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歌うクジラと自己家畜化する人類

歌うように鳴きながら芸をするクジラたちを見ていて、数年前に読んだ『歌うクジラ』を思い出した。

ハワイのマウイ島近くの海底付近でグレゴリオ聖歌の旋律を正確にくり返し歌うクジラが発見された。
そこから人類は不老不死の遺伝子を発見する。

それをきっかけに、情報化によって不幸が蔓延していた人類は、徹底した階層化と分断社会への移行を選択する。

思えば村上龍は40年も前から、ここ数年ホットな話題になっている「自己家畜化する人類」を描いて警鐘を鳴らしていた。

家畜化された人類の中で主人公は言う。

「自分が自分であることの、ほとんどすべてがいやだった。
だが、別の人間になることだけは絶対にいやだった。
他の人間になった自分をどうやって憎めばいいというのだろうか。」

結局自分だって程度問題だと思いながら、それでも昔、家畜にはならないと決めたんだと、時々このセリフを思いだして、奥歯を噛む。

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