5分で読めるグリーン成長戦略

〈注意点〉
本記事はグリーン成長戦略PDFの内容を簡単にまとめたものです。これが全てではありません。また詳細はまだ決まっていません。数値目標はあくまで考えられるシナリオの1つを示したものです。実際、最近のニュースをみると数値目標がより大胆になっているように思います。大事なのは、目標達成のための政策がどんどん立てられるので、産業構造も変化するだろうということです。

〈参考資料〉
グリーン成長戦略PDF
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012-1.pdf
パリ協定(概要)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000119.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/パリ協定_(気候変動)
第5次エネルギー基本計画
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/180703_01.pdf
パリ協定(中国)
https://digital.asahi.com/articles/ASN9V6V6SN9VUHBI012.html
190兆円の試算
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20210202_022064.pdf


日本は2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを決めました。この目標を達成するための戦略が「グリーン成長戦略」です。まず、なぜ2050年にカーボンニュートラルを達成しようとするのかについて説明します。次に、グリーン成長戦略について説明します。

〈なぜ2050年カーボンニュートラルなのか〉
これまで地球温暖化防止のためにさまざまな国際的な取り組みがなされました。京都議定書、パリ協定などです。パリ協定の温暖化防止のための目標は、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑えること、および平均気温上昇1.5度未満を目指すことです。パリ協定は批准(参加)国に5年ごとに削減目標を決めることを義務として定めています。日本は直近では第5次エネルギー基本計画において2030年に温室効果ガス26%削減、50年に80%削減を目標として定めました。実は中国も「30年までに実質的な排出量を減少に転じさせ、60年までにゼロにする」と目標を定めている。中国は以前は先進国が削減すべきとの立場をとっていました。最大の温室効果ガス排出国である中国がこのような宣言をしたため、世界がより温暖化対策に注力すると思われます。このような経緯があったため、日本はより高い目標である「50年に実質ゼロ」を目指すようになりました。

〈グリーン成長戦略とは〉
グリーン成長戦略とは、日本が2050年のカーボンニュートラルを達成するために、温暖化対策を制約としてではなく成長の機会としてとらえ、経済と地球環境の好循環をつくるための政策です。経済と地球環境の好循環をつくるにあたって考えるべきはやはり、エネルギーについてです。政府はカーボンニュートラル実現のために2050年のエネルギー政策を示し、そのために重要な産業における実行計画を考えています。

ちなみに、政府が行うのは政策と実行計画を立てることです。日本企業の現預金の総額は240兆円で、これを投資に向かわせるために政府は目標を立て、政策を実行します。

・エネルギー政策
CO2の排出が多い領域から削減していくことは効果的です。CO2の部門別排出割合は多い順に電力(37%)、産業(25%)、運輸(17%)、業務・家庭(10%)、その他(11%)です。

電力部門での脱炭素化のためには再生可能エネルギーのさらなる導入、火力発電におけるCO2排出の抑制、原子力発電の利用を考える必要があるでしょう。非電力部門では電気の利用を考えます。例えば運輸部門では自動車のEV化のほか、バイオ燃料や水素燃料を利用する必要があります。さらに、これら電力ネットワークを制御するためのデジタルインフラも重要です。

・重要産業における実行計画
以上のエネルギー政策によりいくつかのの重要産業が見いだされました。政府は14個の重要産業を示しています。(というか、ほとんど全ての産業が該当している気がする!)

1.(洋上)風力発電
競争力があり強靭なサプライチェーンを構築。

2.燃料アンモニア
石炭火力発電での燃料の一部にできる。

3.水素
新たな資源と位置付けられている。

4.原子力
脱炭素のための選択肢の1つ。海外で進む次世代革新炉開発に参画。

5.自動車・蓄電池
「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現」を目指す。

6.半導体・情報通信
デジタルによるエネルギー需要の効率化とデジタル機器の省エネ化を進める。(いわゆる「6G」はここに入りそうです。)

7.船舶
液化天然ガス(LNG)、水素、アンモニアなどのガス燃料船開発。

8.物流・人流・土木インフラ(都市)
かーボンニュートラルポートの形成。スマートシティはここに入りそうです。

9.食料・農林水産
地・森林・海洋における炭素の長期・大量貯蔵など、吸収源の取組。

10.航空機
国際民間航空機関は2019年比でCO2排出量を増加させないことを制度化済み。

11.カーボンリサイクル
カーボンリサイクルとはCO2を資源として活用する技術。「日本に競争力があり」本当か??

12.建築物、次世代型太陽光

13.資源循環関連

14.ライフスタイル

これらの重要産業において政府による政策ツールは
・予算:10年間2兆円規模のグリーンイノベーション基金
・税制:さまざまな税制上の優遇措置
・金融:金融機関の協力体制、ソーシャルボンド発行環境の整備
・規制改革、標準化:規制強化・緩和、カーボンプライシング
・国際連携
の5つです。

ところでグリーン成長戦略は温暖化対策を制約としてではなく成長の機会としてとらえるのでした。つまり温暖化対策を行うことにより新技術や新産業の創出、既存事業の拡大などの成長が見込まれるということです。資料によると「機械的な試算によると、この戦略により、2030年で年額90兆円、2050年で年額190兆円程度の経済効果が見込まれる。」とのことです。190兆円という試算はどうなされたのかはなぜか書かれていません。そこで別の資料によると、エネルギー投資を順調に行なったとして年1.2%のGDP押し上げがあれば達成できるようです。

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