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眼前の励まし

ある施設でトイレに入り、小便器で用を足していると、眼前の壁に「一歩前へ!」の文言が貼付されていることに気が付く。

普通に考えれば「尿が跳ね散らないように、便器に近付いて用を足してください」の意なのだとは思うが、強調の意味を持つ文末の「!」が、4文字だけでは事務的かつ、どことなく命令されているような感じのある「一歩前へ」に感情を与えてくれているような気がした。

一見、文章の冷たさが増幅されているともとれるが、温かみを付与されているようにも思える目の前の5文字は、前者の捉え方に従うならば、現実的な行動としての、つまり文字通りの前進を意味する。しかし、後者の捉え方に従うならば、比喩的な概念としての、つまり「状況を好転させる」という意味の前進を意味する。

実際のところどちらの解釈が正しいのかは施設の管理者に問い合わせてみなければ分からないが、少なくとも私は、冷たい方の解釈が正解だと思う。

何故なら、下半身を露出した状態の人間を鼓舞する動機がその施設には無いし、そもそもその状況下で応援されても、と思うからである。実質、オナサポじゃねぇか。

結局、トイレは用を足す場所であって、励ましを得る場所ではないのであった。

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