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母さん、彼らの目をのぞいてごらん。僕はそこにいるよ。

高校生の時、Springsteenの『The Ghost of Tom Joad』を聴いてから、いつか読もうと思っていたスタインベック『怒りの葡萄』をちょっとしたきっかけがあって、ようやく読んだ。

1930年代アメリカ文学を代表する作品として「資本主義と機械化による格差と尊厳の問題」を扱った本作だけれど、100年前から現代も何一つ変わってはいないだけに、本作をいまでも今日的な意義を持つと考えればSpringsteenのように歌のミューズに据えるだろうし、人によってはこの根深い問題にもはや虚無的な眼差しを向ける人もいるかもしれない。

ちょうどこの週末は、街の真ん中でとても資本主義的なイベントに参加した翌日、ひょんなことからアンチ資本主義的なコミュニティのイベントに顔を出すことになった。

なんにせよ、僕は自分が正しいと信じていることを絶対的に善いとするような空間に忘却されがちな平衡感覚だけは保持していたいと思った。


『怒りの葡萄』を読み進めていた終盤、高校生の時聴いた『The Ghost of Tom Joad』の歌詞に出てくるセリフに再会した時はちょっとした感動だった。

「母さん、警官が人を殴っているところ、空腹の乳飲子が泣いているところ、差別や憎しみの争いがあるところ、僕はそこにいるよ。

誰かが自分の立場を守るために戦っているところ、仕事や救いを求めて戦っているところ。
母さん、彼らの目をのぞいてごらん。
僕はそこにいるよ。」

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