「#みんなでつくる秋アルバム」タグに加えて、夜にもう一本、記事を掲載いたします。

ご縁がありましたら、あちらでもお会いしましょう。


さて、秋の代表的な植物といえば「金木犀きんもくせい」ですね。

うちの庭にも「秋の女王」として、華やかながらも荘厳な雰囲気をまとって、小さな草花たちを見守ってくれています。


そんな、秋の女王と、優雅で美しい秋の乙女たちをご紹介します。



🍁


柔らかな純白に、うっすら混ざる淡い黄金色こがねいろ

優雅に咲くのは、秋の淑女。


『あら、禧螺ではないですか。ご機嫌よう』

「ご機嫌ようです。数日前から、いつ花開くのかをお待ちしておりました」


曇天の中でも、その姿を見るだけで、心にこびりついてはがれない虚無感を、ふんわり外してしまう。

古くからの言い伝えが多い彼女のことだ。

その不思議な力で、多くの人の心を癒し、支えてきたのだろう。



『あら?手にいるのは?』

「今日旅立つ蝶さんです。出発前に、お花の上で風に慣してあげてもよろしいですか?」

『ええ、もちろんよ。まぁ、これは珍しい。蝶は蝶でも、青い妖精さんではありませんか。さぁ、どうぞこちらに』


私が一緒につれていたのは、羽にある青い筋が美しい、夏の夜の夢を思わせる蝶。

秋の風にまだ慣れていなくて、風に身体を持って行かれそうになると、身震いして、手の甲から離れない。

今から自然へと帰ってもらうためにも、私自身が風よけになり、淑女様の花びらにゆっくりのせた。

優しく蝶を受け取ってくださったこともあり、蝶は安心したのか、花びらの上で風の感覚を確かめている。

青い筋が、まるで風そのもののように、靡いていた。


背景が家の特定につながる恐れがあるため、加工した写真を使用しています


この方と青い妖精さんのお話は「蝶の物語集」にて綴りたいと思います。



『ねぇ!ここよ!ここ!!』


想定していないところから、想定していない声が聞こえる。

私は自分の目を、意識して大きく見開いた。

植えた覚えのない場所に、植えた覚えのない花が、凜として立っていたのだ。



「あれ?!えっ?!ここになんか植えたっけ?というか、このお花ってうちにあったっけ??いつの間にかあったとかそんな感じ?」

一人混乱しているところに、母が笑いながら教えてくれた。

「ほら、うちってたまに、生き物伝いで植物の種が入って来るでしょ?それだと思うよ」


ああ……納得。

いや、まさか、こんなお花が、鳥なのか虫なのかの身体にひっついて入って来てくれることって、あるんだなぁ。

そりゃあ、鳥も虫も花粉の運び屋として、植物たちに依頼されるよね。

うん、身に染みて納得。


『もし!あなた!』

「はいっ、なんでございましょうか?!」

『あなた、このおうちのかた?』

「そ、そうです」


可憐な佇まいとはいえ、その色彩は、夕闇を紫色に染める秋の夜空。

「ここで生きる」と決めた意志の強さを伺える。

その姿は、意志を持ち、誇り高く立てと言われているようで、自然と背筋がしゃんとする。



『あなた、名前は?』

「禧螺ですっ!」

『禧螺ね!私、少し前からここの住人なの。よろしくね』

「はいっ!こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします!」


新しく来られた、紫色の美しい住人さんは、今日も秋の夕暮れ色を魅せてくれている。



秋になると、家の庭は、彼女の温かく華やかな香りに包まれる。


「秋の女王様、一年ぶりですね!」

『あら、禧螺ではないですか。すっかり見違えましたよ』

鮮やかでありながら、色味がこっくりとした橙色は、秋の穏やかな空気に身を委ねるように促してくる。


『庭での生活はどうですか?』

「思っていたよりも大変です。でもしんどいとか嫌だとは感じなくて、なんだか、感情を一旦空っぽにして、こころに風通しを作りたいって思った時に、庭いじりに夢中になっています」

『そうですか。ここから、ずっと見ていましたよ。あなたが家の庭を歩いて楽しんでいる様子。私も嬉しい気持ちになったわ』


秋の女王の眼差しは、どこまでも慈悲深くて温かい。

人の気持ちの揺れやむらを、秋の空に例えて言うことがある。

それが「秋の空」なのは、秋という季節が、人間の持っている「つらい」「寂しい」「虚しい」という気持ちを知った上で、優しく受け入れてくれるからかもしれない。

だから、秋はそういう悲しみが、顕著な形になって出て来る。

でも、そんな秋だからこそ、自分の感性に向き合うには、最高の季節だ。

感情の長期休暇といってもいい季節。

そう思えるくらいに、秋が人間に向ける眼差しは慈愛に満ちている。


『禧螺、これから、忙しくなるわね』

「え?そうですね。今からは人間世界は忙しくなりますから」

『庭を思い出して、いつでも帰っておいで。私たちは、いつもあなたとともにいますよ』


この時の私は、まだ、その意味をはっきり分かっていなかった。

遠い未来の話だと思っていたから。

でも、そうではなかった。

「私の運命の輪は、動き出している」ということを、伝えてきていたのだ。

この意味を知ったのは、もう少し後になってからのことだったから。


「女王さま、忙しくなっても、私と遊んでくれますか?」

『ええ、遊びましょう。例え花が散っても、あなたとともにいる限り、私はあなたとともにあるわ』


その言葉が嬉しくて、私は幹を抱きしめた。

今でもあの香りが、優しく見守ってくれている気がするのだ。




🍁

みなさんに、ここで出逢えて嬉しいです。

この記事にお時間をいただき、ありがとうございました。


それでは、今日はここまでです。

みなさんの本日が、素敵なものでありますように。



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禧螺

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