PLCのフィールドネットワーク

最近、業務でPLCを扱っており、フィールドネットワークとしてEthernet/IPやEtherCATという言葉をよく見る。

一人でPLCを担当していて、通信方式の細かいところに関して詳しい人も周りにそれほどいない中で、ネット上のブログの記事が役に立った。

そういうブログも、一つ見れば完全にわかるわけではなく、いくつかのブログや記事を見ることで色々な知識が繋がって理解できるということも多いので、自分の備忘録としても自分の理解をまとめた記事を作成しようと思い立った。
ちなみに、この手の専門的なものについて、包括的な概要説明としてはキーエンスの資料が結構いい。
さすが、キーエンス。製品も結構好き。営業はとてもガツガツ。
包括的な資料よりは、実務的なところにフォーカスした記事にできればと思う。


Ethernet/IPとかEtherCATって何?

いわゆる、工場設備や製造装置において、装置内や装置間の伝送を構成するネットワークを、フィールドネットワークと言う。
フィールドネットワークはこれまで色々な規格が存在しているが、装置の制御を行うのに使用しているPLCにおいては、Ethernet/IPやEtherCATが用いられることが多いように思う。

Modbusや、CC-Link、DeviceNetといったものも聞いたことがあるかもしれませんが、これもフィールドネットワークの一つ。
私が使用しているPLCでは主にEthernet/IPやEtherCATをメインとして使用しているため、今回はこれらにフォーカスしています。

Ethernet/IP

「イーサネットベースで構築されたオープンネットワーク」というのが教科書的な回答っぽいですが、よくわからない。
要は、いわゆるインターネットのケーブルやプロトコルで構築することができるネットワークで、イーサネットと同じように通信ができ、FTP等によるデータ送受信もできる。
ネットワークを構築する際にも、いわゆるLANのような感じで、ハブにとりあえずケーブルを接続してIPアドレスさえ設定してしまえば通信ができるという点で、拡張性や汎用性にとても優れている。

インタフェースはいわゆるLANケーブル。RJ45コネクタを用いている。

EtherCAT

こちらもイーサネットベースで構築できるネットワーク。最近ではTOYOTAが工場でのネットワークに採用しているようです。

EtherCATの特徴は、以下の3点。

  • ノード間の高速通信・同期制御が可能

  • 機器同士のデイジーチェーン接続が可能

  • Ethernetと共通の物理インタフェース

EtherCATに特有の特徴としては、機器をデイジーチェーン接続できることと、通信にオンザフライ方式というのを使用している点が言える。
デイジーチェーン接続というのは、いわゆる数珠つなぎのこと。
Ethernetではハブを介して色々な機器に接続するところを、A-B-Cというような形でひとつなぎに接続します。
また、オンザフライ方式とは、一つのパケット内に各ノードで使用するデータを格納し、パケットがノードを通過する際に、そのノードを対象とする情報を読み出し、必要な情報を追加して次のノードに送信するという方式のこと。
一つのパケットが行って帰ってを繰り返すことなり、様々な通信が混在する多方式に比べて効率的な通信が可能になります。
これに加えて、EtherCATにおける通信では、機器間のハンドシェイクを行わないことから伝送が高速になります。
以上の特徴により高効率・高速な通信ができることがEtherCATの大きなメリットとなります。
また、ノード間のデータ通過時間による遅れを調整して同期制御をしてくれるので、モーションコントロール用のネットワークとしても対応が可能となっています。

しかしながら、デイジーチェーン接続でネットワークを構成するということは、逆に言うとデイジーチェーンにしないといけないということ。
マスターの下に3つスレーブをぶら下げた場合、1つのスレーブが動作を停止すると、その下との通信もできなくなってしまうデメリットがある。
また、ネットワークの構成もマスターユニットの方で指定しないといけないことから、機器の追加等を行う際にはマスターのネットワーク構成も変更する必要があり、結構面倒。

※冗長化のためということで、対応しているハブを準備することでループ状のネットワークを構成することも可能。これにより、間が切れたら全て通信不可という状況は回避できますが、オンザフライ方式のメリットを生かすためにデイジーチェーンが推奨されている。

こちらについてもインタフェースはいわゆるLANケーブル。RJ45コネクタを用いているため、ハードウェア面の苦は少なく構築可能であると言える。

どう使い分けるの?

上記特徴にまとめている通り、物理層についてはどちらもRJ45のケーブルなので、準備するハードウェアとしては大差ない。
しかし、使い勝手を考えるとやはり各方式メリットデメリットが出てくる。

汎用性や、拡張性の面ではEthernet/IPに軍配が上がりますが、リアルタイム性を求められる用途ではEtherCATに軍配が上がります。
また、EtherCATはデフォルトでデイジーチェーン接続ができるため機器間の配線の削減にもつながります。

Ethernet/IPとEtherCATの特徴

まとめ

フィールドネットワークで多く利用されているEthernet/IPとEtherCATですが、PLC的のハードウェア的には同じようなケーブルを違うポートに差すぐらいの違い。
ただし、実際に装置として動かすとなると、実用上の動き方としてはそれほど違いはありませんが物理層の構築に少し差異が出てくるかなというイメージです。
同期制御のようなリアルタイム性を強く求める用途であればEtherCATが圧勝。

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